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フード  |    2025.03.15

竹生島やメタセコイア並木観光の食事は、琵琶湖ならではのビワマスやフナの料理で|滋賀県高島市【前編】

琵琶湖の固有種・ビワマスを刺し身でいただく

観光に行って名所や旧跡を見たら、昼食にもその土地でしか食べられないものを選びたいですよね。宿泊をしたのならば「ホテルを抜け出して、地元の人に愛されるお店ののれんをくぐる。名物をつまみに地酒をグイっと……」といった気分になるときもあるでしょう。

もし、琵琶湖の北西部に行って、メタセコイア並木や竹生島を楽しんだのならば、JR湖西線・近江今津駅のすぐ近くにある「うはる」に行ってみましょう。ビワマスやギンブナ、ゲンゴロウブナ、イワトコナマズなど琵琶湖ならではの料理が味わえます。

琵琶湖を代表する味覚・湖魚とは

琵琶湖は世界でも有数の古い湖で約400万年前に成立しました。その分、生息する動植物も多彩で、1,000種類以上がいます。そのうちの50種類ほどは琵琶湖の固有種です。

これらの中の魚全般については、「湖魚(こぎょ)」と呼ばれ、琵琶湖ならではの味覚とされています。

しかし、高度成長期以降、水質汚染や外来種の増加、護岸工事による産卵場所の減少などにより、湖魚は生息数も漁獲高も激減しました。近年はこれに、漁師の高齢化や後継者不足が加わり、湖魚を食卓で楽しむのがさらに難しくなっています。

これら湖魚を材料にした料理を欠かさないように用意しているのが「うはる」なのです。

新鮮な湖魚は地元の人にも新しい味覚

手前から、ゲンゴロウブナ、ビワマス、イワトコナマズ

うはるで提供している「湖魚」は昔ながらのものではありません。年配の人にすれば、「味にクセがない」ことで驚くのではないでしょうか。

淡水魚独自のクセはない「うはる」の料理

「湖魚の料理を用意しても、最初、地元のお客さんはあまり喜びませんでした」と、うはるの店長の山本陽一郎さんは言います。「『昔なじんだ湖魚が久々に味わえる』とはならないんですよ。淡水魚独自のクセがあると思っているんです」

しかし、焼き魚・天ぷらなど火を通したものであれ、刺し身であれ、実際に食べてみるとクセは全くありません。

神経締めが湖魚の鮮度をアップさせる

「血抜きをしている上、実は締め方にも理由があるんです」

魚の締め方には、氷詰めにする「氷締め」、刃物を使う「活け締め(いけじめ)」。活け締めから発展し、額からワイヤーを入れて脳・背骨に通す「神経締め」などがあります。

海の魚では当たり前に行われてきた活け締めや血抜きですが、湖魚では違いました。その結果、暴れて消耗することで身は傷みやすくなり、体内に残った血がクセを発生させていました。

うはるに入荷する湖魚は、獲った時点でピンピンしているものは神経締めにしてあります。主な神経を破壊するので、細胞の活動が一気に止まり、身の変質も遅らせることができます。

ピンピンしている以外のものも、その状態に応じて最適な締め方を選んでいます。

これら湖魚はすべて、中村水産が水揚げしたものです。中村水産は琵琶湖北端のやや西寄りにある海津漁港を拠点としていて、淡水魚に対する活け締めさえ珍しかった10年ほど前に、最初に神経締めを採用しました。

大阪ミナミの料理人と琵琶湖の漁師の出会いから「うはる」は生まれた

うはるは実はこの中村水産の直営店です。

子育て環境を求めて大阪から移住

山本さんが移住した場所の最寄り駅付近

山本さんは大阪ミナミ・東心斎橋で勤めていました。日本各地の港から魚を直接買い付けする海鮮居酒屋です。中村水産代表の中村清作さんとは、湖魚の仕入先として何年もの付き合いがありました。

2022年春、山本さんの奥さんと、当時は小学生だったお子さんが大津市の北の端、旧・志賀町に移住しました。西にはびわ湖バレイのある蓬莱山が迫り、東の眼下には琵琶湖の水面が望めます。「のんびりした、いい環境で子供を育てたい」との考えだったといいます。

当初、山本さんは大阪に残りました。しかし、「このままでは家族と過ごす時間が持てない」と、1年後、山本さんも移住しました。大阪のお店は退職し、次の仕事のあてもありません。

「居酒屋を引き受けてくれないか」

冬のある日の、夜メニュー(居酒屋メニュー)

山本さんが新しい仕事を探していた時、中村さんから声がかかりました。「会社の業態のひとつとして、居酒屋を始めようと思う。そのお店の店長をやってもらえないだろうか」

物件探しから始まり、2023年11月14日にオープンしました。場所は、中村水産のある海津漁港から南南西に8キロほどの近江今津駅直近です。店の名前は中村さんがつけ、ひらがな3文字で「うはる」としました。もし、漢字を当てるのならば「魚陽」です。「陽」には「陽の当たる場所」との意味が込められています。

もちろん、湖魚の料理は昼メニュー、夜メニューともに欠かせません。しかし、伝統的な食べ方や調理方法には、山本さんはこだわっていません。

「湖魚を純粋に食材として見ています。その魚にとって、ベストの調理方法をすればいいと考えているんです」

さらには海の魚などもあって、一般的な居酒屋としても充実しています。

観光客にも地元の人にも愛されるお店に

うはるの店長、山本陽一郎さん

お店の場所を今津にした理由のひとつは、「琵琶湖北西部の玄関口」です。近江今津駅は1日に上下3本ずつだけとはいえ、特急サンダーバードも停車します。大きな観光ホテルもあります。

竹生島への観光船の乗船所も近江今津駅近くです。このあたり一番の観光スポットであるマキノのメタセコイア並木も、車ならば15分ほどしかかかりません。

「琵琶湖周辺でしか見られない光景を目で楽しんだら、舌でも琵琶湖ならではのものを楽しむ」は自然な選択ではないでしょうか。地元の人にとっても、身近な居酒屋としても楽しめる上、新しい湖魚料理にも出会えるお店です。

後編はこちら

竹生島やメタセコイア並木観光の食事は、琵琶湖ならではのビワマスやフナの料理で|滋賀県高島市【後編】

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この記事を書いた人

柳本 学

滋賀県大津市在住のライター兼カメラマン。守備範囲を広げ、「あまり例のない、文章・写真から制作まで一括で請け負えるホームページクリエイター」としても活動しています。ビジネス、文化、科学技術なども書いてきましたが、地域社会に重点を移す途上です。かつては全国紙 の記者・カメラマンでした。取材参加は阪神・淡路大震災、オウム真理教本部捜査(山梨県)、村山富市・金泳三日韓首脳会談(ソウル)など。稲盛和夫さん、松田聖子さんらのインタビューも撮りました。ホームページ:https://atelier-pentad.com/

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