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フード  |    2024.05.06

みんなが喜ぶお菓子を。沖縄・糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」が未来に託す思い

沖縄の南部にある糸満市は、糸満ハーレーや糸満大綱引きなど古くからの伝統文化が息づく地域です。糸満漁港を中心に”海人の町”として栄えた歴史を持ち、そんな糸満漁港から細いすーじぐわぁー(小道)を通り抜けると、小さな焼き菓子屋さん「ぬちぐすいお菓子」が現れます。

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」の路地裏
お店へ向かう小道、前方には市街を眺望できる山巓毛が見える。

ぬちぐすいとは沖縄の方言で「命の薬」を意味し、心と身体を元気にする力を持つとされています。その店名に込められた思いや、どんな手づくりのお菓子を販売しているのか。お店を訪ねてみました。

苦しい時期を乗り越えて、見つけた自分のやりたいこと

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」の外観

2022年7月10日、糸満市に3坪の小さなお店を構えて、1人で切り盛りしている那覇市出身のオーナー渕上沙也加さん。図書館でレシピ本を借りては、友人たちに手づくりのお菓子を配るなど、幼少期からお菓子づくりが好きだったそうです。小学生のときはクレープ、中学時代はクッキーをよく焼いていたそうです。

結婚、出産を経てワンオペ育児で子どもを育てていくことに。

「その当時を振り返ると、いろいろあって本当にしんどかったですね。だから、子供たちが大きくなったとき、もし再婚でもしていたら、今度こそ自分の好きなことをやろうと心に決めていたんです」と話してくれました。

子供たちが幼稚園や小学校に上がり、新しい生活環境が整ったタイミングでカフェや飲食店での経験を積もうと、最初の一歩を踏み出しました。初めて経験する慣れない仕事ながらも、充実感があったといいます。いつの日か「自分でお店を出したい」という夢に向かって、次の一歩を踏み出したい。でも、前向きな意志と後ろ向きな考えが葛藤し、コロナ禍でも収益は見込めるのか。自分がつくるお菓子は受け入れられるのか。そう考えては、なかなか踏み出せずにいたそうです。

そんな中、運命的なセミナーに出会います。それは八重瀬町で行われていた「創業セミナー」でした。3ヶ月という短い期間で、自分のやりたいこと、お店のコンセプトを徹底的に掘り下げたことで、お店の土台となる根幹が見えてきたといいます。

「そのときの気分でお菓子が選べるような、幅広い需要に答えられるお菓子をつくりたいと思い始めて、小麦粉を使った焼き菓子はもちろん、ビーガンやグルテンフリーのお菓子も販売したいと考えるようになりました」

特にこれといって得意なお菓子もなく、 創業セミナーを受けるかたわら、まずロースイーツ教室に通い始めます。しかし、なぜかあまり心惹かれることもなく、漠然とシフォンケーキを作ってみようかな?と再びお菓子教室に通い始めると、食べたことも片手で数えるくらいだというのに、自分がつくりたかったのはシフォンケーキかもしれないと、根拠のない閃きが芽生えたそうです。

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」の店内
店内に置かれた小物。

沙也加さんの行動力は、さらに加速していきます。セミナー受講後、開業に必要な食品衛生責任者の資格を取り、飲食店営業許可申請の手続きをして、レシピの開発や店舗の建設など、同時進行で慌ただしく物事が進んでいきました。

当時はお金もなかったため、できれば家賃を安く抑えたい。そして、失敗したときのリスクを最小限に抑えるため、実家の敷地内で店舗を構えることに。建設関係で働く沙也加さんの父親が建物の施工を行い、内装のデザインは沙也加さんが担当し、セミナー受講後から、およそ半年。ついに、3坪の小さなお店「ぬちぐすいお菓子」を開業することになりました。

リピーターが続出!純生クリームを100%使ったこだわりのパフェ

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」こだわりのパフェ

お店で一番人気の「パフェ」は、旬の果物をふんだんに使った期間限定の商品です。4月中旬には「レモンパフェ」が販売されていました。

米粉シフォンを土台に渡嘉敷産の完全無農薬はちみつ、レモンカード、純生クリーム、ストロベリーメレンゲ、国産レモンのシロップ漬け、アロマティカスと見た目も華やかな一品です。ボリュームのあるこの商品は1個800円(税込)。パフェによって金額が異なります。素材や見た目に沙也加さんのこだわりが詰まっていて、2つのこだわりポイントを紹介します。

