道後温泉で訪れる人を魅了し続ける「ユノマチベーカリー」。
後編では、オーナーの越智尚信(以下、尚信さん)さんにインタビューした内容を紹介します。これまでの歩みや仕事へのこだわり、今後の夢など、貴重なお話を聞かせてもらえました。
ユノマチベーカリーに興味がある方やパン屋さんを開業したい方など、参考になる内容が盛り沢山です。ぜひ最後までご覧くださいね。
赤字の危機に陥っていたオープン当初
オープンしたときからお店は繁盛していましたか?
尚信さん「いいえ。お客さんには全く来てもらえませんでした。
一般的に、お店をオープンしたときは一定の売上を期待できるのですが、オープンから1ヶ月後には赤字ギリギリのラインになりました。当時は、朝6時半にお店をオープンして、最初にお客さんが来たのが10時半というケースもありました。
そんな中、今治でパン屋を経営している先輩が、テレビで紹介してくれたんですよ。すると信じられないほどお客さんが増えて、そのお陰で今があります。今はオープン当時の3倍ぐらいの売上があり、その先輩には頭が上がりません」
いつも何時からお仕事を始めているんですか?
尚信さん「オープン当初は早朝4時に出勤していたんですが、今は深夜2時に出勤しています。土曜日の場合は、大体1時半に出勤しますね。最初は人生の楽園的な感じで、夫婦2人でのほほんとお店ができたらいいなと思っていました。
今では、帰宅してからすぐに食事、入浴を済ませても、5時間ぐらいしか寝られない状況になりました。自由時間は全然ないですね笑」
選択と集中による時間管理
尚信さんはどのように時間を管理しているんですか?
尚信さん「力を入れるところと抜くところを見極めています。他のパン屋さんのように、天然酵母や自家製フィリングなどを使うパン作りは諦めています。自家製だからといって、必ずしも美味しさに直結するものではないことと、時間や手間がかかりすぎることが理由です。
確かに、自家製フィリングを使っていないと説明すると、何も買わずに帰っていくお客さんは一定数います。
その分、人気の明太フランスのフィリングは一から配合しています。それに、業者さんが販売しているカスタードやカレーなどのフィリングって、プロが研究していますよね。
自家製フィリングを作る時間があるなら、その分多くの種類のパンを作る方がお客さんに喜んでもらえると思っています」
安さと美味しさの両立
材料費を抑えている分、お客さんに還元しているのですか?
尚信さん「そうですね。他のパン屋さんのようにランクの高い材料を使うのではなく、普通の材料をいかに美味しくできるかを研究してきました。その結果、お客さんにとって買いやすい値段になっていると思います。
最近は、ケーキと同じくらいパンの値段が高いですよね。職人として、いい材料を使うパン作りを魅力的に感じますが、その分売価も上がっちゃうんです。原材料や最低賃金、光熱費も上がっている今、売価を上げざるを得ないお店が多いと思います。
すると、お客さんがパンを買い求めづらくなっていく感じがしたので、ウチのお店ではやらないでおこうと。子どもや年配の方など、みんなが買いやすいパンを提供したいんです」
会社員の経験を活かした経営
材料費を抑えながら人気店を作り上げるには、相当な腕が問われそうです!
尚信さん「僕は職人として技術力がないと思っていますが、会社員のときの経験を活かせています。お客さんの流れや季節商品の展開の仕方などに関しては、エリアマネージャーをやっていたときの経験が役に立っています。
季節に合わせた商品ラインナップなど、そこそこの技術レベルだとしても、それを補えるぐらいの展開力といえるでしょうか」
新商品作りで参考にしているものは何ですか?
尚信さん「Instagramで、日本全国のパン屋さんを常にリサーチしています。流行を敏感に捉えて、すぐ行動できるようにしていますね。最近は甘酸っぱいものやクロワッサンのワッフルなど、韓国系のパンを作ってきました。
あとは、近所のパン屋さんと情報交換をしたり、いろいろなことを教えてもらったりしています。あまり職人としてのプライドがないので、いいと思うものはパクらせてもらっています笑。他のパン屋さんを見に行ったときは、必ず名乗るようにしています。
それがきっかけで仲良くなり、何回か通ううちに『どうやって作るんですか?』と聞くこともあります。そのあとで『やってもいいですか?』って聞くと、大抵『いいですよ』と言ってもらえるんです。松山でパン屋さんを営んでいる人の中に、多くの友達がいますよ」
常に学び続ける姿勢
尚信さんの人柄が魅力的だからですね!
尚信さん「そうですかね。技術を教えてもらうために、下手に行くと決めているのが大きいかも知れません笑。会社員のときとは違い、独立すると教えてくれる人がいなくなるんですね。
自分から勉強しないといけないですが、会社員のときとは違い、やればやっただけ収入として返ってくるのがやりがいになっていますね。
僕はパン作りが好きなんじゃなくて、仕事が好きなんだろうなと思っています。お客さんに喜ばれることや、それが数字になって返ってくることが魅力的で、仕事が趣味みたいなものです」
パン屋経営で広がる未来
今後はどのような展開を考えていますか?
尚信さん「厨房が一人用なので、開業するためにした借金を返済しつつ、リニューアルオープンできたらいいなと思っています。将来的に、厨房を広げたり大きい機械を導入できたりすれば理想的です。
今は基本的に一人で製造しているので、職人さんを雇い、2人以上で製造できる環境を整えたいです。ゆくゆくはイベントなどにも出店して、より多くのお客さんにパンを届けたいと考えています」
息子さんにあとを継いでほしいですか?
尚信さん「そんなことはないですね。自分が好きな道に進んでもらえれば嬉しいです。
僕と同じことをすると絶対苦労するので、もっと勉強してもっと楽な会社に入ってほしいですね」
インタビューを終えて
尚信さんのお話を聞いていると、パン職人として開業することの大変さを感じました。
一方で、大変な中での笑顔や気配り、時間と資源の活用など、尚信さんの「今できることをやり抜く」姿勢に感銘を受けました。
長時間労働や低賃金など、パン職人を取り巻く環境は恵まれているとは言えません。リスクが伴うものの、パン職人が理想的な働き方を得るうえでは、独立が最適解なのかも知れません。
謙虚な姿勢やリスクを背負いながらの進歩があるからこそ、尚信さんは多くの方から愛されているのでしょう。ユノマチベーカリーに行ったときは、ぜひ尚信さんの人柄のよさにも触れてください。
住所 | 愛媛県松山市道後湯之町4-22 二宮ビル1F |
営業時間 | 7時から18時 |
休日 | 日曜・月曜 |
SNS | |
電話 | 089-948-8631 |
支払い方法 | ・クレジットカード ・電子マネー ・QRコード |
駐車場 | 400円以上購入でサービスチケット1枚 【提携駐車場】 ・濱商パーク ・道後温泉第一開発 ・湯の町パーク第一開発 ・坊っちゃんパーク 【提携外駐車場】 「濱商パーク 伊佐爾波」に限り有効 |
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