2024年4月、駅から離れた住宅街にオープンした「SITYBAL COFFEE(シティーバルコーヒー)」。
40年続いた祖父の喫茶店を受け継ぎ、新たなカフェスタイルで地域に根差したお店づくりをしています。
店主である飛鳥田(あすかた)さんに「店名に込めた想い」や「お店のコンセプト」、「コーヒーやスイーツへのこだわり」を語ってもらいました。
祖父のお店を受け継ぎ、新たに紡ぐカフェストーリー
カフェを開店して何年目になりますか?
SITYBAL COFFEEは2024年4月に開店しました。
なので、開店から1年も経っていない新しいお店です。
お店があるのは駅から離れた住宅街ですが、なぜこの地域でカフェをオープンしようと思ったのですか?
実はこのお店、元々は私の祖父が喫茶店を40年間営んでいた場所なんです。
祖父の喫茶店は地元の常連さんが多く来店するお店でした。しかし、祖父も高齢のため引退を考えていて。
閉店の話が出ていた時、私自身もカフェを開業したいという夢を持っていました。ちょうど物件を探しつつ、カフェ運営を学んでいる最中だったんです。
それでふと「孫である自分がこの場所を引き継けば、地域の方々にも喜んでもらえるのではないか」と考えるようになりました。
祖父が40年にわたり喫茶店を営業した相生という土地で、新しい形のカフェを始めることは私にとって大きな挑戦でしたが、自分にしかできない挑戦でもあると思ったのです。
カフェをオープンしたいと思っていたのは、おじい様の影響ですか?
はい、そうです。
私自身、生まれも育ちも千葉なので、祖父の喫茶店に行くのは帰省のタイミングだけでした。それでも、祖父がカウンターに立ってコーヒーを淹れる姿は、幼い頃の私にとってカッコよく映りました。
「将来、自分もこんなふうにやってみたい」と、漠然と思っていたんです。
では、小さい頃からカフェで働くことは決めていたのですね
実はそういうわけでもありません。
憧れはずっとありましたが、明確な目標として決めていたわけではありませんでした。
「カフェをオープンする」と本気で決意したのは、大学3年生のときに行ったイギリス留学がきっかけです。
カフェのオープンを決意したきっかけを詳しく教えてください
イギリス留学で衝撃を受けたのは、40代や50代の社会人留学生が多かったことです。
日本では「留学=学生」のイメージが強いと思いますが、海外では「やりたいことを純粋に追求している大人たち」が当たり前のように留学していました。その姿を目の当たりにして「年齢や状況に関係なく、自分のやりたいことがあるなら迷わず挑戦すべきだ」と強く思いました。
さらに、留学中に出会った友人たちは、それぞれ明確な目標を持ち、その目標に向かって行動していました。そんな姿を見て「自分のやりたいことは何だろう」と改めて考えるようになり、自然と心に浮かんだのが、幼い頃から憧れていたカフェの開業だったのです。
”SITYBAL COFFEE”に込めた想いと世界観
店名にはどのような意味や想いが込められていますか?
SITYBAL COFFEEの”SITYBAL”は、「多様性」という意味の”diversity”と「世界的な」という意味の”global”を掛け合わせて名付けました。
このSITYBALという造語には”お店としてありたい姿”や”お店のコンセプト”を詰め込んでいます。
”diversity”の”sity”に込めた想いを教えてください
”多様性”を大切にしたいと思ったのは、祖父の喫茶店に通っていた老夫婦のお客様がきっかけです。
ある日、祖父のお店に遊びに行った時、その旦那様が祖父に「このお店の存在が本当にありがたい」と話しているのを耳にしました。
その言葉の背景には、奥様がアルツハイマー型認知症を患っており、他のカフェではトラブルを起こしてしまうという事情がありました。
そんな状況の中でも、祖父の喫茶店はその事情を理解し、温かく受け入れてくれる場だったといいます。その話を聞いたとき、「誰にでも居場所を提供できるカフェを作りたい」という強い想いが芽生えました。
「どんな事情を持つ方でも受け入れたい」
そんな気持ちを”sity”に込めています。
”global”の”bal”にはどのような意味があるのですか?
”global”という言葉を取り入れたのは、私がカフェを開業する決心をした背景にイギリス留学での経験があったからです。
留学先で出会った友人たちとの交流や、異なる文化から得た刺激が今の私を形作っています。そんな世界での経験にちなんで”global”を店名に取り入れました。
また、当店のスイーツメニューは”global”という視点を持って考案しています。
単に季節の食材を採用するのではなく、世界中の国々からインスピレーションを得て作り上げています。
「世界中の国々からインスピレーションを受けている」とはどういう意味ですか?
