再開発が進んだエリアにぽつねんと佇む旧岐阜県庁舎
近年、再開発が目覚ましい岐阜市司町にはタイムスリップを錯覚させるような建物があります。
私はこの建物がずっと気になっていました。「なぜ古い建物を解体しないのか」と。
何か理由があるに違いないと考え、調べてみることにしました。
正面に回ると、2015年7月に開館した岐阜市立中央図書館(通称:メディアコスモス)と横並び。
時代の変遷すら感じられる年季の違いがありますね。
調べてみると、保管されるのも納得の歴史的な価値が盛りだくさんでした。
本記事では、建物の正体と歴史、保管されている理由を解説します。
同じ敷地内にある岐阜市役所についても、無料の展望スペースを紹介しているので、こちらも併せてご覧ください。
なお、現在は中に入れないため、実際の写真をお届けできない部分がございます。
代わりに、内部のバーチャルツアーができる公式サイトを参考文献として掲載しておりますので、ご容赦ください。
日本の建築史において最初期に登場した鉄筋コンクリート造りの県庁舎
建物の正体は旧岐阜県庁舎、かつての岐阜県の「顔」でした。
岐阜駅へのアクセスもさることながら、見晴らしの良さも兼ね備えた好立地には納得がいきますね。
これだけ好条件の土地、封鎖してしまって活用しないのは、もったいないように思います。
しかし、現状保管で停滞しているのには「解体できない理由」と「活用できない理由」がありました。
先ず、解体できない理由が二つあります。
暖炉がないのにマントルピース?岐阜出身の建築家・矢橋賢吉が手掛けた意匠
一つ目は、建築に携わったのが歴史的な偉人であること。
旧岐阜県庁舎を手掛けたのは岐阜出身の建築家・矢橋賢吉。
国会議事堂や首相官邸(現公邸)の建設にも関わった功績で建築史に名を残す人物です。
閉ざされたかつての庁舎の中には、彼の施した意匠が当時のまま残っています。
とりわけ異才を放つのが、重要な役割を持つ場所に設置されたマントルピース。
西洋映画に出てくるような暖炉を思い浮かべてください。
内装に合わせて暖炉の周りが装飾されている場合が多いですよね、それがマントルピースです。
本来はマントルピースの中に暖炉が収まってしかるべきですが、旧岐阜県庁舎には暖炉がありません。
純粋に意匠として、空間を彩るために設置されたと考えられています。
マントルピースは現存する建物内に六つあり、それぞれ石材やデザインに違いがあるため、魅せる表情も実にさまざまです。
大理石に眠る地球史上最大級の二枚貝「シカマイア」
二つ目は、建材の中に学術的な価値が高いものがあること。
古生代ペルム紀を生きたとされる巨大な二枚貝、シカマイア。
その化石が初めて発見されたのは、岐阜県の赤坂金生山でした。
地球史上最大級の二枚貝とされており、学術的にも高い価値があります。
玄関と中央階のホールにある大理石にシカマイアの化石が含まれており、内包する時の長さが優しくも厳かな雰囲気を演出します。
建設に携わった人物が歴史的な偉人であること、建材の中に学術的な価値が高いものがあること、これらが今日まで解体を見送らせました。
完成は1924年!?閉庁に至るまでの軌跡
活用できない理由は耐震性です。
旧岐阜県庁舎が完成したのは1924年、1966年までは岐阜県庁舎として、以後は岐阜総合庁舎として機能を果たしていました。
しかしながら、2013年に耐震性の問題から閉庁。
現存する建物を残して解体され、今に至ります。
年月を経ても色褪せないデザイン性の高さを有しているにもかかわらず、安全性を担保できないために活用できない、何とも歯がゆい状態です。
完成から100年を迎えた旧岐阜県庁舎の現在と未来
2024年10月で完成から100年を迎えた旧岐阜県庁舎ですが、保存や活用方法に関して、今後の計画は定まっていません。
研究者の界隈では、旧岐阜県庁舎の未来を議論する動きがあるようなので、今後どのような展開をみせるのか注視していきたいです。
マントルピースやシカマイアには興味があるので、再び一般公開された折には、私も一度足を運んでみるつもりです。
Mediallでの執筆を通して、また一つ地元に詳しくなりました。
岐阜県の観光は岐阜市で決まり!
周辺へのアクセス
岐阜バス「JR岐阜」乗車→「岐阜市役所・メディアコスモス」下車 所要時間:約9分