
名古屋のご当地ラーメン勢力図
なごやめしが有名な名古屋には、辛さとうまみが際立つ「台湾ラーメン」や、なごやっ子のソウルフード「スガキヤラーメン」、ニンニクたっぷりの「ベトコンラーメン」など個性とパンチが効いたご当地ラーメンが揃っています。
そんな名古屋のラーメン文化の中で、あまり大きく語られてこなかった存在があります。地元住民やラーメン通に長く愛されてきた「好来系(こうらいけい)ラーメン」です。
こってりが苦手な人にもすすめたい、あっさりとした一杯。体にやさしく染み入るスープが特徴の好来系ラーメンを、ライターやまぐちが、半径5キロで追ってみました。
「好来系ラーメン」入門

好来系ラーメンの最大の特徴は、「薬膳スープ」とも称される、鶏ガラや豚骨に魚介、根菜など複数の材料を長時間煮込んで作るスープといえるでしょう。
名古屋市千種区にあった「好来」で出されたのを始まりに、お弟子さん達に引き継がれていき、現在では名古屋市内を中心に、少なくとも十数店舗が好来系ラーメンを提供しています。
「好来系ラーメン」の見分け方は?
私は名古屋出身ですが、実は大人になるまで、好来系ラーメンを食べたことがありませんでした。大人になり、好きになったラーメン店が好来系ラーメンのお店でしたが、何年も気づかず、他の「好来系」のお店に入って、やっと好来系ラーメンという系譜があることを知りました。
地元でも、名称があまり浸透していないのは、「好来系」を表立って掲げるお店が少ないからかもしれません。では、どうやって見分けるのでしょうか。
好来系ラーメンを見分ける特徴としては、①薬膳系スープ、②高麗人参酢などによる味変、③メニュー表記の3つがあげられます。
お店ごとに違いはありますが、じっくり煮込んだ薬膳スープに、トッピングはチャーシューとメンマとネギのシンプルな構成が特徴です。豚骨醤油のような色合いながら、飲めば独特の深みが味わえます。
そのスープを、高麗人参酢、ガーリック、ラー油といった卓上調味料で味変しながら食べるのが、「好来系ラーメン」の楽しみの一つです。

そして、初めて注文するときにやや戸惑うのが、特有のメニュー表記。スタンダードな「松」に、メンマ多めの「竹」、チャーシュー多めの「寿」など、何ともおめでたい表記が並びます。

商店街で愛される「陣屋」
では、ここからは好来系ラーメンが食べられるお店をご紹介。

名古屋市北区の大曽根商店街の一角に佇む「らあめん専門店 陣屋」さんは、店外の看板に「秘法和漢根菜汁」を掲げ、そのスープは、玉ねぎ、人参、ニンニク等の根菜を始めに、干魚、昆布、鶏ガラ、豚骨など豊富な材料が使われています。

店内はカウンター席とテーブル席があり、テーブル席には家族連れで訪れるお客さんもいました。
壁には力士の手形色紙や、将棋界の藤井聡太名人(愛知県瀬戸市出身)の習字作品、中日ドラゴンズの選手のサインも飾られ、幅広い人に愛されてきたことが想像できます。
好来系ラーメンに必須の卓上調味料は、高麗人参酢やラー油が目の前に置かれていました。

特筆すべきは、ニンニクがガーリックパウダーではなく、生にんにくであること。個人的には、にんにくと高麗人参酢がよく合いました。
スタンダードな「松」は、肉厚な自家製チャーシューが2枚。スープを飲めば、しっかり目の味付けの後に残る、奥深い味わいが、たしかに「好来系」を物語ります。

好来系ラーメンのほか、みそらぁめんや、みそカレーらぁめんといったメニューもあります。飽きずに、一人でも家族でも、通いたくなるお店です。
お店を出たところにあった回転灯を乗せた看板。こうした看板は、名古屋で多く見られる、昔ながらの風景です。

陣屋
住所:愛知県名古屋市北区大曽根2-9-75
営業時間:月火水 11:00~14:00 金 11:00~14:00 17:00~19:45 土日11:00~14:45 17:00~19:45 祝11:00~14:45
定休日:木曜日
疲れた日にやさしい「太陽」
名古屋市の東部エリア、市営地下鉄「本山」駅から徒歩5分の場所にある「太陽」さんは、とにかくやさしいスープが特徴のチャーシュー麺のお店です。

戸を開けると、笑顔で出迎えてくれる接客も「太陽」さんの魅力です。
入ってすぐのカウンターで注文をします。「松」が今でも1杯700円で食べられることに驚き、この値段で努力されていることに感激しました。

カウンター横に飾られた地域の子どもからのメッセージもほほえましいです。
L字のカウンター席から見える厨房には大きな寸胴鍋が並びます。湯きりされ、ラーメンができる様子を見ながら待つのも、楽しみの一つです。

私の好来系ラーメンとの出会いの一杯でもあり、疲れて食欲のない日でも、これなら食べられました。あっさりが多い好来系ラーメンの中でも、特にやさしい味わいのスープが特徴です。
体にしみるスープはどんどん飲み干せます。スープを堪能したら、手づくりラー油を少量入れると、辛さと香ばしさがマッチして美味しいですよ。

太陽
住所:愛知県名古屋市千種区楠元町1‐53
営業時間:11:00~14:00 17:00~20:00
定休日:水曜日
好来系の総本山「好来道場」
好来系ラーメンを語るには外せない「総本家 好来道場」さんは、発祥の「好来」を引き継いで、千種区春岡にあるお店です。

代替わりなどを経て、現在は「好来道場」という店名で1日80杯限定、お昼のみ営業しています。「好来系」の総本山にふさわしい、風格ある佇まいです。
店内メニュー板には、松や竹などの他に、とろろ昆布と海苔入りの快老麺の文字を発見しました。

快老麺は、どんぶりから溢れんばかりのとろろ昆布と海苔が乗って、見た目のインパクトがあります。

とろろ昆布をスープに混ぜながら食べるのは、新鮮な食感でした。
食べ進めると、「好来系」に欠かせないチャーシューとメンマが顔を出します。

肉のうまみが感じられるチャシューと、歯ごたえ抜群の極太メンマは美味しく、さすが「元祖好来系」と唸りたくなる完成度です。鶏ガラベースのスープを一口飲むと、玉ねぎの甘味が口に広がり、その深い味を確かめたく、何度もレンゲを口に運びました。
「好来道場」
住所:愛知県名古屋市千種区春岡通6‐1‐16
営業時間:11:00~14:00
定休日:日曜日、第1月曜日・翌火曜日
名古屋のあっさりグルメ「好来系ラーメン」はいかが。
名古屋グルメは、ひつまぶしや味噌カツといった、存在感のある料理がよく知られています。その一方で、好来系ラーメンのように、地元の暮らしの中で静かに親しまれてきた味も存在します。
脂ではなく出汁を重ねたスープのうまみ。そして、高麗人参酢やラー油で味変を楽しむ文化は、ひつまぶしの薬味やお茶漬けにも通じるものがあるのではないでしょうか。
観光の合間に立ち寄る一杯としても、地域の日常を知る入り口としても。
派手さはないけれど、確かに名古屋らしい味。
好来系ラーメンは、そんな「隠れなごやめし」の一つとして、名古屋の魅力を伝えてくれます。



