「あそこの焼き菓子屋さん、美味しいよ」と教えてもらって訪れた、青いドアが目印のお店。
ちょうど柚子ジャムを作っていたところだったそうで、ドアを開けた瞬間ふわっと柚子の香りが出迎えてくれました。
空間に余裕を持たせた店内は、シンプルながら海外のお店のような雰囲気も感じられます。
今回は「焼き菓子とジャムのお店Teeth(ティース)」を紹介します。
素材の良さを活かしたお菓子づくりがこだわり
店内には、手作りの焼き菓子とジャムが並びます。焼き菓子は約20種類、ジャムは10種類、マフィン数種類のラインナップ。マフィンは季節によって食材が変わります。筆者が訪れた1月は、かりんや柚子のマフィンが並んでいました。
山梨県産の果物を使った手作りジャム
Teethのジャムに使われている果物は、出荷からもれてしまったはね出し品を仕入れて作っています。
「農家さんの課題でもある、フードロスに少しでも貢献できたら」と、店主。
店主の親戚は、果物農家を営んでいます。最初は親戚からの仕入れだけでしたが、紹介してもらったり店主自ら声を掛けたりして、農家さんとの繋がりを作っていったそうです。
「ジャムといったらイチゴとかのイメージがあるかもしれませんが、うちの店では出していないんです。山梨にこんな果物あったんだみたいな、マイナーなものをあえて使っています」
ジャムに使う果物は収穫期に仕入れて、仕込みをします。旬のおいしさを詰め込んだジャムは、1年かけて販売するそうです。
取材時の1月頃には、キウイ、柚子、りんごのジャムが揃っていました。暖かくなってくると夏みかんなど柑橘系のジャムも並びます。
「私は、ジャムが美味しいんじゃなくて、果物が美味しいだけだよって思っていて。いろいろ足さないで本当に必要な物だけ入れて作っています」
農家の方が丹精込めて作った食材の良さを、どれだけシンプルに美味しく伝えられるか、という店主の思いが感じられます。
キウイ(左)と梨(右)のジャム。食感が感じられるよう大きめにカットされています。酸味と甘味が絶妙なキウイジャム。梨ジャムは、梨特有の食感が楽しめます。
山梨県産の野菜を使った「Yum-Veg Cookies」
Teethでは農家さんとの繋がりを活かして、野菜を使ったクッキーも販売されています。
「私は野菜が大好きで。こんなに美味しい野菜を農家さんが作ってくれているのに、嫌いって言われるのはいやだな、ちょっとでも好きと思ってもらえると良いなって。そこから何かできないかと思って始めました」
Yum-Veg Cookiesは、生の野菜をすりおろしたり茹でたりして、野菜を丸ごと使って作るのが店主のこだわり。
「野菜から出る水分の量でバランスが変わってくるので、そのあたりは試行錯誤しながら、なるべくそのまま食べられるように意識しています」と、店主。
Yum-Veg Cookiesは、野菜嫌いなお子さんを持つ親御さんの購入が多いそう。
さつま芋のクッキーは、焼き芋を食べたときのホクホクした食感が楽しめます。口の中に入れた瞬間に、お芋の風味と甘さが広がります。
ほうれん草のクッキーは、まさにほうれん草を食べているかのよう!子どもも食べやすい、ほんのり甘さもあるクッキーです。
乳製品・卵・小麦を使わないクッキーも
お店をやっていると、お客さんから「アレルギーがあって…」という声を多く聞くのだとか。ほかにも「市販の乳製品や卵、小麦粉不使用のものは美味しくない」という話もあるそうです。
来店されたお客さんの思いを聞いて、少しでも美味しく食べてもらえるよう、乳製品や卵、小麦を使わない焼き菓子も提供しています。
「なかなか商品を増やせないんですけど、美味しく食べてほしい。なるべく使わなくても美味しくできないか試行錯誤しながら作っています」
店主は美味しさのほかにも、アレルギーがあるお子さんの思いも大切にしています。
「アレルギーのある子は一緒に食べられない、みんなと形が違うとか見た目が違うのが寂しいらしくて」
そのため、みんなで同じ形のクッキーを食べられるように意識しているそう。「みんなと同じ形で同じように食べられるのがうれしい」という声をもらうそうです。
ひとつひとつ食感の違うクッキー
ずらりと並んだ焼き菓子は形や大きさもさまざまで、見ているだけでもワクワクします。店主はコーヒーが好きなため、コーヒーに合うイメージで作っているそう。
「私もなんか好きな感じで作ったら、こんなたくさんの種類になっちゃった、みたいな感じです」と、話してくれました。
