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フード  |    2024.02.15

山梨にもお麩文化を!県内唯一のお麩専門店「麩の岡田屋」|山梨県中巨摩郡昭和町

みなさんは「お麩」と聞くと、どんなメニューをイメージするでしょうか。お味噌汁やお吸い物などを思い浮かべる人も多いかもしれません。

今回、山梨ではあまり食べる習慣のない、お麩を広めていきたいという思いからお店を始めた「麩の岡田屋」の店主に、お店を始めたきっかけやお麩の魅力について伺いました。

店主のお話から、お麩は汁物以外にも調理の仕方によって、日常に取り入れやすいことが分かりました。

おすすめの調理方法も教えていただいたので、お麩料理を楽しんでみませんか。

お麩を食べる習慣がない山梨でお店を始めたきっかけ

山梨県出身の店主は、大学進学を機に石川県の金沢へ。そのまま金沢で老舗のお麩専門店に就職します。会社では営業や製造の経験を積みました。

お店を始めるきっかけになったひとつが、会社員時代に山梨の百貨店で開催された物産展に出店したときのこと。お客様の反応を見て「お麩を食べる習慣がなくても、本当に美味しいお麩なら、きちんと美味しさを伝えれば売れるのではないか」と思ったそうです。

山梨ではお麩の製造卸販売をしている会社はあっても、対面販売しているお店はなく、お麩の販売店自体少ないのが現状なのだとか。金沢でお麩の良さを感じていた店主は「お麩が広がらないのはもったいない」と思ったそうです。

ほかにも、30年ほど前に比べるとお麩業界全体が縮小傾向にあることもきっかけのひとつになったそう。どんどん減っている状況をみて「歯止めをかけるというか、自分がどこまでできるか分からないですけど何か役に立てれば」と話してくださいました。

場所の決め手は「人が集まる」ことと「水」

お麩を知ってもらうためにも、人の目に触れる機会が多い場所に店を構えたいという思いがありました。大型商業施設ができたことで、人が集まる場所となった昭和町にお店を構えることにしたそうです。そのほかに、水質の良さも決め手になったのだとか。

「店では井戸水を使っているんですけど、この井戸水の水質が良くて。八ヶ岳とか南アルプスの雪解け水が釜無川を経由して地中に埋まっているんです。この水を使ってお麩を作りたいというのも、この場所に店を構えたきっかけです」と、話してくださいました。

店内には約50種類のお麩が並ぶ

お麩の製造を経験している店主が、こだわりの配合で作ったお麩を販売しています。金沢時代に繋がりのあった各地の職人さんに依頼して、委託製造されているのだとか。

現在、お麩の製造まではできていないものの、店内の厨房ではお菓子の加工のほかに、かき氷やおでんを作って提供しています。

お麩ってどんな食材?

ここで一度、お麩の基礎知識を。

お麩は大きく分けると「焼麩」と「生麩」があります。小麦粉を水で練って抽出するグルテンと、小麦粉を合わせて焼いたものが焼麩です。一方の生麩は、グルテンともち粉を混ぜて、蒸したり茹でたりしたものを指します。

「すごくマニアックなことを言うと、お麩は小麦粉とグルテン(小麦たんぱく)を混ぜて作るんですが、柔らかいお麩は小麦粉の割合が少ないんです。逆に、小麦粉の割合を多くすると、食べ応えがあって煮崩れしにくい、しっかりとしたお麩になります」

「お麩の大きさや形がいろいろありますが、それぞれ配合が違います。焼き方も違うので、食べたときの舌触りとか噛みごたえも変わってくるんです。お麩は高タンパクで低カロリーなうえに、消化に良いので今の時代にぴったりなんですよ」

高たんぱく低カロリーで消化に良いとは嬉しいですね。

お麩の紹介

店頭にある商品から、いくつかお麩を紹介します。

【おつゆ麩】スーパーなどでも見かける、汁物に使えるお麩です。
【細工麩】見た目を楽しめるよう、彩りとして使うお麩です。お吸い物などに使われます。
【車麩】棒に生地を巻きつけて窯に入れて、回転させながら焼いています。車麩を作る窯は、3メートル四方の大きさがあるのだとか。生地を巻きつける棒も、2メートルの長さがあるそうです。
【板麩】棒に巻いて焼いたお麩を、蒸気で圧縮して作られたお麩です。
【生麩】もちもちとした食感が特徴。ほかにも、お花の形をした棒状の「生花麩」や、お手毬などの形をした「生細工麩」もあります。

