年に一度、2月26日だけ授与される特別な飴「かっちん玉」。
この飴を食べて安産を願う、名古屋でも珍しい祭りが矢田六所神社で行われています。
一日限りの祭りに込められた願いとは――。

かっちん玉祭りの由来
バンテリンドーム ナゴヤの西にある矢田六所神社(以下「六所神社」)。御祭神は、イザナギノミコトとイザナミノミコトです。かっちん玉祭りは、毎年2月26日に行われる例大祭で、安産や子どもの健やかな成長、厄除けを祈願します。
由来について、禰宜の吉見亮さんにお話を伺いました。

かっちん玉とは
祭りの主役、かっちん玉は、竹の先に、白・赤・青・黄の飴を丸く練り固めたものです。
では、かっちん玉はいつ生まれたのでしょうか。
神社によると、次のように伝わっています。
「かっちん玉」が売られるようになったのは、明治の初め頃で、その昔六所神社の森は鬱蒼とした木が繁り昼なお暗く、蛇や蝮(まむし)、藪蚊(やぶか)が出たので人の出入りするも恐れをなしたと云い、村人達は用心のため、竹の棒の先に松明や藁束を燃やして森に入った。この松明を形どったものが「かっちん玉」と云われている。
又一説に、同社の森の中で旅の婦人が立派な赤子を出産し水に浸かったと云い伝え、へその緒を形どったものを「かっちん玉」とも云っている。
昔から同社の氏子には難産の婦人は一人も無く、明治30年頃名古屋市内に赤痢が流行したときも、矢田村だけは一人の患者もいなかったと云い、氏子達は「此れも偏(ひとえ)に六所大明神の御守護のお陰」と話していた。この御霊験御利益が広まり、子供の安産、生育、厄除け等を願って一日中御祈祷やお鈴の祓いを受ける人が多く、年々参拝者が数を増し、かっちん玉を買い求める人達で賑わいをみせている。

「かっちん玉」という名前は、子どもたちが飴をぶつけあう「カッチン」という音の響きに由来するといいます。
かっちん玉は、妊婦さんが食べて体内に取り入れることで願う、珍しい”食べる安産祈願”です。当日は、ご祈祷したかっちん玉が用意されました。安産だけでなく、生育や厄除けの意味も込められているため、子どもから大人まで、どなたでもいただけます。
なぜ2月26日に「かっちん玉祭り」を?
その昔、神域の森から、赤子の泣き声が聞こえたといいます。
村人が近づくと、そこには旅の途中の貴人夫婦が、生まれたばかりの子を抱いていました。
初めての産湯には、森のはずれの湧水が使われたと伝わっています。
そして、夫婦がこの地を立ち去った日が、2月26日でした。
この言い伝えにちなみ、かっちん玉祭りは毎年2月26日に行われています。
かっちん玉祭り当日の六所神社に参拝

屋台が連なりにぎわう境内
祭り当日の六所神社は、曇り空ながらどこか華やいだ空気に包まれていました。午前9時の開始とともに参拝客が次々と訪れ、参道から周辺の道までずらりと屋台が並びます。
例年、平日は約90、土日にあたる年は約110もの屋台が出店するそうです。

石造りの鳥居をくぐると、屋台から香ばしい匂いが漂い、祭りの高揚感が広がります。

境内は木々に囲まれ、大通りから奥まった場所にあるため、にぎわいの中にも落ち着いた空気が流れています。本殿では斎行が行われていました。

社の中では、御神輿が出番を待っているようです。

授与所では、かっちん玉をはじめ、力餅や安産煎餅の縁起物を求める人が絶えません。

期間限定の御朱印も人気
六所神社では近年、月替わりなどの御朱印にも力を入れており、かっちん玉祭り前後の期間限定御朱印も人気を集めていました。

安産の象徴・木彫りの犬「ロク・シャン」
境内では木彫りの犬「ロク・シャン」が、”お散歩中”。参拝客が一緒に写真を撮れるスポットとなっていました。

同じ矢田地区にある白山神社で社務所改築のため伐採された楠を製材。その木を使って六所神社近くの旭丘高校美術科の生徒たちが、木彫りの犬の制作を進めています。
祭りが終わるといったん高校へ戻り、同じく制作中の子犬たちを連れて再び境内にやってくる予定だそうです。
古くから犬は安産の象徴とされ、「戌の日」に安産祈願を行う習わしもあります。ロク・シャンが完成したら、六所神社の新たな祈りのスポットとして親しまれそうです。
神社でベビーマッサージ⁉安産・生育の神社として親しまれる六所神社
かっちん玉祭りは年に1日だけですが、六所神社では安産はもちろん、生まれた子の成長に寄り添う生育の神社として、より多くの人に知ってもらうための取り組みも行われています。
その1つが、2024年から始まったベビーマッサージ教室です。以前筆者も参加しました。
社務所の一室を使って行うベビーマッサージ教室では、回によって、絵馬に子どもの成長を願い、本殿に参拝する時間が設けられることもあります。いずれも神社ならではの、思い出に残る体験となりました。

色鮮やかな風車が境内に登場
2025年には、境内に色とりどりの風車が設置されました。

風がよく通る境内では、風車がくるくると軽やかに回り、その様子に子どもが駆け寄ります。健やかな成長への願いが、そっと天に届いていくような光景です。

風車は、参拝者が願いを書く絵馬としても奉納できます。六所神社がバンテリンドーム ナゴヤに近いことから「ライブ当選祈願」の風車絵馬も見られました。

ドラゴンズファンも推し活の願いも
六所神社はファン文化を見守る神社でもあります。

境内にある龍神社は、中日ドラゴンズの本拠地であるバンテリンドーム ナゴヤに近いことから、チームの必勝祈願や、ファンの参拝の場として親しまれてきました。
また今年から六所神社では、バンテリンドーム ナゴヤでのライブ開催にあわせ、”推し活”を意識した御朱印も登場。アイドルグループの公演前後に参拝する人も増え、訪れる層が広がっています。
御朱印が気になったら、六所神社のInstagramをチェックしてみてください。
世代を超えて願いをつなぐ六所神社
実は、愛知県は神社仏閣の数が日本一。名古屋市内にも、700以上の神社が鎮座しています。そのなかで、六所神社は、安産と生育を願う神社として、地域に根ざしてきました。
かっちん玉祭りは、地域を中心に親しまれてきた行事です。この日ばかりはと、氏子さんが顔を見せることもあるといいます。地元を大切にしつつも、より多くの人に神社を知ってもらいたいとの思いから、2026年4月には境内で初のマルシェの開催も予定されているとのこと。
子の成長への祈りも、野球ファンや推しの幸せを願う思いも。
六所神社は、世代を超えて願いをつなぎ続ける名古屋の神社です。

矢田六所神社へのアクセス
住所:愛知県名古屋市東区矢田南1-6-37
最寄り駅:市営地下鉄名城線ナゴヤドーム前矢田駅から徒歩10分
JR中央線大曽根駅から徒歩11分
電話番号:052-711-3609
営業時間:9:00~16:00
拝観料:無料
公式サイト:https://yada-rokusho.jp/
Instagramアカウント:rokushojinja