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」こだわりのパフェ

まず1つ目は、「純生クリーム100%使用」という点です。生クリームたっぷりのデザートを食べているときに、胃もたれを起こした経験はないでしょうか。実は沙也加さんもそのひとり。最後までおいしく食べてもらうために、安価で泡立ちのいいホイップクリームは使わず、純生クリームを使うことを決めていました。

「ホイップクリームに比べると価格が高価になるので、大量生産するお店で使うのは難しい。小規模のお店だからこそ純生クリームで提供することができるんです」と力強い言葉で話してくれました。また無添加なので、身体にも優しい素材になっていて、生クリームが苦手な人でもここのパフェなら食べられると、お客様から声が届いているそうです。

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」こだわりのパフェ

2つ目は「食材のバランス」です。ぬちぐすいお菓子のパフェは、最後までおいしく食べられるように、シフォンの間に生クリームや季節のフルーツ、ソースを挟んでいます。注文を受けてから準備に入るので、その日の一番おいしいバランスで商品が提供されます。

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」
左が桃パフェ、右が苺パフェ(提供写真:ぬちぐすいお菓子)

旬の果物は、地元のファーマーズマーケットや県外の農家さんから直送されたものを取り扱っています。時期によってどんなパフェが登場するのかは、今後のお楽しみ。特に人気なのは桃パフェ(7月頃に提供)と苺パフェ(1月頃に提供)だそうです。

1人で何個も食べられる、ふわふわシフォン

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」シフォンケーキ

続いての人気商品は「カットシフォンケーキ」です。1個280円(税込)〜350円(税込)で販売されていて、沙也加さんがお店を始めるときに最初に作った焼き菓子だけに、お店の歴史ともいえます。

米粉を使ったグルテンフリーや、北海道産の小麦を使った商品もあり、その日の気分で選ぶことができます。砂糖はキビ糖を使用し、甘ったるくなく軽やかな口溶けで、1人で2〜3個は軽く食べられる勢い。時期によっては、かぼちゃや紅芋、パッションフルーツなどの限定商品が並びます。

オートミールのイメージが変わる、オートミールクッキー

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」オートミールクッキー

最後に紹介したいのは「オートミールクッキー」です。

今回初めてオートミールのクッキーを食べて、あまりのおいしさにびっくりしました。オートミールに対して、パサパサして食べにくそうなイメージを持っていましたが、この商品はサクサクパリパリ。

具材にはカシューナッツ、アーモンド、胡桃、いちじく、レーズン、クランベリーが使われており、いろんな味わいが楽しめる飽きのこないクッキーでした。お客様からも「子供たちが率先して食べてくれる」「ストックしておきたい」といった感想をもらうそうです。

食べ物だけでなく、空間を提供できるように。今できることを一歩ずつ

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」

今後の展開を伺うと、2つの夢を語ってくれました。

「3年以内にカフェをオープンさせること」

「そして、キッチンカーを始めること」

今の自分にできることをするために、日々試行錯誤を重ねて前に進んでいくぬちぐすいお菓子。次に行ったとき、どんなお菓子に出会えるのか。そんなワクワク感も与えてくれます。

自分にご褒美をあげたいとき。身体に優しいお菓子を食べたいとき。添加物のない安心できるお菓子を食べたいとき。この店に足を運べば、おいしい焼き菓子と沙也加さんが出迎えてくれますよ。

取材・撮影・文/大城あやか
パフェの撮影・編集/みやねえ(OKINAWA GRIT)

糸満市の小さな焼き菓子屋「ぬちぐすいお菓子」テラスからの眺め

ぬちぐすいお菓子

沖縄県糸満市糸満565番地
070-9016-1513
月曜・金曜営業/11:30〜17:00
イートイン:テラス4席
駐車場:2台
公式インスタグラムへ
(営業時間は変更になることがあります。公式Instagramをご確認ください)

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この記事を書いた人

OKINAWAGRIT

小回りが効くプロ集団、沖縄の編集プロダクション OKINAWA GRIT(略して、オキグリ)です。「熱量高く、妥協せずに。そして、仕事を楽しむ」をモットーに、外部のクリエイターと協働しながら活動中。オリジナルの企画力を強みにコンテンツマーケティングを手掛け、地方企業の広報支援+SNS運用のほか、#ライター交流会 in 沖縄の開催、ライター育成講座の企画・運営を行っています。

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