群馬県高崎市の静かな街角に佇む「茶房TOKINE(トキネ)」。日本茶の新たな魅力を発見できる、茶室のような隠れ家的空間だ。亭主の堤さんが紡ぎ出すのは、日本茶の奥深さと新しい楽しみ方。ホテルマンの経験を活かし、レストランの要素を加えた独自のアプローチでお茶の可能性を広げている。「気軽にお茶を楽しんでほしい」という堤さんの想いやお店のこだわりについて、じっくりとお話を伺った。
堤さんが日本茶と出会ったきっかけは何だったのでしょうか。
堤:東京でホテルマンとして働いていた頃、急須でお茶を淹れるラウンジのような場所があって、たまたまそこに配属されたんです。そこでお茶に触れる機会があり、興味を持ち始めました。それからはお茶専門店を巡ったり、色々な本を読んだりして、基本的には独学で学んできましたね。群馬に戻ってきてからは飲食店で働きながら、お茶のイベントを開催してお茶に関するさまざまな取り組みを続けてきました。
TOKINEの日本茶のこだわりについて教えてください。
堤:それぞれのお茶の特性に合わせて、温度や使う急須、茶器を全て変えています。淹れ方にもかなり工夫を凝らしていますね。たとえば、同じ紅茶でも、種類や品種によって色々な特徴があるので、そのポテンシャルをできるだけ引き出せるよう淹れ方を変えています。香りがすごくいいお茶は、その香りを際立たせる淹れ方にする、といった具合です。
堤:ただ、温度を上げれば上げるほど香りは出るんですけど、同時に苦みも増してしまいます。抽出する時間によっても変わるんですが。そういった細かなところもお茶によって調整しています。
日本茶のペアリングもされていると伺いました。
堤:私はもともとホテルマンで、特にフレンチのサービスマンとしての経験が長いんです。その経験を活かして、レストランの要素を加えています。その中で大きなテーマになっているのが「ペアリング」。コース料理の一品一品に合わせて、ドリンクを合わせていきます。
堤:ペアリングというと、一般的にはワインとか日本酒が多いです。最近ではノンアルコールのペアリングも増えてきていますが、群馬ではおそらく、ほとんど行われていないと思います。お茶は基本的にいろいろな料理と相性がいいので、フレンチにもよく合います。
なるほど。具体的にはどのようにペアリングしていくのでしょうか?
堤:たとえば、肉料理に和紅茶を合わせたことがあります。和紅茶って赤ワインに似た要素があるんです。赤ワインとお肉の相性の良さはよく知られていますよね。そういったイメージでお茶と料理のペアリングを考えていきます。
堤:合わせるときに特に気をつけているのが、お茶の温度です。なるべく料理とドリンクの温度を近づけたほうが一体感がでます。ただ、あえて変えるときもあるんですけど。たとえば、赤ワインの温度ってだいたい12〜18℃ぐらいで提供されることが多いので、和紅茶もその温度まで調整してから、肉料理と一緒に楽しんでいただきます。
人気のメニューやおすすめは?
堤:季節問わず人気なのは、やっぱり抹茶ですね。宇治抹茶ラテや抹茶ビールも好評いただいています。最近は和紅茶も人気がありますね。
ただ、正直言うと、私がおすすめしたいのは煎茶なんです(笑)ペットボトルのお茶とはまったくの別物だと思います。当店の特徴は「シングルオリジン」という単一品種のお茶を使っていること。お茶は合組(ごうぐみ)っていう、ブレンドされているものが多いんですが、当店はブレンドされていない、一種類のみの茶葉を扱っています。
堤:茶葉をブレンドするとバランスが良くてもちろん美味しいんですが、シングルオリジンの場合、良い意味でも悪い意味でも個性がちょっと強いんです。でも、その個性が私は面白いなと思っていて。「香駿(こうしゅん)」とか「やぶきた」とか、種類ごとに香りや味わいがまったく違うので、その違いを楽しむ面白さがあると思っています。
最後に、これからやっていきたいことを教えてください。
堤:まずは、お茶文化があまり根付いていない群馬の地で、お茶を楽しむという文化や需要を作っていきたいなと思っています。なので、日本人の方はもちろんですし、外国人の方にも気軽に来てほしいですね。普段、お茶を飲みにいくというと、カフェでコーヒーを飲むっていうことが多いと思うんです。でも、本来の意味で「お茶を楽しむ」という、そういう文化を作っていきたいと思っています。(了)
茶房TOKINE(トキネ)の情報
住所:〒370-0044 群馬県高崎市岩押町14-15 ココレーヌ岩押1階A号室
電話番号:027-386-2320
営業時間:13時-17時、19時-24時
定休日:火曜