新作スイーツを考案するとき、私は自宅にある世界地図の前に立つところから始めます。
直感的に気になった国を選び、その国の特産品やトレンドを調べて、それをスイーツに反映させていくのです。
その際、留学時代の友人たちに連絡を取り、その国で今話題になっているものを直接聞くこともあります。意外な発見が多く、「こんな食材が有名なんだ」と驚くことも少なくありません。
世界の国々からヒントを得てスイーツを作るのが私のスタイルです。
具体的にはどういったスイーツメニューが出来上がるのですか?
例えば、現在提供している「ベリーのバスクチーズケーキ」は、フィンランドから着想を得ました。
フィンランドはストロベリー、クランベリー、ラズベリーなどのベリー類の産地として有名で。
「数種類のベリーをチーズケーキに使うと面白いかも」と思って作り、ベリーのバスクチーズケーキが完成しました。
嬉しいことに多くのお客様から好評をいただいております。
コーヒーの香りの中、地域の繋がりを深めるカフェを目指す
コーヒーやスイーツを作る上で大切にしていることを教えてください
私が最も大切にしているのは「コーヒーとスイーツを合わせたときのバランス」です。
コーヒーとスイーツを交互に味わったとき、どちらの味わいも邪魔をせず、むしろ引き立て合うように味の設計をしています。そのため、どちらも後口がスッキリとした仕上がりになっています。
コーヒー豆はどちらのものを使用していますか?
コーヒー豆は、相模原の光が丘にある「豆工房コーヒーロースト相模原店」から仕入れています。
スイーツに合うコーヒーについて相談したところ、「一緒に作りましょう」と快く引き受けてくださりました。
オリジナルブレンドの開発がスタートし、試作を重ねて辿り着いたのは、コーヒーのしっかりとした苦味を感じつつも、後味がスッと抜けるようなブレンドです。
スイーツを引き立てるだけでなく、単独で飲んでも満足できる味わいに仕上がりました。
コーヒーの抽出方法は?
当店ではエスプレッソマシンを使用しています。
その理由はマシンで抽出することで生まれる「クレマ」という液面に浮かぶ細かな泡を作りたかったからです。
クレマがあることによって、コーヒーの風味や香りを閉じ込められますし、飲み口がまろやかになります。
私自身がクレマのあるコーヒーが好きだったので、ハンドドリップではなくマシンで抽出するスタイルを採用しました。
お店の人気スイーツについて教えてください
当店で特に人気なのは「バスクチーズケーキ」と「ソルティレアチーズケーキ」の2品です。
バスクチーズケーキは、クリームチーズ本来の風味を大切にし、甘さを控えめにすることで、どなたでも食べやすい仕上がりになっています。
一方、ソルティレアチーズケーキは複雑な味わいが特徴的です。塩気の効いたナッツやバタークッキーの土台に、紅茶を練り込んだチーズクリームを合わせています。
このソルティレアチーズケーキも、イギリスをイメージして作りました。使用しているアールグレイの茶葉は、イギリスの紅茶文化を表現しています。
どちらのスイーツも、甘さが後に残らないよう調整することで、コーヒーとの相性を最大限に高めています。
最後に、今後の目標を教えてください
私の願いは「地域の人々が集える場所」であり続けることです。
店内では知らないお客様同士でも自然に会話が生まれることがあります。
「レモン、よかったらどうぞ」といった心温まるやりとりもあって。
そんな何気ない交流を見るたびに、「こういうのっていいな」と思うんですよ。
そんな時は、この場所が新たな出会いやコミュニケーションを育む場になっていることを実感します。
今後も祖父の営んでいた喫茶店のように、地域の方々が気軽に立ち寄れる、そして笑顔になれる場所を提供していきたいです。
飛鳥田さん、ありがとうございました!
SITYBAL COFFEEの店舗情報
店名 | SITYBAL COFFEE (シティーバル コーヒー) |
住所 | 神奈川県相模原市中央区相生3-3-18 |
アクセス | 横浜線・淵野辺駅(南口)から徒歩20分 横浜線・矢部駅(南口)から徒歩20分 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
定休日 | 不定休(SNSで月の営業日を告知) |
お店のSNS |
※上記は取材当時の情報です。来店の際は最新情報のご確認をお願いします。