年が明けて、寒さが厳しさを増す1月。山形県庄内地方では各地で寒鱈まつりが行われます。庄内浜の冬の風物詩で、1月〜2月に最盛期を迎える寒鱈漁。冬の海の恵みを堪能できる寒鱈まつりは、からだも心もあたたまるまつりです。この味を求めて県外からも多くの観光客が訪れます。庄内の冬の自慢の味、今しか味わえない寒鱈汁をたっぷり堪能します。
庄内の冬の味覚の王様「寒鱈汁」
農林水産省の「うちの郷土料理」にも選定されている寒鱈汁。読み方は(かんだらじる)ですが、地元では(どんがらじる)とも呼ばれています。魚のアラをどんがらというので、どんがら汁と呼ばれて親しまれてきました。
1月〜2月の寒の時期に捕れるマダラを、庄内地方では寒鱈と呼び漁が盛んに行われます。頭から尾まで捨てるところがない寒鱈を、鍋にして漁師が食べていたのがはじまりと言われています。漁師めし、聞いただけでおいしそうな響きです。
漁師めしならでは?作り方も豪快
寒鱈の身を頭から尾までをぶつぎりし、肝や白子の内臓も取り出して、一緒に白みそベースのスープにぼんぼん入れていきます。少し煮てネギを加え、岩ノリを添えたら五臓六腑に染み渡る極上の鍋のできあがりです。シンプルですが、そのうまみは格別です。庄内に生まれてよかったと思うほどです。
海からの冷たい風でからだが芯から冷える山形、庄内の冬。冷えたからだを芯から温める庄内の冬の味覚、「寒鱈汁」。極寒の中で食べる至福の一杯を求めていざ寒鱈まつりへ。
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気温は0℃で吐く息は白い。水たまりも凍るほどの寒い朝です。しかし、今日は庄内名物の強い風もなく、穏やかで凛とした朝を迎えました。庄内地方の穏やかな冬晴れは貴重です。今日は最高の寒鱈日和。
酒田市の日本海寒鱈まつりの開催時間は朝10時~15時。寒鱈汁がなくなるまで。ちょうど10時になろうとしているころに会場へ到着。主催者からのアナウンスで「各ブースの準備が整いましたので、今から日本海寒鱈まつり始めます!」の威勢のよい一声が聞こえてきました。
会場では拍手も起こっています。このときを待っていた寒鱈ファンは多いようです。会場はすでに活気にあふれ、人気の高さを知ることができます。さて、着いたばかりですが私も早速一杯いただきましょう!
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メインはもちろん寒鱈汁。複数の団体がそれぞれオリジナルの寒鱈汁を振る舞います。
地元酒田の商工会や会場の中町の商店街の皆さん、アル・ケッチャーノで有名な奥田シェフ監修のものまで、寒鱈汁といえどもバリエーションが豊かです。どの寒鱈を味わおうか悩んでしまいます。
価格はどの団体も同じ、一杯800円。寒鱈汁のほかにも、寒鱈ラーメン、弁慶飯、玉こんにゃく、屋台のポテトやからあげなど、おいしい匂いとたくさんの誘惑でいっぱいです。
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私も行列に並び、寒鱈汁をゲット。久しぶりの寒鱈汁。まずはスープをひとくち。白みそ仕立ての甘めのみそ、寒鱈のうまみとともに冷えたからだに沁みわたります。「はぁー、うまい!」ほくほくした白身にプルプルの皮、肝やアラがうまさに追い打ちをかけて、とどめの白子。
満足すぎるほどの一杯です。箸が止まることはなく一気に完食。ごちそうさまでした。どのテーブルからも「うんめぇ!」のひとことや、はぁ~と満足の声が聞こえてきます。寒空のもとで食べることも調味料のひとつです。今回は天気に恵まれましたが、もっと吹雪いていたほうがさらに格別の寒鱈汁になったかもしれません。
この一杯を求めて毎年足を運ぶ人もいるぐらいです。寒鱈汁は絶対に味わってほしい庄内の冬の味覚です。
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寒鱈汁のほかにおにぎりなどの販売もあるので、一緒においしい庄内米を味わうことができます。おいしい庄内米のおにぎりと寒鱈汁。こんなに贅沢なごはんはありませんが、私のおすすめは日本酒です。寒鱈汁のすこし甘めの味に、辛口の日本酒がよく合います。これがまた最高です。
寒鱈を食べながら日本酒をきゅーっといきたくなるなぁ…と思ったら、ちょうどよくお酒祭りも開催されていました。呑べえの気持ちをよく理解しているまつりです。地元の酒蔵を中心にずらーっとボトルが並びます。1杯200円で飲み比べができるのも嬉しいです。日本酒好きにはたまりません。
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寒鱈まつりの開催と一緒に、消防の出初式も行われています。寒鱈と日本酒を味わいながら気分も良くなってきたところで出初式。あれ?まだ正月かな?と思ってしまうような組み合わせです。ポーズがきまるたびに、歓声と拍手が巻き起こります。近くで見ると迫力もあり、とても楽しい時間を過ごすことができました。
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寒鱈まつりの概要
開催場所:中町モールなど 山形県酒田市中町周辺
中町モール、中通り商店街、酒田駅前ミライニ、さかた海鮮市場、漁師飯番屋
料金:1杯800円
※当日、各店舗で現金にてお買い求めください
備考:寒鱈汁は売り切れ次第終了となります
同日開催:■酒田市消防出初式 10:30~11:30@旧マリーン5清水屋前(国道112号)
■2025大沢チャリティーショップ 10:00~11:30@中町にぎわい健康プラザ
琢成小学校5年生が手作りの商品や地元企業とのコラボ商品を販売、売上は全額寄付されます
■新春 酒まつり @中通り商店街「酒・人形・ギフトの大泉」向かいテント
1杯200円で酒田・遊佐8蔵の新酒を楽しめます
お問い合わせ先:第38回酒田日本海寒鱈まつり実行委員会(酒田商工会議所内)
TEL:0234-22-9311
まとめ
酒田市の日本海寒鱈まつりは、市内の数か所で開催されていました。今回はメインの中町会場を訪れましたが、次回はほかの会場にも足を運んでみようと思います。庄内地方では家庭でも寒鱈汁を楽しめるように、この時期は寒鱈鍋のセットがスーパーでも販売されています。
しかし、イベントで食べる味は家庭とは違った特別な味です。会場の賑わいや参加している人たちの笑顔、庄内の厳しい寒さ、すべての要素が寒鱈汁の味を最高のものにしているのだと思います。寒鱈汁のイベントを逃してしまっても、2月下旬頃まで庄内の各お店で味わうことができます。至福の一杯を味わうために、「まんずんめ寒鱈汁、食べさこいのー」(とってもおいしい寒鱈汁、食べにきてくださいね)