高知県西部に位置する高岡郡梼原町は、町面積の91%を森林が占めており、日本三大カルストの1つである四国カルストを有する町です。
最大標高は1,455mで、『雲の上の町』がキャッチフレーズ。
また、坂本龍馬はじめ幕末の志士達がこの梼原町を通って脱藩をした「脱藩の地」としても有名で、町内には龍馬が訪れたと言われる場所があり、龍馬のパネルや案内看板が設置されています。
10月には龍馬脱藩マラソンが行われ、SNSなどでも話題になりましたね!
今回は、そんな梼原町の「雲の上の図書館」をご紹介します!
本好きの心をくすぐる!大迫力の階段本棚と壁面書架
図書館の入り口には靴を脱ぐスペースがあります。
地元の木材を惜しみなく活かした館内は、靴を脱いで床に座ったり寝そべったり、自由に過ごしてほしいという思いから。
靴を脱いで館内に入った瞬間に目に飛び込んでくるのは、「ゆすはら❝いろは❞ウォール」や「ゆすはらステージ」と呼ばれる階段と壁面書架!!
こういう書架、本好きは憧れますよね!!
そのまま階段に座って本を読み出してしまいそうです。
いろはウォールに並べられているのは、梼原町の風土や風習、風景などを扱った書籍から、坂本龍馬や空海、高知県出身で2023年4月から9月にかけて放送された連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった牧野富太郎博士に関するもの。
郷土から日本や世界、ひいては宇宙にも続く知の旅がこの図書館でできそうです。
壁面書架とボックスの本棚、うちにも欲しい!と思う本好きは多いでしょうね。
館内のあちこちにちょっとした特集コーナーが設けられ、10月半ばに亡くなられた中川李枝子さんの追悼で「ぐりとぐら」や「いやいやえん」が並べられていたり、ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンさんの著作を中心に韓国文学を特集したコーナーや本屋大賞のコーナー、入り口では季節をテーマにした本が置かれていたり、「手に取って読んでみたくなる工夫」が仕掛けられています。
自分らしく本と過ごせる空間 ~寝転がって読書も、カフェでまったりも~
色んな種類の椅子やソファが置いてあり、1階には何と掘座卓やビーズクッションも!
お気に入りの椅子を探すのも楽しいですし、お気に入りの席で本と過ごす時間は至福ですね。
また、館内は一部を除き飲食OKとなっており、カフェも併設されています。
珈琲が美味しく(利用者さん情報)、チーズケーキは毎朝手作りされているそうです。
もちろん、1人で集中して本を読みたい人の為の閲覧コーナーもありますので、そちらではお静かに。
キッズスペースも兼ねている「えほんコーナー」は広々としており、床暖房がついているので冬でも暖かく過ごせます。
すぐそばにベビールームや子育て相談室があるのも、子育て世帯には嬉しい気配りです。
本棚には、アンパンマンの絵本と共にぬいぐるみとシルクスクリーンの複製原画が並べられていました。
やなせたかしさんは高知県出身ですものね!やなせたかしさんと奥様をモデルとした連続テレビ小説「あんぱん」は2025年春に放送予定です。
図書館×ボルダリング!?心も体もリフレッシュ!
1階の総合カウンターのすぐ横にボルダリングコーナーがあります。
ボルダリングは、2021年の東京オリンピックよりスポーツクライミングの1種目としてオリンピック競技にも採用されている競技です。
読書もできて、全身を使い知力・気力・体力をフル稼動させる時間も取れる図書館、中々ないですね!
※利用申込と誓約書の提出が必要です。
※利用は小学生以上からで、未就学児は利用できません。
名前の由来に秘められた物語 ~なぜ「雲の上の町」なのか~
図書館の職員の方にお話を伺いました。
─そもそも何故、「雲の上」という名前なのでしょうか?
「『雲の上の町』にはいくつかのいわれがありまして、同じ高岡郡で隣接している津野町の布施ヶ坂側から梼原町に向かって来ると霧が出るのが雲の上にいるみたいという事と、四国カルストが雲の上に出ていることがあるから、という事らしいです」
梼原町は、町の南部と北部とで標高に大きな差があります。
標高の低い所から見ると、霧や靄も雲に見えますね!
