「廃線跡」と聞いてどんな場所をイメージしますか?
緑あふれる山奥、川に削られた崖の上、広い野原の中など、自然の中を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし静岡県浜松市の廃線跡は、なんと街の真ん中にあるんです!
今回は知る人ぞ知る廃線跡「奥山線跡の遊歩道」をご紹介します。
廃線から50年以上経った現在でも市民に利用され、すぐそばに幹線道路があるにも関わらず鳥のさえずりが響く静かな空間が広がっています。
駅からのアクセスも良く、気軽に廃線ウォークが楽しめるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
浜松の中心に残る廃線跡「奥山線跡の遊歩道」
「奥山線跡の遊歩道」は、浜松市中区鹿谷町からのびる歩行者・自転車用道路です。
中心部から北区奥山までの25.7kmを走っていた遠州鉄道・奥山線の廃線後に整備されました。
奥山線は1914(大正4)年の開業後、住民の足や貨物輸送として活躍した鉄道です。
煙突の形から「らっきょう軽便」と呼ばれ親しまれていましたが、近代化の波に乗れず、1964(昭和39)年、50年の歴史に幕を閉じました。
遊歩道として整備されている約3kmのうち、今回歩いたのはレンガ舗装された美しい700mの箇所です。
緑豊かな「奥山線跡の遊歩道」へ
浜松駅からバスで約10分。浜松城公園の北側を東西に走る一般道の最西端に「奥山線跡の遊歩道」があります。
朝からウォーキングや犬の散歩をする市民がひっきりなしに訪れていました。
彼らとともに地元民になったつもりで歩いてみましょう。
亀山トンネル跡
最初に見えるのは、国道をくぐるように作られた「亀山トンネル跡」です。
下がすぼまった独特の形で、レンガ造りや上部から垂れ下がっている植物からもレトロな雰囲気が漂っています。
トンネルに入ると、自転車がすれ違うのもやっとな幅に驚きます。
奥山線はレールの間隔が約76㎝しかない軽便鉄道。
輸送面では優れているとは言えませんが、維持費や建設費が安く、当時は多くの私鉄で利用されていました。
トンネルの狭さから電車幅に思いを馳せられるのは、廃線ウォークの醍醐味ですね。
トンネルの中からもわかる緑に期待が膨らみます。
全長78mのトンネルを抜けると、街なかだと忘れるほどの静けさに包まれていました。
聞こえてくるのは鳥のさえずり。
木漏れ日が降り注ぎ、思わず深呼吸をしたくなります。
広沢駅跡
さらに進むと北に大きくカーブする途中にあるのが「広沢駅跡」です。
現在はデザインレリーフが設置されているだけで、駅舎の痕跡は残っていませんでした。
広沢トンネル跡
さらに歩いていくと「広沢トンネル跡」が見えてきます。
亀山トンネルとは形が異なり、長さも10mほどと短め。
先に何があるんだろうというドキドキ感はないものの、アトラクションみたいで楽しめました。
広沢トンネル跡を抜けた北側には、モニュメントがあります。
天に向かう機関車が「銀河鉄道の夜」のようです。
遊歩道脇には多くの街路樹が植えられており、歩いていて気持ちのいい木陰が続きます。
9月中旬では葉が落ちた桜と青モミジでしたが、彩りが添えられた春や秋、新緑の初夏にも訪れたくなりました。
車輪の形をした車止め
車道と交わる場所には必ず車輪の形をした車止めがあります。
自転車に乗った高校生が通学路として使う姿もちらほら。
朝晩は多くの自転車が通るので、ゆっくり楽しみたい方は通学・帰宅時間帯を避けたほうがよいでしょう。
街なかで気軽に廃線跡ウォークを!
700mの「奥山線跡の遊歩道」は、ゆっくり歩いても15分もかからない道のりでした。
線路や駅舎の跡など、かつての面影は残っておらず、本格的な廃線ウォークとは少し異なるかもしれません。
しかし、浜松駅から近く、街の喧騒から離れて鳥のさえずりや木漏れ日を楽しめるのは大きな魅力です。
近くには浜松城や犀ヶ崖資料館などの観光スポットもあるので、歴史探訪もかねて街なかに残る廃線跡を気軽に歩いてみませんか?
奥山線跡の遊歩道
住所:【亀山トンネル跡】静岡県浜松市中央区鹿谷町3
駐車場:なし(近隣にコインパーキングあり)
アクセス:【車】浜松西I.C.より約25分
【バス】浜松駅北口バスターミナルから遠鉄バスに乗車。
「鹿谷町南」下車(大人150円)徒歩3分。
※遠鉄バスではPASMOやSuicaなどは使用できませんので、小銭のご用意をお願いします(車内で両替可能)。