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スポット  |    2025.09.12

“日本最大級のロックフィルダム”「胆沢ダム」から見る絶景に感動|岩手県奥州市

奥州市胆沢にある「胆沢ダム」は、2013年に完成した“日本最大級の中央コア型ロックフィルダム”です。
生活用水や農業用水を供給する利水、河川の氾濫を抑える治水などの面で地域の暮らしを支えています。

また、観光スポットとしても有名で、岩手県から秋田県へと抜ける国道397号線がそばに延びており、ドライブに訪れる観光客も少なくありません。

今回はそんな胆沢ダムの概要やおすすめポイントのほか、6年ぶりに顔をのぞかせた石淵ダムの堤体について紹介していきます。

胆沢ダムってすごいんです!

水を放流する「洪水吐き」とよばれる水路(撮影:松本鹿介)
水を放流する「洪水吐き」とよばれる水路

自由の女神よりも大きな胆沢ダム

胆沢ダムについて知るため、まずは基本データについて見ていきましょう。

<胆沢ダムの基本データ>

  • 堤体の高さ:127m
  • 堤体の最上部の長さ:723m
  • 堤体積:約1,350万㎥
  • 総貯水容量:1億4,300万㎥

ここで一番イメージしやすいのは、堤体(水をせきとめる部分)の高さだと思います。
たとえば、アメリカ・ニューヨークのランドマークとして有名な「自由の女神」は、台座部分も含めた高さが93m。一方の胆沢ダムは堤体の高さが127mもあるため、なんと自由の女神がすっぽりと収まる大きさとなっています。

また、総貯水容量の1億4,300万㎥がどれくらいかというと、25メートルプール572,000杯分とのこと。仮に毎日プールの水を入れ替えたとしても、余裕でまかなえてしまうんですね…!

お城の石垣のような胆沢ダムの堤体

側面から見た胆沢ダムの堤体(撮影:松本鹿介)
側面から見た胆沢ダムの堤体

胆沢ダムは「中央コア型ロックフィルダム」に分類されますが、筆者のようなダム初心者からすればどのようなものかわかりませんでした…。

そもそもロックフィルダムとは何かを調べてみると…

土、砂れき、ロック(岩石)を積み上げてつくるダムをフィルダムといい、そのうち岩石を占めるものをロックフィルダムといいます。水漏れを防ぐためにダムの内部または上流面に、水を通さない材料を使用しています。

<引用>関西電力株式会社HP「関西電力の水力発電の概要」より

なるほど、胆沢ダムでは岩石をメインに使用しているから、ロックフィルダムに該当するんですね!
側面の写真を見ると、堤体が石垣のように積まれていることがよくわかります。

また「中央コア型」とはどういうことかというと…

土質材料で造られ貯水池の水を止める役目を果たすコア(core:芯、遮水ゾーン)を、ダムの中央に配置したゾーン型のロックフィルダムをいいます。

通常、コア材の上下流側には、コア部を浸透してくる水を安全に排水するとともに、コア材が水によって流し出されるのを防ぐため、フィルターゾーン(半透水ゾーン)が配置され、更に、その外側に水圧や堤体の安定等を受け持つロックゾーン(透水ゾーン)が配置されるのが一般的です。

<引用>滋賀県HP「絵付きダム用語解説集(cダム型式d貯水池)」より

胆沢ダムでは堤体の「コア」が土でつくられ、それを砂利で囲み(フィルター)、さらに外側に岩石を積んでいるようです(ロック)。
そしてそのコアが中央に垂直に立っているので「中央コア型」に区分されます。

掘れば掘るほど面白そうなダムの構造ですが「もっと詳しく知りたい!」という方は、堤体のそばにある胆沢ダム管理所を訪れるとよいでしょう。
ダム近辺に生息する動植物の生態系や、ダムの歴史も含めて深く学べますよ!