「雲の上の町」、そのまま小説のタイトルとして図書館の本棚に収められていそうな素敵なネーミングです。
隈研吾が魅せられた梼原の建築美
─「雲の上の図書館」は建築家の隈研吾氏が設計をされていますが、隈氏は梼原町のご出身ではないですよね?
「『ゆすはら座(梼原公民館)』という大正時代に作られた木造の芝居小屋の移転と復元に関わった方の知り合いが隈氏で、木造建築に興味が湧きご自身も保存活動に携わるようになったそうです。
その時のご縁が梼原町と隈氏の間で続いており、隈氏は梼原町を『自分の原点』と語ってくれています」
梼原町内には隈研吾氏デザインによる建築物が5ヵ所あり、町歩きのおすすめスポットにもなっています。梼原町に住む「建築案内人」によるガイドで巡るツアーもあります(要予約)。
「してはいけない」から「できる」へ ~図書館が目指す3rdプレイス~
─「雲の上の図書館」では、飲食OKに驚きました。
「『雲の上の図書館』を家、学校、会社とは別の集まれる『3rdプレイス』として提供したいという思いがあります。
本を読まなくても過ごせる場所で、思い思いに放課後や退社後の時間を楽しく過ごしてほしいので『〇〇してはいけないから〇〇できるを増やしていきます』を掲げています」
「本を読まなくても過ごせる」の1つに、ボルダリングも含まれているのでしょうね。
─雲の上の図書館で人気の本は?
「人気は小説で、最近は『パンどろぼうシリーズ』も人気があります。
『雲の上の図書館』の書架は日本十進分類法を下地にした独自分類で、手に取ってもらいやすい分類を意識し心がけています。
蔵書は開架に5万冊、閉架1万5千冊ほどです」
確かに、館内にある特集コーナーは「ちょっと気になる!」を引き出すフックとなっていました。
図書館マスコット・くもっぴーと出会う本の世界
─雲の上の図書館内のあちこちにいるキャラクターが気になって仕方ないです。
「『雲の上の図書館』のマスコットキャラクター『くもっぴー』です。たかいよしかずさんという絵本作家でイラストレーターの方が手掛けたキャラクターです。
たかいさんは『怪談レストラン』の挿絵や、明治マーブルチョコのマーブルわんちゃん、兵庫県西宮市のキャラクターみやたんなども手がけていらっしゃいます。
梼原町は、西宮市と友好都市として提携しているご縁もあります。
くもっぴーは書架のあちこちにもいますが、雲の上の図書館のHPで二十四節気に合わせたおすすめの本の紹介もしています」
訪れる人の心をつかむ図書館 ~デザインを超えた居心地の良さ〜
一緒に行った子供達は「漫画や小説など色々な本があり、1番好きな図書館になった」、「階段の本棚がすごくて、広くて本がとても多くて楽しかった。ボルダリングは想像よりも難しかったけど面白かった」と話してくれました。
職員さん達のエプロンも注目ポイントでした。
他の図書館や書店でもエプロンを着けている所は多いですが、雲の上の図書館のエプロンはギャルソンエプロンなどと呼ばれる腰から下を汚れから守るタイプです。
3種類あるそうで、見せてくださったのは片方のポケットが透明になっていてもう片方には「雲の上の図書館」のロゴが入っています。
素敵なエプロンなので「くもっぴーのトートバッグの隣で販売しません?」と言ったら「職員と利用者の方が分からなくなってしまいそうですね」と言われてしまいました。
デザインに目が行きがちですが、利用者の居心地まで視野に入れた工夫が見事な図書館でした。
「行ってみたい」から「行って良かった・また行きたい」へ、お気に入りの図書館になる事間違いなしです!
ゆすはら 雲の上の図書館(梼原町立図書館)
〒785-0610
高知県高岡郡梼原町梼原1212-2
TEL:0889-65-1900
開館時間:9:00~20:00
休館日:毎週火曜日・資料整理日(毎月最終金曜日)・蔵書点検日(年度末5日間)
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