
横浜の相鉄線・天王町駅の高架下にあるクリエイター向けのコワーキングスペース「PILE -A collaborative studio-(パイル)」。
パソコンを広げて仕事をするだけでなく、親子やアーティスト、クリエイターの方などがものづくりを楽しめる場所となっています。そんなユニークな空間を手がけたのは、「PILE」の代表・津田賀央さん。
「都市でも人と人が自然につながる場を作りたい」
そんな思いのもと生まれた「PILE」は、オープンから3期目を迎え、横浜の新たなクリエイティブの拠点として注目を集めています。
今回は、PILEが生まれたきっかけや、次世代アーティストを支援する「PUSH FOR CREATION」などの取り組み。津田さんが描く“これからの横浜のまちとアートの未来”について、うかがいました。
横浜・天王町にクリエイター向けのワーキングスペース「PILE」を創った理由

横浜の相鉄線「天王町駅」から徒歩約1分。高架下施設「星天qlay」に誕生したクリエイター向けコワーキングスペース「PILE(パイル)」。
訪れるたびにワクワクする、そんな空間を手がけたのは横浜出身の代表・津田賀央さん。(以下、津田さん)

会社員生活を経て、長野県富士見町で「富士見 森のオフィス」 というコワーキングスペースを運営してきました。これまでに大小合わせて200を超えるプロジェクトを手がけたそう。
「場所を変えることで、人は働き方や生き方まで変えられるんだと感じた10年でした」
「富士見 森のオフィス」は登録者数2,000人を超えるまでに成長。移住者も増え、富士見町に住む人や地域に変化をもたらしました。

そんな経験を経て「都市でも地方と同じように人が集い、つながり、何かが生まれる場を作れるのか」という問いが芽生えた津田さん。
「都市でやるなら地元・横浜で」と思っていたところ、「天王町駅」周辺の高架下再開発プランの相談を受け、PILEのオープンへとつながっていきます。
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「20代のころ、会社員の傍らクラブでVJ(映像演出)としても活動していたとき、こんな場所があったらいいなって、VJチームのみんなと話していました。クリエイティブなことには“場の力”がとても大事だと感じていたんです。PILEにはそんな思いも込めています」
働く場所はもっと自由でいい

PILEに足を踏み入れると、大きな窓から光が燦々と降り注ぎ、高い天井と広々とした空間に温かみのあるヴィンテージのソファや木製のテーブル、心地よい音楽が迎えてくれます。一般的なコワーキングスペースとは、一線を画しているように見えます。

「海外のコワーキングスペースを見ると、いろんなものが雑然としていて、個性豊かでカオスな場所があったりする。それを見て、働く場所はもっと自由でいいと思ったんです。いろんな人がいていろんな仕事をしていて、みんながリラックスした状態でいっしょに働ける空間にしたかった」

確かにPILEには、パソコンのモニターやプリンターなどもありますが、工具や絵の具、ミシンなど、ものをつくる道具もあります。オフィス然とした雰囲気ではなく、居心地の良いアトリエやスタジオのような場所にも感じられます。
PILEは単に仕事をするだけの場所ではなく、何かを生み出したい、形にしたいと思う人たちも集う場。

「私自身も昔、こんな場所がほしかった。だからこそ、流れる音楽や家具、レイアウトなど細部にまでこだわりました」
人と人がつながる場所へ

PILEが目指しているのは、人と人とが自然につながる場所。
「森のオフィスでもあったのですが、会員さん同士が出会って新しいプロジェクトやものが生まれる。そういう瞬間を見るのがすごく嬉しいし、好きですね」

これまでにクリスマスの時期には、横浜ビジネスパークのイルミネーションの一部を手がけるなど、天王町周辺地域や企業とのコラボレーションが着実に広がっています。
「PILEに来れば、おもしろい人や活動に出会える。そんな場所に育てていきたいですね」

イベントやワークショップも数多く行われており、街や地域に住む方々とクリエイターをつなぐ新しいハブになりつつあります。
「都市でも地方と同じように人が集い、つながり、何かが生まれる場を作れる。PILEからさまざまなものが生まれていくといいなと思っています」
横浜のアートシーンを盛り上げたい

PILEでは、若いクリエイターの支援にも力を入れています。その一環として行われているのが、新人アーティスト支援プログラム 「PUSH FOR CREATION」。
選ばれたアーティストには 3ヶ月間無料で制作場所が提供され、作品は11月開催の「保土ケ谷高架下ART LINE」で展示されます。応募〆切は2025年7月18日。

「最初の年に選出されたアーティストの子がロンドンのコンクールで入賞するなど、活躍の場を広げています。ここが次世代のアーティストたちのステップになる場になれたらうれしいですね」
人と人がつながり、新しいものが生まれる瞬間や成長していく過程を見るのが好きだと語る津田さん。そんな津田さんの今後の展望について聞いてみました。

「これまでのようにPILEを育てながら人と人をつなぎつつ、横浜のアートシーンを盛り上げていきたいですね。いつかアートレーベルを立ち上げられたらいいなと思っています」
次世代支援アートプログラム 「PUSH FOR CREATION 2025」
まとめ

この世の仕事の大半が、AIに淘汰されると言われている今日このごろ。つい効率や収益をあげることに目がいきがちですが、今回、代表・津田さんのお話をうかがって、人とのつながりや働く場所を大切にするPILEの姿勢に共感しました。

「人と人とがつながることで新しいものが生まれる。そんな瞬間を見ているのが好きだ」と語る代表・津田さんの目はとても澄んでいて、静かで美しい情熱に満ちていました。

PILEはクリエイター向けのコワーキングスペースですが、イベントや非会員の方でも入れるオープンデーなどを豊富に開催。どなたでも入りやすい雰囲気となっているので、近くに来られた際はぜひ、立ち寄ってみてください。
この場所でこれからどんな出会いや作品、プロジェクトが生まれていくのか。今後のPILEの動向に注目してくださいね。
取材場所: PILE – A collaborative studio –
住所:神奈川県横浜市保土ケ谷区神戸町134-9 星天qlayD-2
アクセス:相鉄線「天王町駅」から徒歩1分
営業時間:24時間
スタッフ常駐時間 月-金 10時~18時
土日 10時~17時
定休日:祝日
ホームページ:https://pile.yokohama/
Instagram アカウント:https://www.instagram.com/pile_yokohama/
※休館日やイベントは変更となる場合がありますので、最新の情報は公式ホームページ、SNS等をご確認ください。
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