麩のお菓子やスイーツも販売

店主考案の「Colorier(コロリエ)」は、小さいタイプの丸い麩にホワイトチョコレートをコーティング。その上から、さまざまなフレーバーパウダーをつけています。

いちご味をいただきましたが、軽くてサクサクした食感でいくらでも食べてしまいそうです。コロコロとした丸い形も可愛い。

もうひとつは「麩の菓子」。こちらは、勤めていたお麩の会社で販売されていたものを参考に、店主が改良を加えて製造しているそう。「メープルバター」と「ごま黒糖」の2種類あります。

メープルの甘さにバターの塩気が効いて、手が止まらなくなります。サクッとした食感ですが、お麩に味がしっかり染み込んでいました。どちらのお菓子も、おやつにぴったりです。

お麩のバスクチーズケーキ(画像提供:麩の岡田屋)

その他には、小麦粉のかわりに細かく砕いたお麩を使用した「お麩のバスクチーズケーキ」も販売しています。

【夏季限定】生麩かき氷(4月~10月)

生麩かき氷 抹茶あずき(画像提供:麩の岡田屋)

お手毬やお花の形をした生麩をトッピングしたかき氷は、麩の岡田屋のなかでも人気のスイーツです。生麩は砂糖で煮て甘味を入れてあります。白玉のようなイメージで、もちもちとした食感が楽しめます。

【冬季限定】お麩のおでん(11月~2月)

画像提供:麩の岡田屋

寒い時期に食べたくなるおでんも、お麩を取り入れて提供しています。おでんの具は、生花麩・車麩・大根・こんにゃく・たまご・昆布の6種類。金沢では、おでんに車麩が入っているのが定番なのだそう。

「お麩はおでんに入れるとすごく美味しいと知ってもらえるようにしています」と、店主。

生花麩はお出汁を程よく吸っていて、もっちりとした食感。車麩は、これでもかとお出汁を吸っていて、口に入れるとじゅわっとお出汁が広がります。柔らかいけれど、弾力もあって食べ応え抜群。心も体も温まります。

お麩の可能性は無限大!お麩のアレンジレシピ

ここからは、店主おすすめの食べ方を教えていただきます。

「いつも作っているものの延長線上が良いと思うので」と、お麩を取り入れやすいレシピを教えてくださいました。

パン粉のかわりに使う

お麩を粉末にして、パン粉の代用として使う方法です。

「ハンバーグのつなぎに使うのもおすすめ。パン粉はきめが粗いので、焼いたらうまみが逃げちゃうんです。お麩の場合は、きめ細かくてうまみを閉じ込めてくれるから、ジューシーなハンバーグができますあとは、つみれのかさ増しにしてもいいですよ」

これなら、すぐにでも活用できそうですね。

【車麩】フレンチトーストや卵とじ

「車麩を使って、卵とじやフレンチトーストにしてもすごく美味しいですよ」と店主。フレンチトーストは、会社員時代から20年以上おすすめしている食べ方だそうです。車麩は、店主がお麩にはまったきっかけの商品。お客様にもよくおすすめしているそうです。

卵液に半日以上浸し、バターを溶かしたフライパンで焼いたら完成

筆者も、フレンチトーストを作って食べてみました。パンとの違いは食感。お麩のしっかりとした弾力が楽しめます。モチモチしているので、食べ応えもありました。

【板麩】パスタやピザ

板麩は、パスタやピザがおすすめだそう。

「パスタは、ちょっと薄めのコンソメや塩を入れた水で戻して、水気を絞ります。切った板麩をスーパーで売っているソースと絡めるだけで完成です」

「通常のパスタはソースが表面に絡むだけなんですけど、お麩の場合は味が染み込むんです。最後まで飽きずに食べられますよ。つるつるではなく、じゅわっとした食感です。女性だと1枚でいいと思いますが、僕は2枚くらい平気で使っちゃいます

