地方創生メディア  Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地方創生メディア

スポット  |    2025.06.27

世界に類を見ない縞の奇跡『年縞博物館』で7万年の軌跡を辿る

そこには、驚くべき縞がありました。
ここは延々とシマシマが続く博物館です。

ただし、ただのシマシマではありません。世界に類を見ない、奇跡のシマシマです。今回は、福井県若狭町にある『福井県年縞博物館』を紹介します。

奇跡の湖底堆積物「年縞」とは?

7万年前からの堆積物が残る水月湖(画像出典:年縞博物館公式サイト

福井県嶺南地方には『三方五湖』という、5つの連なった湖があります。その中の一つ『水月湖』にのみ奇跡的に存在しているのが、7万年前から現在まで積み重なった湖底堆積物です。この湖底堆積物のことを「年縞」と呼びます。

水月湖はほかの4つの湖とは異なり、「直接流れ込む河川がない」「湖底に生物が生息していない」「時間が経過しても埋まらない」という3つの奇跡が重なりました。その結果、湖底には世界一の美しい縞模様が出来上がったのです。

湖底に堆積するのは、プランクトンの死骸や繁殖した珪藻、花粉、落ち葉など。1年で平均0.7mmの厚さになります。7万年分の堆積物は、深さにすると45mです。

7万年分の年縞が発見されたのは世界初。水月湖の年縞は、ほかに類を見ない貴重な縞でした。年縞を調べると、その時代の植物や気候、森の様子、出土品の年代などがわかります。

今から7万年前、地球は最終氷期(ヴェルム氷期)を迎えていました。7万年前の世界はどのような状況だったのでしょうか。太古の昔に思いを馳せながら、展示物を観覧してみてください。

水月湖の年縞は世界の「標準時計」

研究プロジェクトについて記載された年縞博物館の展示物

水月湖における年縞の掘り出し作業は1990年代に開始され、数回実施されました。掘り出しと分析に携わったのは、日本だけでなくオランダやイギリス、ドイツなどさまざまな国の研究者です。

これまで、化石や遺物の年代を調べるためにヨーロッパでは木の年輪を「標準時計」として用いていました。化石や遺物に含まれる放射性炭素の量を測定し、年輪と比較することで、約1万4700年前までの年代を特定できます。

世界のシマシマが展示されている

しかし、1万4700年より前は氷河期のため、年代を測れる樹木が存在しませんでした。この「標準時計」を一気に延長したのが、水月湖の年縞です。水月湖の年縞が発見されたことにより、7万年前までの化石や遺物の年代が正確に測定できるようになりました。

世界中の研究者たちの興奮が、手に取るようにわかります。

7万年の歴史を振り返る

展示されていた「ナウマンゾウ臼歯」(複製)

7万年前までの化石や遺物の年代が正確に測定できるようになり、今まで正確にわからなかった太古の出来事がわかるようになりました。

たとえば、ナウマンゾウはおよそ30万年前から2万年前頃に生息していたと言われています。しかし、その年代は推定であり、正確な年代まではわかりませんでした。水月湖の年縞が発見されたことにより、出土した化石から正確な年代が測定できるようになったのです。

実物の年縞の裏側には年縞と各年代の出来事が展示されている

実物の年縞を7万年前から現代に進み裏側に回ると、そこには7万年前から現在までの各年代の出来事が記されていました。

展示物には人類の歴史だけでなく、世界の出来事や当時の気候などが記されています。

気候変動の原因は何?大昔から起こっていたって本当?

気候変動についての展示コーナー

年縞博物館では、近年注目されている気候変動についても学習できます。

昨今は気候変動による異常気象や地球温暖化などが大きな社会問題です。気候変動の原因は、主に人間が生活のなかで排出する温室効果ガスといわれています。しかし、気候変動は太古の昔から繰り返されているため、人間だけが原因ではありません。

かつて海洋性植物プランクトンが多い時代には、光合成によって二酸化炭素が激減したこともありました。氷河期の到来です。このように気候変動は植物の存在も大きくかかわっています。

年縞博物館はシマシマを見るだけでなく、今話題の気候変動についても知見を深められる施設です。

疲れたら『cafe縞』でのんびり

『cafe縞』の窓際席では美しい景色が楽しめる

年縞博物館内には『cafe縞』があります。博物館で歩き疲れたときの休憩や軽食に最適です。

窓際の席に座ると、三方五湖と梅丈岳の美しい景色が目に飛び込んできました。オープンテラスになっており、天気の良い日には外で景色を眺めながらコーヒーを飲むのもおすすめです。

カフェは年縞博物館の外からもアクセス可能なため、博物館のチケットを持っていない人も利用できます。

cafe縞の詳細は以下のとおりです。

  • Instagram:cafe縞
  • 営業時間:11:00~16:00(時短営業中)
  • 定休日:火曜・水曜
  • アクセス:福井県若狭町鳥浜122-12-1 縄文ロマンパーク(福井県年縞博物館内)

福井県年縞博物館の詳細情報

福井県年縞博物館の外観

福井県年縞博物館の詳細情報は以下のとおりです。

  • 住所:福井県三方上中郡若狭町鳥浜122-12-1
    縄文ロマンパーク内
  • 休館日:毎週火曜、年末年始(12/29~1/2)
  • 電話:0770-45-0456
  • 公式サイト:福井県年縞博物館
常設展の入場料
常設展観覧券(cafe縞にて)

常設展の入場料は以下のとおりです。

  • 一般:500円(若狭三方縄文博物館との共通観覧券700円)
  • 小中高生:200円(若狭三方縄文博物館との共通観覧券280円)
  • 団体(20名以上)は2割引き
  • 70歳以上無料

隣接する『若狭三方縄文博物館』との共通観覧券がおすすめです。

アクセス

福井県年縞博物館は縄文ロマンパーク内にあります。

  • 舞鶴若狭自動車道「三方五湖スマートIC」から車で約5分
  • 「JR小浜線 三方駅」よりタクシーで約5分
  • 「JR小浜線 三方駅」よりレンタサイクルで約10分

記事をシェアする

この記事を書いた人

のがわ

滋賀県担当のアラフィフライター「のがわ」です。地元の滋賀県や隣県の福井県に関する情報をお届けします。趣味の剣道は練士七段ですが、試合は中学生にも負けるレベルです。色々な地域に出稽古に行き、出会った方々の物語や観光情報などを記事にします。

関連記事