巨大なショッピング施設の近くにある、巨大な古墳と埴輪(はにわ)の公園…!
茨城県の水戸市の西部には、旧内原町が広がっています。ここには「内原イオン」と呼ばれるショッピング施設があります。とても大きい。市内のみならず、他の街からも多くの訪問客を集めています。特に休日ともなれば、家族連れ、一人客、あふれんばかりの人出で混雑する。ざわざわと賑やかな雰囲気!
…その内原イオンから少し北東に行ったところに、巨大な古墳と埴輪の公園があるのです。こちらはとても落ち着いた雰囲気。『くれふしの里古墳公園』です。この公園を紹介していきましょう。
いざ、古墳と埴輪の公園へ!
内原イオンの前の交差点から国道50号を北に渡り、しばらく進みますと、馬の埴輪がお出迎えをしてくれます。

馬が向いている方向へ進めば、台地の上に広い駐車場、公園の入口が見えてきます。そこに案内板が立っていました。その一部を抜粋して引用します。

『茨城県の水戸市牛伏町近辺の北部丘陵には多数の古墳が存在しており、県内でも有数の古墳密集地域です。「くれふしの里」の名称は、一般から公募されました。『常陸国風土記』那賀郡の条に見える晡時臥山(くれふしやま)の神婚説話に由来します。正式名称は「牛伏古墳群」です』
…つまり、古墳密集地帯につくられたのが、この「くれふしの里古墳公園」というわけなのです。その証拠に、案内板の向こうには、見るからに大きな前方後円墳の「4号墳」が見えていました。

古墳の周りには、ずらりと土器のレプリカが並べられています。綺麗に整備されている古墳です。階段があり、上に立つこともできますし、小高い丘の上の古墳の上から眺めれば、周辺の良い風景も存分に楽しめます。
しかし「古墳密集地帯」ですので、古墳はこの4号墳だけではありません。
前方後円墳6基、帆立貝形前方後円墳1基、円墳9基で構成されているそうです。こんなに狭い範囲に、たくさんの古墳が密集している場所は珍しいですよね。何があったのでしょう。誰がいたのでしょうか? 古代へのロマンをびんびん感じます。
その謎に迫るべく、林の中に伸びている道を進んでみます。

…あれ?木立の間から、大きな人影が見えるぞ?

…何と!とても巨大な埴輪のタワーが、見晴らしの良い広場に立っているではありませんか!

ここは本当に現代なのだろうか…。私は一瞬、古代へとタイプスリップしたような気分になりました。タワーの後ろには階段がついており、上に行けるようになっています。案内板を見てみましょう。

『この「はに丸タワー」は、杉崎地区のコロニー古墳群から出土した埴輪(はにわ)を基に作成しました。高さが17.3メートルあり、日本一の埴輪です。屋上は展望スペースになっており、園内の古墳や朝房山(あさぼうやま)、遠く筑波山などがよく見えます。「はに丸タワー」の中には、希望のはにわ、メロディーサウンド、サウンドパイプといった遊びがありますので、楽しんでいって下さい』
はに丸タワー。昔のテレビ番組で「はにゃ~」とよく言う、似たような名前のキャラクターがいたような気がしますが、そのあたりはあまり気にし過ぎないようにしましょう。楽しんでいって下さい、と書かれていては、上に行かないわけにはいかないですよね。ただし、利用時間が過ぎると入口の扉に鍵をかけられてしまうようですので、利用時間ぎりぎりには入らないほうが良さそうです。
「はに丸タワー」を楽しむ
何しろ17.3メートルの高さのタワーです。
階段は思ったよりも長く、まるでどこまでも続いていくかのような錯覚に囚われます。まるで古代へと続いていくような…。そんなロマンに浸っている私の前に、ようやく屋上、展望台が見えてきました。さあ、どんな風景が待っているのでしょう?

展望台の手すりの前に立つと、爽やかな風が吹き抜けていきました。
…南の方角に目を向けると、林の向こうに内原の町並みが見えます。見下ろすと、公園内のベンチの屋根が見える。地上にいた時には気付きませんでしたが、ベンチの屋根は「前方後円墳」の形をしていました。

転じて西の方角を見ると、午後遅めだったこともあり、西日が目に眩しかったです。伸びやかな林の向こうに、山々が連なっています。水戸市の西には、笠間焼で有名な笠間市があります。「八溝山地」と呼ばれる山地が茨城県と栃木県の境を南北に縦断している。その美しい景色の一部を垣間見ることができました。

いつまでも眺めていたい素晴らしい風景でした。しかし、あまりに長居をして、入口に鍵をかけられてはたまりません。そろそろ降りるとしましょう。振り向いた私の目に入ったのは…。
サウンドパイプでした。

そう言えば、タワーの途中の踊り場に「希望のはにわ」が置いてあり、その横に穴が開いていました。おそらく、展望台とタワーの途中の踊り場で声のやり取りができるのでしょう。遊び心満載。埴輪は、古代の戦士たちをかたどっているとも言われます。さすがは歴戦の勇士! 報・連・相の仕組みもしっかりと構築されている…。
はに丸タワーを降りて、私は公園の出口へと向かいました。途中で振り向いてみると、そこには、まるで階段を背負ったように見えるタワーが、夕陽を浴びて立っていました。凛々しくも、どこか哀愁を漂わせて、ずっと「在る」。

…この古墳群は、正式な発掘調査がすべての古墳で行われたわけではなく、正確な構築時期や順序がはっきりしていないそうです。おそらく、6世紀末頃までの約200年にわたって墓地が営まれていたのではないか、とのこと。
連綿と続く時の流れの中で
謎に満ちあふれた古墳群。見る人を驚かせる「はに丸タワー」。落ち着いた雰囲気の木立と公園。これらが、常に賑わっている内原イオンのすぐ近くに存在している。
私は鮮やかなコントラストを感じました。栄枯盛衰。繁華と静寂。この地にて隆盛を極めて権力を振るった豪族たちも、今では静かに眠っている…。
未来ある子どもたちがこのタワーを見れば、きっと目を輝かせて駆け寄っていくと思います。いえ、この私も無意識に駆け寄ってしまいましたので、まだまだ未来のある大人こそが訪れるべき場所かもしれません。
内原イオンでの現代的なショッピングの後は、この公園で、連綿と続く時の流れを感じながらのピクニックや散策はいかがでしょうか?
くれふしの里古墳公園
アクセス
◆公共交通機関:最寄り駅はJR常磐線「内原駅」です。駅から北東へ約2キロの位置にあります。駅のすぐ近くにある「内原イオン」前の交差点から、北に国道50号を横断して、城里町方面へ県道52号をしばらく進むと左手に見えてきます。
◆自動車:最寄りの高速道路のインターは「水戸インター」です。インターを降りて国道50号を西の笠間市方面へ向かい、「内原イオン」前の交差点を右折して北に向かいます。坂を上がったところの公園の入口には、無料の駐車場が25台分あります。