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人  |    2026.04.22

松山「つくるくつ」大切にする価値観と信頼される理由とは【後編】

オーダーメイドの靴と聞くと、「自分の足にぴったり合う特別な一足」を思い浮かべる方も多いかもしれません。

しかし松山市の「つくるくつ」では、その理想像をあえて誇張することはありません。むしろ、できることとできないことを丁寧に伝えながら、一人ひとりのお客様に向き合う姿勢を大切にしています。

後編では、同店が信頼を集める理由や仕事にかける想いなどについて、店主の森原剛さん(以下、森原さん)へのインタビューをもとに紹介します。

前編はこちら

松山「つくるくつ」|靴作りと靴修理で地域の足元を支える【前編】

ルーツは商店街の履物屋

とても誠実なお人柄

このお店の原点は、森原さんの祖父の代にまで遡ります。

祖父の代からここで履物屋をしていました。長靴もサンダルも通学靴も売っている、いわゆる商店街の靴屋ですね」

その後、森原さんのお母様が店を引き継ぎ、現在の形へとつながっています。当時は、今のように靴をつくる店ではなく、地域に根付いた“身近な履物屋”でした。

森原さん自身も、幼い頃からその環境の中で育っています。その経験が、今の仕事につながるきっかけとなりました。

修理から始まった靴づくりの道

手際よく作業が進められていく

森原さんが靴づくりに興味を持ったのは、就職を考えたタイミングでした。

「実家が靴屋だったこともあり、自然に靴をつくりたいと思うようになりました」

最初は修理の仕事からスタートしました。壊れた靴を直しながら構造を理解していく中で、次第に“つくる側”への興味が強くなっていったそうです

靴について話すときは本当に楽しそう

「修理をしているうちに、自分でもつくりたくなってきたんです」

そこから、靴づくりを本格的に学ぶために東京へ行った森原さん。職業訓練校で一年間、森原さんは製靴の基礎を学びました。

東京では、靴づくりの基礎だけでなく、メーカーでの仕事や販売、修理など、幅広い経験を積みます。さらに、靴づくりの本場であるイタリアにも渡りました。

「どうしてもイタリアに行きたくて、1ヶ月半だけですがフィレンツェで学びました

日本では分業制・大量生産が主流ですが、イタリアでは一人の職人が一足ずつ仕立てる文化が根付いています。この違いは、森原さんの価値観にも大きな影響を与えました。

靴で“すべては解決できない”という現実

地域の方の足元を支えています

「靴で足の痛みが全部なくなるわけではないんです」

森原さんのもとには、さまざまな悩みを抱えたお客様が訪れます。足の変形や慢性的な痛みなど、状況は人それぞれです。

中には、「この靴を履けば痛みがなくなりますか?」といった期待を持って来店される方もいます。

しかし森原さんは、できることとできないことを明確に伝えます。

靴はあくまで道具なので、骨格や体の問題までは解決できません

メンテナンスグッズの販売も

一見すると厳しい言葉に聞こえるかもしれませんが、そこには誠実さがあります。過度な期待を持たせず、現実と向き合うこと。それが信頼につながると考えているからです。

完璧じゃなくても、今より少しでも楽になる靴はつくれると思っています」

この言葉には、無理をしない誠実なスタンスが表れています。

イージーオーダーメイドの難しさと葛藤

できないことはできないと言うのが誠意

イージーオーダーメイドは、一見華やかな仕事に見えます。

しかし実際には、非常に繊細で難しい作業です。

正解がないんです。合うかどうかも、その人次第なので」

時間をかけてつくっても、「合わない」と言われることもあります。そのたびに調整ややり直しが必要になり、精神的な負担も大きくなります。

さらに、時間に対して収益が見合わないという現実もあります。

それでも続けているのは、「つくれる技術があるからこそ、必要な人の力になりたい」という想いがあるからです。

大切にしているのは“丁寧さ”

靴づくりは本当に奥が深いです

そんな森原さんが、最も大切にしていることは何でしょうか。それは「丁寧に仕事をすること」です。

「修理してもすぐに壊れてしまうようでは意味がないんです」と森原さん。

見た目だけでなく、使い続けられる状態に仕上げること。それが、お客様の安心につながると考えています。

安心して任せてもらえることが一番大事ですね」

丁寧さとは、単なる作業の精度ではありません。お客様との信頼関係そのものなのです。

“作れるから直せる”という強み

森原さんに修理してもらい、筆者の靴も生き返りました

「つくるくつ」の最大の強みは、やはり“靴をつくれること”にあります。

「靴の構造を理解しているから、どんな靴でも対応できるんです」と森原さんはいいます。

既製品、ブランド靴、ワークブーツなど、それぞれ構造が異なる靴にも柔軟に対応できるのは、つくり手としての経験があるからです。

ここがこうだから、こう直せるなっていうのが分かるんですよ」この技術があるからこそ、他店では難しい修理にも対応でき、結果として多くのお客様の信頼を得ています。

今後の目標について伺うと、森原さんはこう語ります。

松山で一番信頼される靴屋になれたらいいですね」大きな展開や拡大を目指すのではなく、目の前のお客様に丁寧に向き合い続けること。その積み重ねが、結果として信頼につながると考えています。

まとめ|“ちょうどいい靴屋”という価値

今後のますますの活躍に期待が高まる

「つくるくつ」が目指しているのは、特別な一足を提供することだけではありません。困っている人に寄り添い、できる範囲で最適な選択肢を届けることです。

その誠実な姿勢こそが、多くの信頼につながっています。華やかさを売りにするのではなく、目の前の一足と丁寧に向き合うこと。そんな積み重ねが、店の価値をつくっています。松山で“信頼される靴屋”として在り続ける理由が、そこにありました。

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この記事を書いた人

世界のわたなべけん

地域に眠る人・場所・想いを取材し、 文章✕映像✕出版✕AIで編集、 世界に向けて発信しています。 神社仏閣、地域活動、仕事など、 現場に足を運び、空気感を伝えることを大切にしています。 地域の価値を最大化し、世界に届けるのがテーマです。

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