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スポット  |    2025.06.20

地元愛あふれる展示が魅力!碧南海浜水族館が伝える地域と自然のつながりとは【前編】|愛知県碧南市

設立から40年以上の歴史がある愛知県碧南市の「碧南海浜水族館」。地域の人々に親しまれ、学びと癒やしの場を提供しています。屋外には四季を感じられるビオトープもあり、生き物と自然の魅力を楽しめる水族館です。

そんな碧南海浜水族館の知られざる魅力やこだわりについて、学芸員の川下さんにお話をうかがいました。記事は前編と後編に分かれています。今回のテーマは、碧南海浜水族館が大切にしている「展示のコンセプト」です。

展示のコンセプトは「地元の海と川」

碧南海浜水族館のコンセプトは、地元の海や川の豊かさを再現した展示。三河湾や矢作川など、水に囲まれた環境で発展してきた碧南市の「地域性」を感じられます。

(川下さん)
「とくに注目してほしい展示は、地元の海を表現した大水槽です。三河湾や伊勢湾に生息する生き物を中心に展示しています。釣りや食卓でおなじみのマダイ、さらにはアカエイやホシエイなどが悠然と泳ぎまわる姿を見ていただきたいです」

幅15メートル、水量200トンを誇る大水槽では、マダイをはじめとする大型の魚類が悠々と泳ぐ光景も見られます。なかでも、大きなエイが羽ばたくように泳ぐ姿は圧巻です。

また、大水槽の魅力は、大きな魚たちが泳ぎまわる姿だけではありません。水槽レイアウトには入り組んだ擬岩が施されており、隅々まで目を凝らすと小型の魚たちも見つけられます。

(川下さん)
「岩陰から顔をのぞかせるウツボやクエがいたり、底のほうに潜むメバルのような根魚がいたり。大小さまざまな300種類ぐらいの魚を展示しているのも大水槽の見どころです」

毎日14時30分から実施している大水槽の「エサやり解説」も人気です。スタッフの解説を聞きながら、魚たちがエサに向かって一斉に集まる様子を楽しめます。

ストローのような筒を使ったユニークな給餌方法も見どころです。底のほうにいる生き物にもエサが行き渡るような工夫が施されていました。

希少淡水魚の保護・繁殖活動

淡水の展示エリアには、地元の河川に生息する生き物が展示されています。「上流・中流・下流」と川の流域ごとに異なる生物層を再現しており、より詳しく自然環境を学べる展示エリアです。

碧南海浜水族館は、地元に生息するカワバタモロコやウシモツゴといった希少淡水魚の繁殖活動に取り組んでいます。繁殖させた個体の生態展示はもちろん、取り組み自体の大切さを伝える工夫も展示に込められています。

さまざまな生き物が展示される水族館で、淡水魚は「あまり目立たない魚」の印象があるかもしれません。しかし、絶滅危惧種に指定されている在来種も多く、水族館の水槽で泳いでいる姿が見られるのは当たり前の光景ではありません。

絶滅危惧種の淡水魚を展示する背景には、生き物が置かれている状況や生息地の自然環境を伝えようと取り組む水族館の努力があります。保護活動にかかわる人たちの想いを知ると「ただ泳いでいるだけ」だった魚の魅力や価値に気づくはずです。

学芸員の川下さんに注目してほしい生き物を聞いてみたところ「ネコギギ」という魚を紹介してくれました。ネコギギは、ネコのようなヒゲと「ギーギー」と鳴くユニークな特徴をもつ魚です。

(川下さん)
「ネコギギは矢作川を含む三河湾・伊勢湾に流入する河川にしか生息しない魚です。東海地方の固有種ですので、当館でぜひご覧いただきたいです」

子どもが楽しく学べる展示やイベントも充実

土日祝日には、水族館の裏側を探検できる「バックヤードツアー」(当日受付)も開催しています。予備水槽で飼育されている生き物や貴重な標本類など、普段は見られない展示を楽しめるイベントです。

また、飼育員がバックヤードで「どのように仕事しているのか」についても、楽しい解説とともに教えてもらえます。小学校低学年や未就学児の子どもなど、親子で一緒に参加するお客さんも多いそうです。

(川下さん)
「タカアシガニの甲羅やサメの歯の標本など、水槽のアクリル越しでは伝わらない生き物の質感を体感できるのもバックヤードツアーの魅力です。甲羅の凸凹や歯のギザギザした質感にふれると、子どもたちもとても喜んでくれます」

また、水族館の2階フロアには、森から海へと流れていく「水」がコンセプトの展示エリアもあります。クイズラリーや釣りゲームなど、子どもたちが遊びながら自然や環境について学べる展示も豊富です。

(川下さん)
「子どもたちにはクイズラリーが人気です。数問のクイズに正解するともらえる認定証カードにすごく喜んでくれます」

碧南市が発展してきた歴史や水にかかわる自然環境についての解説展示も充実しており、大人も深く学びを得られます。図鑑や絵本が読める図書コーナーもあるので、親子で定期的に足を運んでみるのもおすすめです。(令和7年度末リニューアル予定)

(川下さん)
「解説パネルには碧南市の発展の歴史や自然環境、水と人間の関わりについて詳細に書いております。地域や自然に関心があるお客様にも見応えのある内容です」

地域とともに歩む存在であるために

碧南海浜水族館は、地域との関わりを大切にしています。市内に7つある小学校の校外学習を受け入れたり、ときには飼育員が出張授業に出向くこともあるそうです。

水族館の周囲には公園やグラウンドも整備されており、憩いと学びの臨海エリアとして地域の人々に親しまれています。

(川下さん)
「ビオトープの観察会や館外での自然観察会(応募制)など、子どもから大人まで生き物を楽しみながら学べるような取り組みも実施しています。設立から40年以上が経ったいまでも、常に新鮮な気持ちで楽しめる・学べる水族館でありたいと思っています」

1階の水族館フロアには、子どもが遊べるキッズコーナーもあります。取材で訪問したときには、未就学児の小さな子どもが遊んでいました。

個人的な経験談ですが、小さな子どもは水族館の「少し暗い雰囲気」を怖がってしまうこともあります。水槽展示エリアに入ってすぐのところにキッズコーナーや授乳室があるので、親子連れのお客さんに配慮した工夫も碧南海浜水族館の良いところだと思いました。

(川下さん)
「決して大きな水族館ではありませんし、観光地でもありません。しかし、地域の方々にとって碧南海浜水族館が憩いの場であり、学びを得る場であってほしいと思っています」

今回は取材でお伺いした内容をもとに、碧南海浜水族館が大切にしているコンセプトについて解説しました。後編の記事では、碧南海浜水族館の展示について「注目したいポイント」をさらに深堀りしていきます。

後編はこちら

日本でここだけの生き物も!碧南海浜水族館で注目したい展示を解説【後編】|愛知県碧南市

施設情報

碧南海浜水族館
住所:愛知県碧南市浜町2番地3
電話番号:0566-48-3761
営業時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、12月29日~1月1日

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この記事を書いた人

taku

愛知県出身。執筆業務をとおして「人や社会の役に立つ」をモットーに、フリーランスのライターとして活動しています。水の中の世界が好きで、生き物や水族館の魅力を発信するブログも運営中です。地元の魅力を届ける橋渡し役として貢献したいと思い、Mediallで情報発信しています。

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