春の風に誘われて、農家になりました。
こんにちは、Mediallライターのkonkaです。
今回は神奈川県相模原市にある津久井湖のほとりで野菜農家をしている「雨風ふぁ〜む」を取材しました。「雨風ふぁ〜む」は、日本の伝統的な農法に習い、自家製腐葉土で動物性肥料や化学肥料を全く使わずに野菜を育てています。毎週木曜日には、JR横浜線「淵野辺駅」から徒歩10分の「雨風ふぁ〜む野菜工房」で野菜の直売やお惣菜の販売を行っています。
この記事では、「雨風ふぁ〜む」の野菜づくりへのこだわりや無農薬野菜がおいしい理由、小さな農家として生きることの難しさと喜びについて、お伝えします。
雨や風が土に命を吹き込む。野菜が育つ。
「雨風ふぁ〜む」の野菜は、アクがなく、すっきりした味わいです。
それは土に植物性のものしか入れていないからだと、ご主人は言います。
「動物性の肥料は化学肥料が使われている可能性があります。化成肥料が土の中に発生させる硝酸態窒素は、過剰摂取すると人体に有害な影響を及ぼすことが懸念されています」
日本では農作物の硝酸態窒素含有量について規制はありません。しかし、ヨーロッパではレタスやほうれん草などの葉野菜や乳幼児用の食品に対して、明確に上限値が定められています。
安心・安全へのこだわり。
「自分が育てる野菜は家族や友人、近しい人など大事な人に食べてもらう野菜です。できる限り手を尽くして硝酸態窒素を減らす努力をしています」とご主人は言います。
「雨風ふぁ〜む」は、日本の伝統的な農法を採用し、農薬は使わず、腐葉土は手作りです。
「毎年、11月〜12月に落ち葉を集めます。そこに発酵を促進するために培養した納豆菌や乳酸菌、米ぬかなどを混ぜ合わせるんです。それから1年間、時々かき混ぜながらじっくりと寝かせて、自家製の腐葉土を作っています。日本の伝統的な農法は、まさしく持続的な農業です。山では木々が落ち葉を積もらせ、落ち葉は何年もかけて腐食し土に還ります。落ち葉が腐食した土は山で生きる養分になって、そうして命が循環していきます。日本の伝統的な農業はシンプルにこの循環を畑に取り入れたものなんです。本当にシンプルなのですが、いつまでも持続し続けて、自然の恵みを私たちに与えてくれます」
雨と風と植物のシンプルな野菜づくり。それは身体にやさしくて、おいしい。
安全でおいしい野菜をつくる。簡単じゃない。それでも、つくり続ける
無農薬・無化学肥料の野菜は安全でおいしい。
大人も子供も安心して食べられる野菜。
しかし、そんな安全でおいしい野菜をつくるのは簡単ではありません。
「無農薬の場合、虫や病気に対してほとんど為す術がないんです。収穫量も6割採れたらいいかな、という程度ですね。手間も時間もかかりますし、そもそも作付けできる量に限界があるので、収穫量はどうしても限られてしまいます」
そして、収穫量に限界があることは、農家という職業の収入の厳しさに直結すると言います。
「小さな農業で生活費を賄うのは大変なことです。実際、僕の周りの小さな農家もみな頭を悩ませています。いくら環境に配慮した持続的な農業をしていても、低所得によって生活を維持できなければ、それは持続的な農業とは言えません」
農業は日本の大切な文化です。昔から農業と人々の暮らしは密接に繋がっていたとご主人は語っています。
「伝統的な農業は、田畑で作物を育てるのと同時に、治水や環境保護の役割も果たしていました。だから、僕は大規模化した農業だけでなく、小さな農業が増えることも日本にとって必要だと思っています。近年、新規就農した農家の多くは、環境に配慮した昔ながらの無農薬・無化学農法で野菜をつくっています。それはクラフトビールのように、それぞれの農家によって農法もこだわりも違い、個性的で想いのこもった野菜です」
ご主人は小さな農家を続けていくためのヒントをいくつか教えてくれました。
「農的暮らしはライフパフォーマンスに優れています。収益性で見ると、一見効率が悪く見えてしまいますが、節約と言う点で考えると魅力が見えてきます。
半自給自足生活で、月々の食費が3万円減ったとします。複雑な説明は省きますが、資産運用で月々3万円の所得を得ようとすると、約1000万円の原資が必要になります。つまり、半自給自足の生活を続けることで、1000万円の資産運用と同等のパフォーマンスが得られるのです。