“日本初のロックフィルダム”「石淵ダム」の堤体が6年ぶりに出現

石渕広場から見た奥州湖と堤体の裏側(撮影:松本鹿介)
岩渕広場から見た奥州湖と胆沢ダムの堤体の裏側

筆者が撮影に訪れた2025年の夏はダムの貯水率が過去最低の水準になっており、農業用水の断水が計画されていました。

農家さんにとっては一大事です。
しかしその反面、奥州湖(ダム湖)の水位が下がったことでこんな珍しい場面に遭遇できました。

石渕広場から見た石渕ダムの堤体(撮影:松本鹿介)
石渕広場から見た石淵ダムの堤体

こちらは胆沢ダムの前身である石淵(いしぶち)ダムの堤体です。
通常時は奥州湖の中に沈んでおり、主に水位が下がったときに出現しますが、前回現れたのは2019年で実に6年ぶりの出来事でした。

石淵ダムが完成したのは1953年。当時は日本初のロックフィルダムとして計画が進められましたが、建設にあたっては事業を直轄した内務省(のちに建設省に移転)と水没予定地の住民との間で補償に関する闘争があったそうです。

多くの犠牲を払い完成した石淵ダムですが、かつては田畑に引く水をめぐる争いも生まれていた土地柄にあって、このダムが残した功績は計り知れません。

現在、私たちが豊かに暮らせているのは、移転をした方々のおかげでもあることを忘れてはなりませんね。

胆沢ダムから見る絶景を堪能

さて、胆沢ダムの概要や前身の石淵ダムについて紹介したところで、ここからは筆者がオススメする見どころを紹介していきます。

胆沢ダム管理所の駐車場に車を停め、まず最初に向かうのは堤体最上部の遊歩道です。

堤体最上部の遊歩道(撮影:松本鹿介)
堤体最上部の遊歩道

さすが全長723mもあるだけあって、歩けども歩けども向こう側に着きません…。

朝晩は冷えるとはいえ、日中はまだまだ暑い岩手の夏。汗ばみながら堤体の真ん中に着き、撮影した風景がこちらです!

堤体最上部から見た胆沢扇状地

どうでしょうか、この絶景!
左右の山を抜けた向こうに平野が広がっているのがおわかりでしょうか。
こちらは日本でも代表的な扇状地の一つである「胆沢扇状地」です。

扇状地とは、狭い山間地を流れる急流河川が広い平坦地に出た時、その流れが弱まることにより、運ばれてきた土砂が扇状に堆積してできた土地のことです。

<引用>国土地理院「河川によって形成された扇状地」より

写真だと少しわかりづらいですが、Google Mapsの航空写真などで見ると一目瞭然。胆沢ダムを要として、扇状に広がった胆沢平野が見て取れます。

また、堤体の西側には奥州湖が。前述の通り2025年は湖の水位が低下しており、側面の岩肌も大幅に露出していました。
こちらは2024年撮影時の奥州湖と併せてご覧ください。

堤体最上部から見た奥州湖(撮影:松本鹿介)
堤体最上部から見た奥州湖(2025年8月撮影時)
堤体最上部から見た奥州湖(撮影:松本鹿介)
堤体最上部から見た奥州湖(2024年8月撮影時)

素人ながらに感じる胆沢ダムの良さは、山間部の大自然とそこにたたずむ人工物とのギャップ。ダム付近から見上げたその巨大さには、畏怖の念を抱きます。

そしてそれほどの建築物を人の手で設計し、建造したという事実にはロマンを感じずにはいられません。
ぜひあなたも実際に現地を訪れて、胆沢ダムの素晴らしさを体感してみてください!


胆沢ダム(奥州湖)

【住所】
岩手県奥州市胆沢若柳横岳前山6
※上記住所は「胆沢ダム管理所」のもの

【アクセス】
JR東北新幹線「水沢江刺駅」から車で40分
JR東北本線「水沢駅」から車で30分
東北自動車道「奥州スマートIC」から車で30分
東北自動車道「水沢IC」から車で30分

【駐車場】
あり(無料)

【問い合わせ先】
奥州市観光物産課

【電話番号】
0197-34-1759

【奥州市公式HP】
https://www.city.oshu.iwate.jp/index.html

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この記事を書いた人

松本 鹿介

自分が書けると思ったテーマなら、なんでも挑戦してみたい雑食ライター。書籍編集者からWEB制作会社のライターを経て、今は企業で求人原稿を執筆しながらフリーライターとしても活動中です!Mediallでは歴史やスポーツ、伝統芸能・伝統工芸などの好きなテーマを中心に情報を発信していきたいと思っています。

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