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もの・こと  |    2025.11.07

ひとりのママの願いが形に|北浦和・地域マップづくり「赤ちゃんと歩く、まち」プロジェクト

ひとりで子育てをしていると、ふと押し寄せる「これでいいのかな?」という不安。
そんな気持ちをやわらげてくれたのは、「人とのつながり」でした。

北浦和に暮らすママ・向井裕子さんが始めた「赤ちゃんと歩く、まち」プロジェクト。
その原点には、自分自身の子育てに悩み、ヨガ教室で感じた「人に見守られる安心感」がありました。

向井裕子さん

ママの願いから生まれたこのプロジェクトは、地域の人たちとのご縁をつなぎ、紙のマップという形で実を結んでいます。

温かいつながりが広がっていく、その歩みを追いました。

「オフライン」のつながりが育児中の私の支えになった

「育児をする毎日が、いつも不安でした」
当時を振り返る、向井さん。

フルタイム勤務から、産・育休に入ってからのこと。わが子を抱えて一人で暮らす日々の中、感じ続ける不安に苦しんだのだそう。

わが子の育ちのことや、日々の育児のこと。

「これでいいのかな?」
「本当に大丈夫なのかな?」

そう感じても、すぐに聞く人がいないという不安が常にあったといいます。

その頃に体験したヨガインストラクターきくちあきこさんが主催する「ベビママヨガ」。

そこで向井さんが見たのは、多くの人に囲まれて「可愛いね〜」と言われるわが子の姿でした。その様子を見て、自分自身もわが子を素直に「可愛い」と思えた体験。

「日々、子どもと向き合っていると『ちゃんとしなきゃ!』という思いが先行してしまって…。子どもの可愛さを感じる心の余裕がなかったように思います。でも、ヨガ教室へ行った時に多くの人と話したり、わが子が他の大人の人に見てもらえる環境ってホッとできていいなぁと思えたんですね」

育児をする人が、もっとこういう場所を知って出かけることで不安に感じる気持ちを減らすことができるんじゃないか…。それが、「赤ちゃんと歩く、まち」プロジェクトのスタートです。

私の思いを「声」にしたら広がった人とのご縁

それからというもの、向井さんは行く先々で「北浦和の赤ちゃんマップを作りたいんです!」と、声に出して伝え続けたのだそう。

マップづくりへの大きな一歩を踏み出したのは、「TSUKUSHI Donuts」店主、みどりさんとの出会い。編集者としても仕事に携わるみどりさんから、マップへの協力を仰ぐことになると同時に、「マップを作るなら、デザイナーやイラストレーターも必要だね」と、紹介を受けることになったのです。


2024年の夏に決心したことを「声」にし続けた結果、ご縁が広がり実現への一歩を踏み出すことができた向井さん。

わが子の保育園入園で活動の時間が増えたことをきっかけに、2025年春「赤ちゃんと歩く、まち」プロジェクトが始動、向井さんはクラウドファンディングを募り本格的に活動を開始しました。

「マップを作りたい!と声にし続けたことで、サポートしてくださる方とつながることができました。周囲の力によってロケットスタートを切れたことは幸運でした」

と、向井さんは振り返ります。

マップづくりを実現するためのクラウドファンディングは、122%の達成を遂げ、いよいよマップづくりへと進み出しました。

「紙のマップを作りたかった」その理由

「赤ちゃんと歩く、まち」北浦和&浦和-MAPは紙製のマップとして作られています。紙製にしたかったのは、どんな理由からなのでしょうか。

「ネットで情報を探す場合、スマホを使うことが主になりますよね。すると、検索したりよく見るために拡大したり…。調べるのにも一苦労です。育児中の人がワンアクションでパッと見ることができる、そんなマップづくりを目指すと、紙製のものがいいなという結論になりました」

