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もの・こと  |    2025.09.11

若い力が躍動!ニットでさまざまなものを生み出すラボシステムの挑戦

幅広い製造業が集う葛飾区。100年近い歴史を誇る工場、3代に渡って事業を継続している工場など、歴史を感じさせる老舗が多いのですが、実は新しく事業を始めた若手も頑張っています。

株式会社ラボシステムは2019年に創業。洋服を中心にさまざまなニット製品を生み出し、活躍の幅を広げています。その事業の詳細を、代表取締役社長を務める岩佐光輝さんに聞きました。

個人事業主から大手企業まで!幅広いニーズに対応しています

無縫製ニットを製造できる、島精機製作所の横編み機

葛飾区青戸に本社と工場を置く株式会社ラボシステム(以下、ラボシステム)。クライアントから依頼を受け、さまざまなニット製品のサンプル製造と量産化を自社工場で行っています。

ニットといえば、一般的にイメージしやすいのは冬物の洋服でしょう。しかし、ラボシステムでは洋服の他、ペンケース、車のダッシュボードカバーなども製造しています。

事業の特徴は大きく2つ。1つは少量多品種を製造できることです。これによって、中小企業や個人事業主のクリエイターの期待に応えています。もう1つは、無縫製ニットを製造できること。一般的にニットの洋服はそれぞれのパーツを作り、最後に縫製して1着を仕上げます。ところが無縫製ニットは、全てを一度に編み上げることができるのです!これによって、より良い着心地を可能にしています。

「このように言うのは少し気が引けますが、あえて言うなら、私自身がこの会社の強みかもしれません。当社では株式会社島精機製作所(以下、島精機製作所)の横編み機を使用しています。多くの縫製工場で導入されている機械ですが、どれだけうまくプログラムを組めるかで作れる製品は異なります。そして、私ほどこの横編み機を理解し、プログラムを組める人は、日本中探してもあまり多くないと思います」(岩佐さん、以下同)

謙虚でありながらも自信を見せる岩佐さん。一体、どのような経緯で事業を立ち上げたのでしょうか?

大手企業を渡り歩いて経験を積んだ実力者!

縫製前のアイロンがけを行う女性社員。若手が活躍している職場です

岩佐さんは大学卒業後、横編み機を製造する島精機製作所に入社。技術指導、サンプル作製、量産化サポートなど、ニット作りのノウハウを学びました。その後、服飾・ファッションの専門学校である文化服装学院で教壇に立ち、ニットデザインを教える立場に。そして、株式会社ファーストリテイリングに転職し、無縫製ニットのラインの立ち上げに携わりました。独立し、ラボシステムを起業したのは36歳のときでした。

「2022年時点における縫製業の国内製造率は、わずか1.5%で、高齢化が進んでいます。若い世代が参入すれば、同世代が仕事をしやすくなり、縫製業を盛り上げることができると思ったことが1つ。もう1つは、僕が講師をしていた専門学校の『ニットを作りたい』と思っている学生の需要に応えられると思ったからです」

このような志から、サンプル製造を目的に事業を開始。大手クライアントとの契約が決まり、順調な滑り出しを見せました。ところが、新型コロナウイルスが流行。契約が破棄され、仕事がなくなってしまいます。そこで、サンプル製造だけでなく、量産化にかじを切り、なんとか事業を軌道に乗せることができました。

「いきなりピンチを迎えましたが、これを不運と捉えるかどうかは、その人次第だと思うんです。仮に起業があと半年遅かったら、コロナ禍中に立ち上げることになるので、会社員を続けていたかもしれません。それに、この危機を乗り越えたことで、事業を継続できる自信にもつながりました」

「葛飾町工場物語」に申請。新たな出会いも

オビツ製作所のドール向けの洋服。デザインはラボシステムのデザイナーが作成

コロナ禍を乗り越え、2024年には葛飾ブランド「葛飾町工場物語」に無縫製ニットの製造技術が認定されました。このブランドは、葛飾区の製造事業者の優れた技術により製造された製品等を認定する制度。ここで、さらなる事業展開につながる出会いがありました。

「ソフトビニール製品を製造する株式会社オビツ製作所(以下、オビツ製作所)さんも同じ年に認定を受け、認定式では私の隣に代表取締役社長の牧有里子さんがいました。実は、当社のデザイナーがドール好きであることから同社を知っていたこともあり、縁を感じてお声掛けしました」

後日、岩佐さんはオビツ製作所を訪問し、ドール用のニット製品に関するプレゼンテーションを実施。「ニットの洋服を展開したいけど、どの会社にどう依頼したらいいかわからない」というオビツ製作所の課題解決にもマッチし、製造することが決まりました。「今後はこの製品も事業の柱の1つにしたい」と岩佐さんは語ります。

若さと技術のアピールをしたい

ニットサンプル。量産化する上で、サンプルの製造は欠かせません

7期目を迎え、事業も葛飾区の他の町工場との付き合いも順調であることがうかがえます。そこで、気になる今後の展望を聞きました。

「ニットで作れるのはアパレルだけじゃないんです。いろいろな物が作れることを、もっとアピールしていきたいです。また、起業当初の予定通り、自社工場で量産化を目指すクライアント向けのサンプル製造も強化していきたいですね。

また、当社は町工場としての歴史だけでなく、平均年齢が30代半ばと、社員も若いことが特徴です。老舗企業はもちろん、若い人のクリエイティビティを支えたい思いも強いので、何かあれば、お気軽にご相談ください」

関連リンク

株式会社ラボシステム:https://labosystem.net/

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この記事を書いた人

増田 洋子

東京都在住。インタビューが好きなフリーランスのライターで、紙媒体とWebメディアで執筆中。ネズミを中心とした動物が好きで、ペット関連の記事を書くことも。

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