店主もお麩で作るパスタが好きで良く作るそう。店主のおすすめパスタを筆者も作ってみました。

塩を加えた水で20分ほど戻します。戻すとひとまわり大きくなりました。
水気を切って、好みの太さにカット。板麩1枚分の量です。筆者は太めに切り分けました。
ミートソースを絡めました。板麩1枚でパスタ1人前と同じくらいのボリュームに感じました。

店主が話してくれたように、お麩がソースのうまみを吸っていて、じゅわっとした食感でした。太めに切った板麩は、フィットチーネのような感覚で食べられて美味しかったです。

もうひとつ、板麩のピザの作り方も教わりました。

「ピザのときは、乾燥した状態でオリーブオイルとピザソースを塗って、お好みの具材をのせてチーズをかけて焼くだけ。そうすると、クリスピー生地みたいにパリッとした感じのピザになりますよ」

思い立ったらすぐに作れる手軽さが良いですよね。スライスオニオンとベーコンを具材にして作ってみましたが、簡単にクリスピーピザが完成しました。おつまみとしても良さそうです。

寒いときに食べたい!冬におすすめのお麩料理

画像提供:麩の岡田屋

一年を通して、さまざまなアレンジで食べられるお麩。寒い時期に食べたい、おすすめの料理も教えていただきました。

冬のお麩料理の定番といわれているのが鍋。おでんやすき焼き、寄せ鍋などに使えるそうです。

「鍋に入れるなら、車麩や板麩、まんじゅう麩がおすすめです。水戻しする手間はあるけれど、煮崩れしにくく食べ応えもありますよ」

「また、生麩を入れてもいいです。餅や白玉に近い感覚で食べられます。モチモチしているんだけれど、くっついたり伸びたりしないのでつるんと喉に入っていく感じ。生麩は煮すぎると膨らんでブヨブヨになってしまうので、火が通る程度で食べるといいですよ」

暑い季節に食べたい!夏におすすめのお麩料理

夏にぴったりなお麩料理も教えていただきました。

「生麩は切って湯通しして氷水で冷やしたら、ポン酢やわさび醤油でさっぱり食べられます」

ポン酢の代わりに、きなこと黒蜜をかけるとスイーツにもなるそうです。

細工麩

「細工麩はぶっかけうどんやそばの上からパラパラっとかけると、見た目から楽しめます。あとは、そうめんの浮き実としても使えます」

可能であれば薄いだし汁で戻してから使う方が、味も染みるのでおすすめなのだとか。汁気が多いならそのまま入れて、ふやかしながら食べることもできるそう。

一年を通して、さまざまな調理法で楽しめるお麩。店主に教えていただいたレシピ、ちょっと試してみたくなりませんか。

さいごに

画像提供:麩の岡田屋

店主にこれからのお店について伺いました。

「自分でいちからお麩を作れる設備を整えたい。製造、販売、飲食を完結できる環境でやりたい。ゆくゆくは、富士山方面や北杜方面でできるとよいかなと思っています。県内の名水を使ったお麩が作れたら、付加価値もついて広まっていくのかなって」

少しずつ環境を整え、現在の店とバランスを取りながら進めていけたら、と展望を話してくださいました。

麩の岡田屋さんの商品は、店舗のほかに昭和町のイトーヨーカドー、オンラインショップでも購入できます。日々の食卓に、お麩を取り入れてみてはいかがでしょうか。

お店の情報

麩の岡田屋
■住所
〒409-3863
山梨県中巨摩郡昭和町河東中島1599-3
■営業時間
11:00~18:00
■定休日
月曜日
■SNS他
ホームページ
Instagram
Facebook
麩の岡田屋ヤフーショッピング店

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この記事を書いた人

ひろ

岡山出身、山梨在住のwebライター。 結婚を機に、東京・山梨・兵庫と移り住み、再びご縁があって山梨に戻ってきました。移住してきた私の目線で、地域の良さを発信していきたいです。 好きなことは、食べること、のんびりすること、ライブ参戦。

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