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スポット  |    2024.10.12

歴史は大きな”世界”であるー四季折々の景色とともに作家の精神を感じる|東大阪市「司馬遼太郎記念館」

大阪府東大阪市。近鉄奈良線「八戸ノ里(やえのさと)駅」から南へ8分ほど歩くと、小さな森のような、緑に囲まれた建物が見えてきます。

ここ「司馬遼太郎記念館」は、作家・司馬遼太郎の業績を後世に伝えるために設立された記念館。司馬作品のファンを始め、国内外から多くの人が訪れます。

司馬遼太郎とは?

司馬遼太郎は1923(大正12)年、大阪市生まれ。大阪外国語学校蒙古語部(のち大阪外大、現大阪大学外国語学部)を卒業後、新聞記者として在職中に『梟の城』で第42回直木賞を受賞。

『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『菜の花の沖』など多数の著作があり、日本を代表する作家として知られています。

司馬遼太郎記念館が開館したのは、2001年11月。司馬遼太郎の自宅と隣接した土地に建てられました。

「『見る』というより 『感じる』『考える』記念館」というコンセプトで、作家・司馬遼太郎の精神を随所に感じられる展示が施されています。


雑木林のような庭を通って記念館へ

「こんにちは」。

門を入ると、ボランティアスタッフさんが笑顔で声をかけてくださいます。

正面は、司馬遼太郎の自宅の玄関。記念館へ行くには、庭の小径を左へ進みます。

途中、窓越しに自宅の書斎を見ることができます。

司馬遼太郎が生前、執筆に使っていた状態をそのまま保存しているとのこと。本棚にはたくさんの蔵書が並び、机には万年筆や眼鏡などが置かれています。

小径を進むと、記念館に到着。ゆるやかなカーブを描く、コンクリート打ちっぱなしの壁が印象的です。

この建物は、世界的な建築家・安藤忠雄氏が設計したもの。シンプルながらも近代的かつ芸術的な空間を体感しようと、建築関係者も多く訪れるのだとか。

館内は「実際に見て、感じてほしい」という理念にもとづき、写真撮影が禁止されています。一旦カメラを置いて、司馬遼太郎の作家精神を体感するべく足を踏み入れてみましょう。

記念館の見どころ

高さ11メートルの大書架

司馬遼太郎は生前、およそ6万冊もの蔵書を保有していました。新たな作品に取り掛かるとき、膨大な資料を収集したため「司馬遼太郎が作品を書くと、関係する書物が古書店街からごっそり消える」と言われたほど。

記念館では、その6万冊の蔵書の中から約2万冊をイメージ展示しています。

床から吹き抜けの天井まで、ビッシリと本で埋め尽くされている様は圧巻。司馬遼太郎の歴史に対するリスペクト、作品にかける想いを存分に感じられる空間です。

大作家を身近に感じられる愛用品の数々

展示室では、司馬遼太郎が愛用していた品々も展示されています。執筆の際に使用していたルーペ、色鉛筆、名刺、万年筆、眼鏡など。

風邪予防に使っていたというカラフルなバンダナが可愛らしく、偉大な作家に少し親近感が湧いてしまいました。

企画展

2024年7月23日(火)〜2025年4月20日(日)は企画展「司馬遼太郎『空海の風景』」が開催されています。

空海が訪れた場所を地図で示す大きなパネルや歴史資料に加え、司馬遼太郎の創作メモや自筆原稿の展示も。

創作メモには丸や線がたくさん書き込まれ、原稿には何度も推敲した後が……。いかにして伝えるか、何度も考えながら作品を生み出していたことが伺えます。

司馬遼太郎の人生観を垣間見られる展示や映像も

『二十一世紀に生きる君たちへ』をご存知でしょうか。

司馬遼太郎が、小学6年生の国語の教科書のために書き下ろした文章です。その全文が、大書架の横に掲示されています。

その中に、こんなフレーズがあります。

「歴史は大きな”世界”である」

司馬遼太郎が歴史をどのように捉えていたのかを垣間見られる、印象深い言葉です。

そんな彼が歴史と向き合う中で感じた「人間としてこうあるべき」というメッセージを、次世代を生きる若者へ向けて、やさしく力強い言葉で伝えてくれています。

読んでいて目頭が熱くなると同時に、背筋が伸びる思いがしました。

また、展示室の横にあるホールでは、司馬遼太郎に関する映像を上映。在りし日の映像が見られる貴重な場所となっています。

1Fには、司馬作品が読めるカフェスペースも。展示を見終わった後、珈琲を飲みながら一息ついてはいかがでしょうか。

司馬遼太郎が描いたイラスト入りのマグカップは、ミュージアムショップでお土産として購入できますよ。

手前が「ウサギ」、奥は「アイルランドの妖精」/写真提供:司馬遼太郎記念館

自然の息吹を感じられる庭

記念館を出ると、ふたたび庭を通って門へと向かいます。さまざまな種類の木が生き生きと枝を伸ばすこの庭は、司馬遼太郎の生前からこのような姿なのだそう。

きちんと整備された庭より雑木林のような雰囲気を好んだというのも、司馬遼太郎らしさを感じるエピソードですね。

春は新緑が美しく、夏は緑が生い茂り、秋には葉が色づく。四季の移ろいを感じられる庭です。

2月12日の命日は、司馬遼太郎が菜の花を好んだこと、『菜の花の沖』という著作があることにちなんで「菜の花忌」と呼ばれています。菜の花忌が近づくと、記念館のみならず周辺地域にも菜の花が飾り付けられ、可愛らしい黄色で彩られます。

故人を偲びながら一足早く春の訪れを感じられる、素敵な取り組みですね。

世界を見つめ直すきっかけをくれる記念館

司馬遼太郎の作家精神を存分に感じられる「司馬遼太郎記念館」。

司馬作品を読んだことがある人もそうでない人も、きっとなにかを受け取り、考えることができる空間です。

彼の遺した言葉が、これからを生きるわたしたちの背中を押してくれるに違いありません。

門の横には司馬遼太郎自筆の表札が
司馬遼太郎記念館

住所:大阪府東大阪市下小阪3丁目11番18号

開館時間:10:00~17:00(入館受付は16:30まで)

休館日:毎週月曜(祝日の場合は開館し翌日休館)、9/1~9/10、12/28~1/4

H P:https://www.shibazaidan.or.jp/

アクセス:近鉄奈良線「八戸ノ里駅」下車 徒歩約8分、近鉄奈良線「河内小阪駅」下車 徒歩約12分

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この記事を書いた人

もとお稜子

大阪生まれ・大阪育ち|整理収納アドバイザー1級・クリンネスト1級のお片づけ・お掃除ライター|2人の姉妹のママ|Mediallでは、大阪の魅力を伝える記事を心を込めて執筆中。情報だけでなく、この土地に生きる人たちの「想い」や「ストーリー」をお伝えします|本・映画・猫が大好き

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