Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンをキュレーションする地方創生メディア

フード  |    2024.06.15

創業1867年の日本酒酒蔵を事業承継し、酒造り2期目を振り返って。荻原慎司さん|長野県上田市(山三酒造蔵元)

写真右=蔵元・荻原慎司さん、写真左=杜氏・栗原由貴さん

長野県上田市で1867年に創業し、残念ながら2015年から経営難により休眠状態となった日本酒酒蔵を事業承継で復活させた荻原さん。自身は長野県佐久市で遊技機の商社を20代から経営し、その事業を継続しつつ「日本酒」という未知の分野に多くの時間を費やす生活を続け、商品のリリースへ漕ぎつけました。福岡県出身で京都の酒造会社からハローワークの募集を見てやってきた栗原杜氏と、二人三脚の酒造り2期目を振り返ってもらいます。

そもそも長野県上田市 山三酒造はどこにある?

戦国武将・真田幸村の一族・真田氏の発祥の地で名高い長野県上田市。その南部に位置する丸子地域の御嶽堂が酒蔵の所在地です。上田市は山三酒造の他にも5つの酒蔵があり、長野県内でも酒造りの水に恵まれた地域といえるでしょう。

事業承継は偶然の出会い。酒造りは自然の成り行き?

ーー今日は長野県のとある酒販店が100名を超える顧客向けに開いた34品目の新酒試飲会で、6位に評価された結果を知って伺いました。来る前に調べてみると、異業種からの事業承継をされて間もないようで、その経緯も含め山三酒造のお酒の話を聞かせて下さい。

(荻原社長)私自身は20代の頃から自分で事業を起こし遊技機の商社を経営しているのですが、商社は扱うものの流行に抗えない側面があります。商品の開発や製造ではなく流通が仕事なので。ライフサイクルの短くなった商品を扱っている時、ふと

自分がモノを作る側に回ったら

と考えました。そんな気持ちを知人に話すうちに、ある日本酒の関係者の方からいただいたのが、経営難で休業状態にあった山三酒造の事業承継のお話でした。

ーーお酒とは関係ない商社から日本酒蔵元とは、180度方向転換のようなお話ですね。

(荻原社長)自分の部下が商社を担ってくれていることに加え、私の出身が長野県佐久市という人口10万人弱の地域に11の酒蔵があり、仕事として日本酒造りをされる方が身近にいたことが、このお話を受け入れる素地になったのかもしれません。

最初はふたりっきりで頑張った

ーーそうはいっても初めてのお仕事ですから、ご苦労されましたでしょう。

蔵元・代表取締役 荻原慎司さん

(荻原社長)大変でした。まず、会社の財務上の整理に2年。会社の経理は分かってましたが、酒税法が初めてで苦労しました。その後に佐久の酒蔵で蔵人のような生活をして、改めて杜氏を探しても人が決まらず、ハローワークで募集して京都の蔵から来てもらったのが栗原杜氏です。

ーーハローワークでですか?!

(荻原社長)これが意外と来たんです。ただ皆さん優秀な方が多かったんですが「今までのキャリアのベスト」を出せる方は多くても「こんなお酒を造りたい」という問いに一番応えてくれるのは栗原杜氏かなと思って彼に決めました。

(栗原杜氏)それから蔵元と二人で試行錯誤しながら設備を整え造りを考え、2023年2月に1期目、2023年10月に2期目の仕込みをし、2024年5月に東京浅草で行われた長野県酒造組合の日本酒会で4種類を持ちこむことができました。

・A-1 純米吟醸 ひとごこち 五割五分 うすにごり
・A-2 純米吟醸 山恵錦・ひとごこち 五割五分 無濾過原酒
・B-1 純米大吟醸 山恵錦 四割五分 うすにごり
・B-2 純米大吟醸 金紋錦 三割五分 無濾過原酒

杜氏・栗原由貴さん 2024年5月長野県酒造組合銘酒イベント「YOMOYAMA NAGANO」にて 

地元上田の期待も受け、夢はふくらみ、歩みは着実に

ーー新生山三酒造になって「山三」をリリースする一方、以前からのブランドである「六文銭」も生産していらっしゃいますね。

(荻原社長)実は蔵がまだ再開の準備段階の時に、上田市の土屋陽一市長が前触れ無しに来られて激励を受けたんです。また、市内の飲食店さんを回った時に「真田の六文銭を楽しみにしてる。観光で来られる方に好評なんだ」とお声がけいただいたこともありました。

100年以上の歴史ある蔵だったので、再開する前から「見守ってくれているんだ」という思いを強くしました。1期目は四号瓶サイズだけでしたが、今は「山三」「六文銭」共に一升瓶サイズもご用意しています。

ーー市長が突然来訪ですか!注目していらしたんでしょうね。では、最後に2期目を終えての感想や、今後の目標などを教えてください。

(荻原社長)今はまだ長野県のお酒の中で選ばれるよう頑張っています。蔵の再生後に出した「山三」のラベルはスペック毎に色を変えていることもあって、近い将来「今年はグレーがいいよね」とか「私はピンクが好き」とか、ウチのお酒の中でお好みを探していただけるようになればと思っています。

また、昔の蔵の部分がかなり残っている箇所もあり、古民家的な部分を活かしてカフェなどお客様が集う場所をつくり、御嶽堂(蔵の所在地)の風景を楽しんでほしいという夢もありますね。

ーーその夢、実現すると素敵ですね。

(荻原社長)夢の話を先にしましたが、実はお酒が好評をいただいて、この夏には在庫が捌けてしまう見通しなんです。

3期目は何をさておいても、今のお取引先様の需要に応えること。次に、新しいお取引先様への需要に対応できること。そうして皆さんのお手元にお届けする美味しいお酒の道を太くしていくことが目標です。

【取材を終えて】
足元を見据えながら語った夢の実現や、「山三」のラベルの右側に入れた英語表記が海外のお客様へ届く未来がじきにくることを期待しながら、おふたりの蔵を後にしました。

山三酒造に関する情報

URL :山三酒造 | Yamasan Sake Brewery (yamasan-sake.jp)
住所:386-0412 長野県上田市御嶽堂687-1
TEL:0268-42-2260
FAX:0268-42-3884
営業時間:平日 9:00-12:00
E-mail:info@yamasan-sake.jp
※1.酒蔵に実店舗はございません。
   商品をお探しの際は、HPトップページ下段の「取扱店のご紹介」のリンクをご活用下さい。
※2.2024年度は引き続き長野県酒造組合銘酒イベント「YOMOYAMA NAGANO」に参加します。
   開催日=大阪7月17日(水)、札幌8月20日(火)、長野9月26日(木) 
※3.TBS NEWS DIG による2023年3月上田市長訪問時の山三酒造取材動画はこちら

【オマケ】山三酒造も参加する「長野上田の酒祭り」開催!!

長野県酒造組合のHPでも告知された、東京都新宿区四谷荒木町のはしご酒イベントです。お近くの方はこの機会に参加されてはいかがでしょうか。

記事をシェアする

この記事を書いた人

Kunie

20代で首都圏エリアの情報誌のライターをしていました。その後、一般企業に転職。東京から長野へ移住、単身赴任、親の介護を経て子供の独立を機に退職。地元誌のインタビュー記事を担当させていただいたご縁から、20代から長いトンネルを経て、またライターで働いてみようと日々奮闘中です。

関連記事