地域創生メディア  Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地域創生メディア

人  |    2026.03.17

人口約3000人の町に移住した映画プロデューサーが描く「家族と地域の未来」【前編】

町なかから車で約40分、人口約3000人ほどの豊田市小原地区。山あいに広がるこの地域には、四季折々の自然とのどかな里山の風景が今も色濃く残っています。

四季桜が咲く季節には訪れる人も多い一方で、日常はとても静か。近所同士の距離が近い、昔ながらのつながりが息づく場所です。

そんな自然豊かな環境へ移住し、創作活動を続けているのが映画プロデューサーの西村信彦さん。

かつては市街地で忙しい日々を送り、外食中心の生活をしていた西村さんですが、今では自ら野菜を育て、近所の方と交流しながら、ゆったりとした時間を重ねています。

自然とともにある生活、近所との関わり、畑で過ごす時間。小原との出会いは、西村さんの暮らしに変化をもたらすと同時に、地産地消ドラマ『おはよう、家族』との関わりを持つきっかけになりました。

里山での暮らしの素晴らしさを作品を通して伝え続ける西村さんに、移住生活とドラマ制作の背景についてお話を伺いました。

移住のきっかけと現在の暮らし

映画プロデューサー西村信彦さん
自身で会社を立ち上げ、豊田市の隣・岡崎市を拠点に制作活動をしていた西村さん。小原への移住を考えたのは、映画撮影がきっかけでした。

「10年ほど前に、映画が撮りたくなったんです。できれば地元である安城市や岡崎市、豊田市で撮影したかった。

三河地方は、山もあれば川もあるし、少し足をのばせば海もある。東京や大阪からのアクセスもいい。

そんな思いから各地をまわっていた時に、小原を訪れたんです。とにかく、皆さんのウェルカムな気持ちがすごかった(笑)」

当時を思い出し、表情を緩める西村さん。「ここにはどうやって行けばいい?」と尋ねると、その場所まで案内してくれたと語ります。

「水もおいしいし、空気もいいし、孫が来た時に遊ばせてあげることもできる。『小原に移住しよう』と決め、空き家バンクで家を探し始めました。

でも、職業や年齢の面でなかなかうまくいかなかったんです。今の家を見つけた時も『今回もダメだろうな』と思いながら見学に来ました」

期待半分、あきらめ半分で小原へやってきた西村さんは、やがてキーパーソンと言える人物に出会います。

「たまたま入ったお好み焼き屋さんで、同じような仕事をしながら小原に移住してきた方に出会ったんです。その場に地元の人たちも結構いて」

地元の方々が集うお好み焼き屋さん「いしばしカフェ」壁のメニューは常連さんの手作り

「色々な話をして、色々な方につないでくれました。皆さんの協力で、小原に移住できるようになったんです」

10年間の想いをようやくかなえた西村さんは、1年ほど前に小原に移住。飲食店もほとんどなく、暮らしの利便性が限られる小原へ移住することに、不安や迷いはなかったのでしょうか。

「不安や迷いより、早く住みたい気持ちが強かったです。10年間片思いをしていたので(笑)。『雪がすごいよ』『食材買いに行くの大変だよ』って言われても『いや、どうにかなるでしょ』と答えてました」

そんな西村さんですが、実際に暮らし始めてから、思い描いていた生活との違いを多く感じたそう。

「いい意味でギャップがありすぎました。

まず、買い物に行けない。『そろそろ買い物行かなきゃな』と思いながら帰ると、玄関の前に野菜がドドンと置いてあるんです。

春なんてタケノコが積んであって『ぬか探しに行かなきゃ』と思ったら、ぬかも一緒に入ってる(笑)。そういう意味で、買い物に行けないんです。

そのおかげで、食に対する意識も変わりました。田舎は作ったものをくれることが多いし、自分でも作るようになる。食べることの大切さ、育てることの大切さは、とても勉強になっています。

うちの孫、しいたけ嫌いだったんですけど、原木からしいたけを採る体験をして大好きになったんですよ。食育にもつながると思います」

干し柿も帰ってきたら軒先にかかっていたそう!

取材当日には、たまたまお会いした隣の方から手作りの切り干し大根をいただく機会も。日常の中で自然と食べ物が行き交うやりとりは、田舎ならではの光景なのかもしれません。

一方でこんな意外な変化も。

「仕事ができなくなりました。時間を気にしていないと、あっという間に1日が過ぎてしまうんです。コーヒー飲みながら景色を見ていたら、平気で2時間は過ぎてる(笑)。『小原時間』と言うそうです」

沖縄時間ならぬ小原時間。小原に移住してからは、イライラすることも少なくなったと語ります。

「時間もゆっくりだし、部屋のスペースも広いので心にゆとりができてくる。その点では、仕事にいい意味で影響を与えています。

町にいた時はお金を出すのが当たり前だったことが、『ここをこうしたら使えるんじゃないか』と自分の中で考えられるようになりました。心の余裕があるから、一歩引いてみることができる。身近でできることを考えられる」

体にも心にも、仕事にもよい影響を与えてくれた小原での暮らし。この地に来たことで「人の優しさ」を改めて実感したとふっと笑みをこぼします。

「僕、草刈り機が使えなかったんです。田舎で草刈り機が使えないって致命的じゃないですか。

『草刈り機使えないんですよ』って言ったら、教えるんじゃなくて草を刈ってくれた。できることならやってあげるって言うのが、田舎の人の考え方なんだと思います。

触れ合うことの大切さと安心感を小原の人たちは教えてくれました」

そう言って笑う西村さんも、気持ちをほっとやわらげる、お日さまのような温もりを感じさせてくれました。

山での日常は、やがて「物語」へ

山での暮らし、人とのつながり、そして「小原時間」。小原での生活は形を変え、やがてひとつの作品へとつながっていきます。

西村さんが制作プロデューサーとして関わった連続ドラマ『おはよう、家族』。そこには、小原での暮らしの中で生まれた想いや出会いが、確かに息づいていました。

小原での経験が、どのように作品へとつながっていったのか。後半では、その背景と作品が形になるまでを伺います。

後編はこちら

人口約3000人の町に移住した映画プロデューサーが描く「家族と地域の未来」【後編】

記事をシェアする

この記事を書いた人

Risa Suzuki

豊田市生まれ豊田市育ち、フリーライターのrisa suzukiです。 その人・お店だけが持つ魅力を引き出しながら、「会ってみたい!」「行ってみたい!」と思えるような記事をお届けします。 Mediallでは豊田市近郊のナンバーワン・オンリーワンスポットをご紹介。 地元民だからこそ知るステキな人・お店の情報を発信していきます。 イベント取材、インタビューなども柔軟に対応するので、お気軽にご相談ください。

関連記事