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フード  |    2025.03.29

いつまでも変わらない場所であり続ける「もてなしや 絆」|福井県越前市

福井県のほぼ中央に位置する越前市は、古くから職人の技が息づく文化的な街です。

平安時代から続く日本最古級の「越前和紙」や約700年の歴史を誇る「越前打刃物」などの伝統技術は、今でも脈々と受け継がれています。

また「源氏物語」の作者として知られる紫式部が滞在した地としても有名で、2024年の大河ドラマ「光る君へ」の舞台にもなりました。

そんな歴史と文化が色濃く残る越前市の中心部、武生(たけふ)駅から徒歩約5分の路地にある食事処「もてなしや 絆」。

一歩足を踏み入れると、どこか懐かしい、実家に帰ってきたような温かさに包まれます。

今回は「もてなしや 絆」の店主・谷口さんに、お店にかける想いや大切にしていることについて話を伺いました。

「自分で選べる日替わりランチ」はなかなか選びきれない!

「いらっしゃいませ~!」

カラカラと引き戸を開けると、谷口さんご夫婦の明るい笑顔と元気なあいさつが、私たちを迎えてくれます。

ランチタイムのメニューは、日替わりランチと新鮮な海鮮丼です。特に800円で好きなおかずを選べる日替わりランチは、店の人気メニューとなっています。

10種類以上の彩り豊かな惣菜がずらりとカウンターに並んでおり、これらの中から2種類を選べるぜいたくなスタイル。

メニューは、メンチカツや唐揚げなどのスタミナ満点なものから、おひたしや焼き魚などのヘルシー志向のものまで、バラエティ豊かです。

カウンターの前では、多くのお客さんが「今日はどれにしようかな…。」と真剣な表情で悩む姿を見かけました。

たくさんのおかずの中から、今回筆者が悩みに悩んで決めたのは「なすの土佐煮」と「ささ身しそカツ」の2種類です。

トロトロのなすは味がよくしみていて、ささ身しそカツはサクサクした衣の食感がたまりません。どちらもご飯との相性が抜群で、ぺろりと完食してしまいました。

外食ランチはどうしてもパスタやカレー、ラーメンなどの1品メニューが多くなりがちで、栄養が偏ってしまうこともあります。

しかし「もてなしや 絆」ではご飯、お味噌汁、選べるお惣菜2品に香のもの(お漬もの)まで付いてくるので、栄養バランスもばっちりです。

食後にコーヒーをいただけるのも、うれしいポイントです。今回はアイスコーヒーを注文しましたが、ホットとアイスが選べます。

少しでもくつろげる時間を過ごしてほしい。そんなお店の細やかな心配りが、心にじんわりと染みわたります。

町の集会所のように「人がつながれる場所」を目指して

もともと料理人志望ではなかった谷口さん。

しかし「父と同じ土俵で勝負したい」という思いから、寿司屋を営む父と同じ料理の道へ進みました。

大阪、金沢、東京などの割烹料理店をはじめ、さまざまなお店で腕を磨く中で、ふとこんな疑問が浮かんだそうです。

「自分が作った料理は、本当にお客さんが求めているものだろうか」

谷口さんが提供したい料理と、お客さんがその場で本当に食べたいと思っている料理。2つの間にズレを感じるようになったと言います。

「僕は、お客さんが本当に『食べたい』と思うニーズにお応えできる店を持ちたいと思ったんです。」と谷口さんは真剣なまなざしで話してくださいました。

お客さんの心からのニーズに応えるためには、思っていることを自然に話してもらえるフラットな場が欠かせません。

「まるで町の集会所やふらっと立ち寄れる公園のように、人と人が肩ひじ張らずに自然とつながれる場所をつくりたい」

そんな思いを胸に、2015年7月、谷口さんは妻の真紀子さんとともに「もてなしや 絆」を開店しました。

「脇役」としてお客さんの居場所づくりをサポートする

店内はいつも和気あいあいとした雰囲気で、お客さんはそれぞれリラックスした様子で食事や会話を楽しんでいます。

「最近、仕事忙しくてさ~」と谷口さんに最近の出来事を話す人、小上がり席で友人や仕事仲間と談笑する人、カウンター席で1人食事を味わいながらランチ休憩のひと息をつく人…過ごし方は人それぞれです。

オレンジ色の優しい照明に木のぬくもりを感じるテーブル、お店の人との何気ない会話。どこか懐かしい雰囲気の中で、時間を忘れてくつろいでしまいます。

子ども連れの家族やご年配でも安心して利用できるよう、あえて低めに設計された小上がり席

「『楽しい、おいしい』の満足感をつくりだすのは、お客さん自身なんです。僕たちの役割は、それぞれのお客さんが心地よく過ごせる空間をつくることですね」

谷口さんの言葉を聞いて、筆者がはじめてこの店を訪れた日のことを思い出しました。

ーこのお店は自分を歓迎してくれる。ちゃんと居場所があるー

そう感じた安心感は、谷口さんがそっと手を差し伸べて作り上げてくださっていたのだと気づきました。

たとえ100人のお客さんが目の前にいたとしても、一人ひとりと向き合い「どうしたら気持ちよく過ごしてもらえるだろうか?」と先回りして行動する。

「ご飯の量は多すぎないだろうか?」

「部屋は寒くないだろうか?」

「飲みものは足りているだろうか?」

そんな細やかな気配りこそが「もてなしや 絆」ならではの温かい空間を作り出しているのだと、あらためて感じました。

目標は「お客さんにとって変わらない場所であり続ける」

「今、家族で来ている子どもたちが10年後、15年後に恋人や家族を連れてきて『昔、よく家族でここに来てたんや』って紹介できるような、変わらない場所であり続けたい」と谷口さんは語ります。

しかし、お店が「変わらない場所」であり続けるためには「変わらないための努力」が必要です。

「この店はいつ来ても変わらない」

お客さんにそう思ってもらえるように、飽きられることのないように、自分たちは「変わり続ける」。

日々の小さな変化に気づき、常に今を更新し続けることは、想像以上に難しい試みかもしれません。

「絆」の一文字は、谷口さんご夫妻がもっとも大切にしている言葉

2025年7月で「もてなしや 絆」は10周年を迎えます。

「なんか分からんけど、ほっとする。また来たくなる」

「もてなしや 絆」には、言葉だけでは言い表せない、不思議な魅力があります。

越前市で日々の喧騒を忘れ、あたたかい気持ちに包まれたいときは、ぜひ「もてなしや 絆」を訪れてみてはいかがでしょうか。

食事が終わり、お店をあとにする頃には、心のこもったおもてなしに自分の心もふわっとほどけていることでしょう。

店舗情報

もてなしや 絆
住所:〒915-0074 福井県越前市蓬莱町7-20
アクセス:ハピラインふくい線 武生駅より徒歩約5分
電話:0778-42-7125
営業時間:ランチ11:30~13:00 
     ディナー18:00~21:30
定休日:日曜、祝日

     

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この記事を書いた人

葉鳥まい

福井県在住・5歳男の子を育てる転勤族ママライター。趣味は音楽フェスと歴史スポット巡り。 「住んでみないと分からない、その土地ならでは魅力」を転勤族の目線でお届けします!

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