
天空を駆ける日常「ゆとりーとライン」
日々の移動や、通勤・通学を支える鉄道・バスなどの交通機関は、私たちの生活に身近な乗り物です。
私の住むまちには、高架を走る不思議な乗り物があります。バスなのに、鉄道。鉄道であり、バスでもある。
それが日本で唯一、1台の車両が鉄道にもバスにもなるデュアル・モード・ビークルの、名古屋ガイドウェイバス「ゆとりーとライン」です。
2026年3月で開業25周年を迎えるゆとりーとラインの魅力を、乗車体験レポートと共にお届けします。

JR・名鉄・地下鉄の集まる大曽根駅から出発!
ゆとりーとラインの始点である大曽根駅は、JR中央線・名古屋鉄道・名古屋市営地下鉄の駅があり、乗り換えに便利です。

大曽根駅から小幡緑地駅までの間、高架を走った後、平面の路線バス区間に接続し、高蔵寺までを結びます。

今回は、高架区間で乗車し、平面区間に入った先の停留所で下車。守山区竜泉寺付近を散策しました。
大曽根駅から伸びる高架を下から見上げた様子です。

大曽根駅を発つと、カーブを曲がり、ナゴヤドーム方面に進みます。次のナゴヤドーム前矢田駅までは1区間ですが、ドームでイベントのある日は、多くの人が利用しています。
駅のホームに上がると、バスが来ていました。見た目は普通の「バス」のゆとりーとラインです。

ゆとりーとライン高架区間の駅は、ホームや階段にも屋根があるため、雨の日でも傘なしで待てます。
横から見ても、やはり「普通のバス」に見えます。

いざ、乗車!ゆとりーとラインは「後乗り、前降り」です。

普段ノンステップバスに乗り慣れていると、乗車時に若干高さを感じますが、後で紹介するゆとりーとラインならではの装置が関係していそうです。
抜群の乗り心地と、高架の車窓から見るまちなみ
大曽根駅(東区)を出たゆとりーとラインは、砂田橋駅まで地下鉄と並走した後、矢田川を渡り守山区に入ります。この日は鳥が川で水浴びしている様子が上から見えました。
渋滞を避ける「ゆとり」あるスト「りーと」だけあって、住宅街の上もグングン加速して進み、気持ちいい走りです。ゆとりーとラインは、名古屋市北東部に位置する守山区志段味地区から、都心方面への道路交通の混雑に対応する新しい交通システムとして導入されました。
車窓から見た高架専用軌道です。

道路の中央分離帯上に設けられた高架専用軌道を、車両の前後輪に取り付けた案内装置の誘導で走ります。これが「ガイドウェイバス」なるゆえんです。

この案内装置こそ、ゆとりーとラインの肝となる部分です。案内装置がレールの内側を正確にトレースするのでハンドル操作は必要ありません。
軌道を走ることから、乗務員は大型自動車第二種免許に加え、高架区間の走行に必要な無軌条電車運転免許を保持しており、バスと鉄道のデュアルモードを実装しています。
高架は途中丘陵地(白沢渓谷駅付近)を通過しますが、この時の車体が登る感覚やスピードはなかなか乗りごたえがあり、景色もキレイなので、実際に乗って体験してほしいポイントです!
高架区間と平面区間の切り替えにドキドキ
大曽根駅から小幡緑地駅まで約13分。車窓を楽しんでいるとあっという間の、天空の旅です。
さて、いよいよ高架区間と平面区間の切り替えポイントにやってきました。

切り替えポイントには遮断機があり、その手前で、案内装置を出し入れします。

車内からはなかなか見えないのですが、鉄道とバスのモード切替が行われていると思うと、何だかドキドキします。
案内装置の出し入れだけの短時間で完了するので、気づくと再び走り出していました。乗り換えの煩わしさもなく、快適です。

バスの後方に見えるのが、ゆとりーとラインを運行する名古屋ガイドウェイバス株式会社の建物です。
中には鉄道さながらの運転指令室を備え、ゆとりーとラインの特徴である定時性と安全性を支える運行管理を行っています。
ゆとりーとライン沿線、守山区竜泉寺のお散歩スポット
スーパー銭湯発祥の地⁉「竜泉寺の湯」
ゆとりーとライン平面区間に入ってすぐの位置にあるのが、尾張四観音のひとつに数えられる龍泉寺というお寺。そのふもとに建つのが、人気温浴施設の「天空SPA HILLS 竜泉寺の湯 名古屋守山本店」です。

「竜泉寺の湯」といえば、今や全国に進出する施設ですが、1989年に名古屋市守山区竜泉寺の地に開業した「スーパー銭湯」発祥の温浴施設であります。
私の好きなナンバーワン「スーパー銭湯」です。ゆとりーとラインに乗って、竜泉寺の湯に行くと週末プチトリップ感が高まって、より楽しめます。
展望露天風呂からの景色が人気の「竜泉寺の湯」は、ニフティ温泉ランキング2025東海エリアユーザー投票1位にも輝きました。宿泊も可能なので、観光の際にも利用できます。
日本で唯一の本格的なチベット寺院「强巴林(チャンバリン)」
竜泉寺の湯から600メートル程歩くと、異国風の建物が目に飛び込んできます。それが、日本で唯一の本格的なチベット寺院「强巴林(チャンバリン)」です。

鮮やかな本殿と風にはためく旗は、車で通り過ぎても「あれは何だろう?」と目に留まる存在感です。
チャンバリンは、チベット最古の寺院「ジョカン寺」を模して2005年に建立された寺院で、ジョカン寺が正式に認めた日本唯一の寺院として知られています。

この日は開館日ではありませんでしたが、外からお参りさせていただけました。開運良縁祭開催日である毎月第一土曜日には中で参拝できます。
ゆとりーとラインのこれから

2001年にデビューしたゆとりーとラインですが、開業時よりも志段味地区の人口が増加したことにより、現在は特に通勤・通学時間帯に混雑しています。

増便するには新しい車両が必要ですが、ゆとりーとラインは特殊な車両のため、開発当時の技術者の退職などの理由で、車両更新や増車が非常に厳しいようです。
そこで、次期更新の車両については、自動運転技術を搭載したバスの導入について、検討が進められています。2024年には沿線住民中心の一般試乗者を募集し、実際の高架区間の幅員や急カーブを部分的に再現した実験用路面で、大型自動運転バスを走らせる実証実験が行われました。
日本で唯一はなくなっても、唯一無二の「ゆとりーと」
将来車両が更新されると、「日本で唯一」の冠は外れてしまうかもしれません。しかし、ゆとりーとラインは、これからも地域の足として欠かせない存在です。

高架の上をスイスイと走るバスは珍しく、一緒に乗ると子どもは窓の外を嬉しそうに眺めていました。友人のバス好きの子どもが「ゆとりーと」を見る目的で訪れたり、今回も停車中の「ゆとりーと」と並んで写真を取る子どもを見かけたりしたことから、乗り物として一定の人気が伺えます。
大人にとっても、日常の交通手段でありながら、高架を走る特別感や景色の良さから、乗ればちょっとした観光気分も味わえるのが、ゆとりーとラインの魅力です。
定番の観光地以外にも、少し足を延ばしてみれば、その都市の奥深さがわかることがあります。名古屋の郊外で味わう小旅行を、「日本でここだけの乗り物」とともに体験してみてはいかがですか。