また、都会に比べると農地のある郊外は、住宅コストも低く、固定費を大きく抑えることができるのも良い点です。住居費の支払いのため、毎日追い立てられるような暮らしから開放されます」
その他にも、ご主人はこんな提案をしてくれました。
「農業だけでなく他の収入源を考えると良いかもしれません。例えば、副業や資産運用などです。農産物を加工したり、飲食店経営で農産物に付加価値をつければ、小さな農業に不足する所得の上昇が期待できます。また、無理のない程度に資産運用を生活に組み入れる事も一案です。少しずつでも時間や労力を伴わない収入源を作っていけば、安心して農業を続けることができると思います」
憧れだけでは、小さな農家として生きることはできない。
ご主人は農家を始めるなら、収入についてしっかりと考え、準備をすることが必要だと言います。
自然と共に暮らす。
多くの人にとって、そこに対する憧れは大きい。
でも、決して甘くない。
「でも…」とご主人は続けました。
「自然の多いところで植物の成長を見守りながら生きるのは、心にも身体にも良いことだと思います。また、農的な暮らしは、仲間が自然と見つかって、地域で助け合いながら生活することができます。それに、ものづくりは人間の営みとして、本当にやりがいがあることです。十数年間種芋をつなげてきたうちの里芋は、お客さんから『おいしい』とよく褒めていただきます」
心にも身体にも良いこと。
ご主人が使ったその言い回しが、とてもしっくりきて筆者は頭の中で繰り返していました。
小さな農家として生きること。
それは、心にも身体にも良いこと。
雨風ふぁ〜む野菜工房においしい野菜を買いに行こう
JR横浜線「淵野辺駅」から徒歩10分のところに「雨風ふぁ〜む野菜工房」はあります。
毎週木曜日10:00-18:00に営業。
「雨風ふぁ〜む」の無農薬野菜や手づくりお惣菜・お漬物に加えて、本場ドイツパンを味わえるパン屋「ハウミューレ」のドイツパンや、自家焙煎コーヒーを販売する「エモ珈琲」のコーヒー豆やその場で味わえるカフェメニューなどが販売されています。
店舗を持った理由について尋ねると、ご主人は「お店を楽しく運営してみたかったのです」と答えました。
どんな形態にも変えられるように「雨風ふぁ〜む野菜工房」には備え付けの備品や看板をつけなかったそうです。今後はバルやカフェ、カレー屋さんなどにも挑戦したいとご主人は語ります。
なにをやるにせよ、絶対食べに行きたいなぁと筆者は思いました。
なぜなら、「雨風ふぁ〜む野菜工房」の手づくりお惣菜は絶品だからです。
10代の頃から料理が好きで、ほぼ毎日料理をしているというご主人の腕は本物。
「野菜ってこんなにおいしいんだ…」と感動すること間違いなしです。
メニューは都度変わるので、気になる方は「雨風ふぁ〜む野菜工房」のインスタグラムで最新情報をチェックしてください。(「雨風ふぁ〜む野菜工房」のInstagramはコチラ)
【手作りお惣菜の献立】※2024年2月15日のものです
- 人参と油揚げのごはん
- 大根と生姜のポタージュスープ
- 小松菜と海老の春雨サラダ
- ヤーコンの五目きんぴら
- 白かぼちゃのそぼろ煮
- くーぶいりちー
- 菜の花のポテトサラダ
- 青ネギの卵焼き
- 金時豆
- 里芋と高野豆腐の煮物
どれもこれもおいしい。
あとがき
いかがでしたか?
今回は「雨風ふぁ〜む」のご主人にお話を伺いました。
そこから見えてきたのは、無農薬・無化学肥料野菜のおいしさと魅力、そして心にも身体にも良い日本の伝統的な農法と小さな農家の暮らしでした。
「雨風ふぁ〜む」の野菜や手づくり惣菜は本当にびっくりするほどおいしいので、絶対おすすめです。
身体にやさしくておいしい野菜を、皆さまもぜひ一度、味わってみてくださいね。
この記事が皆さまの参考になれば嬉しいです。
※本記事で使用した画像は全て「雨風ふぁ〜む」さまからご提供いただいたものです。
雨風ふぁ〜む野菜工房の情報
住所:神奈川県相模原市中央区鹿沼台2-4-6
営業日:毎週木曜日
営業時間:10:00-18:00
Instagram:https://www.instagram.com/amekazefarm/
HP:https://www.amekaze-farm.jp