ワンアクションで開くことができるマップは、北浦和と浦和のマップが両面に印刷されています。

北浦和のマップ
浦和のマップ

一気に開いてたためる、手のひらサイズのこの大きさも、こだわりの一つ。

小さくて持ち歩きに便利なポケットサイズ

「紙にもこだわった結果、印刷所でポケットサイズまで折っていただくことは難しかったため、最終的な作業はスタッフや応援してくれたママさん総出の手作業で完成させました…!」

実際にマップを広げてみると、目的地以外の場所が自然と目に入ります。知らず知らずのうちに、地元のお出かけできる場所を知ることができて、赤ちゃんとのお出かけのハードルも下がりそうです。

「マップを手に取っていただき、紙や手書きのイラストの温かみも感じてくれたら嬉しいです」

マップ作りに欠かせなかった「ママ視点の口コミ」

マップに書かれている詳細な口コミは、地元ママ達の協力のもと、向井さんが執筆したものです。

掲載されている店舗や施設は約80カ所。一つひとつの口コミを執筆し、掲載依頼をするのは、かなり大変だったことが想像できます。

「読み物的な要素も加えたかったので、口コミの文章量は多めにしました。ママのリアルな口コミを読んでいるような感覚でマップを見てほしいと考えたからです。手に取って読んでいただき、口コミを参考にしながら赤ちゃんとお出かけしていただけたら嬉しいです」

マップづくりはひとつの「スタート」

「赤ちゃんと歩く、まち」マップは、マップ掲載店舗の数か所に設置されています。

「まめたんく」は、その施設の中の一つです。

研究所として使われていた施設を改修したコミュニティスペース。利用者とアイデアを出しながら場づくりを進めている。
まめたんくに設置されているマップ

先日、まめたんくでは「赤ちゃんと歩く、まち」×「食べること研究所」コラボワークショップを開催しました。

食べること研究所 山﨑奈々さん「ワークショップで作った甘酒をはじめ、発酵食品に興味を持っていただき、身体を整える体験をしてもらえたら」食べること研究所Instagram
山﨑さん特製の甘酒を試食
甘酒を使用したスムージーづくりをします。
甘酒スムージーのおいしさにママ達も感激。
ワークショップに参加している時も、赤ちゃんを見てもらえて安心です。

このようなワークショップが開催されたのも、向井さんのご縁が広がったことによるもの。

「マップづくりを通して、多くの人たちと出会うことができました。最初は、同じ育児をする人たちとの輪が広がるのかな?と思っていましたが、実際は子育て世代以外の方とのつながりも増えました。このプロジェクトについて関心を持ってくださり、応援してくれる方々が多くいらっしゃることを実感し、心からありがたいなぁと」

「マップを設置する場所は、これからもっと増やしていきたいと思っています。多くの方が目にしてくれるように、これからも地元のみなさんのご協力をお願いしていきたいと思っています」

たった一人のママの「不安に感じる思い」からスタートしたこのプロジェクト「赤ちゃんと歩く、まち」は、現在1,000部のマップ配布を経て、さらに1,000部の増刷を実現。今後、定期的なアップデートも重ねていきたいと話す向井さんです。

「ありがたいことに、他の地域の方からも『マップづくりをしたい!』という声をいただいています。北浦和・浦和だけでなく、他の地域でのマップづくりが始まったら、もっと多くの育児をする人たちが安心して過ごせるようになると思うと、ワクワクします」

向井さんがひとりで始めた「赤ちゃんと歩く、まち」プロジェクトは、マップづくりを通して多くの仲間に恵まれました。

そしてまた、新たなスタートを切り始めています。

「赤ちゃんと歩く、まち」 北浦和・浦和-MAP プロジェクト

「赤ちゃんと歩く、まち」公式Instagram

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この記事を書いた人

はる

さいたま市在住の取材ライター。地元民だからこそ知り得る、個人店やマルシェ等のイベントをこれまでに200ヶ所以上訪れる。地元民でも意外と知らない「ヒト・モノ・スポット」をお届けします。趣味は「ひとり呑み」「カフェ巡り」お酒とコーヒーが私をこよなく幸せにしてくれます。

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