おすすめや人気のクッキーを聞いてみるとこのような答えが。
「それぞれ材料によって食感が違うんですよね。ホロってしてたりサクッとしてたり。なので、どれが一番売れるとかはあんまりなくて」
「種類がたくさんあるので、お客さんにも『おすすめや人気のものはどれですか』って聞かれるんですけどね。どれが一番って言われてもないな…みたいになって。だから、何度も買ってくれるお客さんが多いです。とはいえ、迷いますよねって思いながらお客さんと一緒に悩んでます」
店主が話してくれた「それぞれ食感が違う」というのは、実際に食べた筆者も納得しました。
写真左上の「素朴なクッキーざらめバニラ」は、ザクっとしっかりした食感が楽しめます。バニラの風味と甘さがあり、毎日食べたくなる優しい味です。
写真右上の「きなこのクッキー」は、口に入れた瞬間、ホロっと崩れていく優しい食感。まるで、きなこをそのまま食べているかのよう!口の中いっぱいにきなこが広がります。
材料によってこんなに食感が変わるんだという感動と発見。ほかのクッキーもどんな食感なのか試したくなります。
お店を始めたきっかけ
店主は、レストランでコックとして働いていました。食事の調理がメインでしたが、コースのデザートを任されることもあったのだとか。結婚と出産後、復職しましたがライフスタイルの変化から退職。自分で何かお店を始めようと思い、日持ちもする焼き菓子のお店に決めたそうです。
店舗を持たず出店スタイルで開始
お店を始めた当初は店舗を持たず自宅に工房を構え、週末にイベントやマルシェに出店して活動していました。そんななか、コロナによりマルシェなどのイベントが全てなくなってしまう事態に。販売経路が絶たれてしまったことで、店舗を持つことを決めます。
地元の昭和町でお店を
店主の地元が昭和町であったこともあり、町内で物件を探していたところ、現在の場所に出会ったのだとか。
「これまでは、店舗がなくて月に数回のイベントのみの販売でした。お店を構えたことで、買いたいときに買えるような場所でありたいと思っています。出店だけの頃よりも、チャンスが増えたかなって」
現在は、平日は店舗、週末はマルシェに出店するスタイルで販売しています。
店舗があるからできること
もともと、マルシェへでの販売をベースに活動していた店主。マルシェへの思いを聞いてみると、このような答えが。
「マルシェは、ただただ楽しい。一人旅をよくしていたんですけど、もうなんか旅をしている感じなんです。その場所に行ってお店を広げて、一期一会の出会いがあって」
マルシェ出店者としての実績が付いてくると横の繋がりも増え、出店者の人たちと「一緒に何かやろう」と、店舗でイベントを実施するようになったそうです。
店主をはじめ出店者のみなさんは、コロナでイベントがゼロになった経験をしています。お店を構えたことで、店舗を利用して仲間とイベントを企画し、開催することが可能になりました。
仲間とタイミングが合えばマルシェを開いたり、急遽イベントが中止になったときは声をかけたりして、店舗でのイベントも活発に行っていました。
コロナが落ち着いた今、以前よりも店舗でマルシェを開催する機会は減りましたが、代わりに時間をかけて行うワークショップを不定期で開催しています。
ワークショップなどのイベントの情報は、Instagramとfacebookで告知しているのでチェックしてみてくださいね。
食べて笑顔になってもらえたら
店名のTeethはTooth(歯)の複数形です。最初は、響きと文字の感じが良いなと思って決めたそう。
「笑ったときに見えるのがteeth。あと、食べるときに使うのもteeth。食べて笑顔になったらいいな、みたいな感じです」
これからも、変わらず楽しく続けていきたいと話してくれた店主。生産者の方たちが食材に込めた思いを大切に、素材の良さを最大限に活かして、少しでも美味しく届けたいという姿が印象的でした。
テイクアウトだけでなく、店内でもTeethのお菓子が楽しめます。Teethオリジナルドリンクやコーヒーも提供しているので、お菓子と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
お店の情報
焼き菓子とジャムの店Teeth
■住所
〒409-3866
山梨県中巨摩郡昭和町西条1961-1
■営業時間
10:00から16:00
■店休日
土日祝
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