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もの・こと  |    2023.07.23

リサイクル率日本一「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」

6月に神奈川県から千葉県へ引っ越しをした。部屋に山積みになっていたダンボールの開梱がようやく済み、転入届や住所変更などの諸手続きもひと段落した。住んだことのない新しい街に暮らしてその地のルールや文化、人柄にギャップを感じることがあり、毎日が新鮮だ。

そのギャップの一つにごみ出しのルールがある。私が現在暮らしている千葉県松戸市はごみ出しが有料だ。松戸市指定のごみ袋をスーパーやコンビニで購入し、燃やせるごみはそれに入れて捨てなければならない。

私は今回、ごみ出しや環境について色々考え、過去に暮らした鹿児島県での取り組みを調べてみた。

鹿児島市で取り組まれている「家庭ごみマイナス100グラム」

鹿児島市ではごみ出しが無料だ。しかし、そんな鹿児島市でもごみの有料化を視野に入れ始めている。なぜなら、平成27年度、鹿児島市民1人1日あたりの家庭ごみの量が他の中核市と比較してかなり多いことが問題となったからだ。

そこで、鹿児島市はいきなりごみの有料化に改正するのではなく、まずは令和7年3月までの期間を設けて、それまでに市民に1人1日あたりの家庭ごみの量を平和27年度の570 g から100g減らそうと喚起している。これが「家庭ごみマイナス100グラム」といわれる取り組みだ。

この取り組みを実施し始めてから家庭ごみの量は徐々に減っており、令和5年度の統計で484g、つまり目標まであと14gというところまできている。

家庭ごみマイナス100グラム(引用元:https://www.city.kagoshima.lg.jp/recycle/mainasu100.html)

いち早く「循環型社会」の実現に向けて動き出した大崎町

鹿児島県内でも自治体によってごみ出しのルールは異なり、実際に有料化になっている自治体もいくつかある。

そんななかでいち早く「循環型社会」の実現に向けて動き出し、独自のリサイクルシステムを構築している町がある。それが鹿児島県大崎町だ。

大崎町について

鹿児島県の本土は薩摩半島と大隅半島に分かれるのだが、大崎町はその大隅半島に位置し、志布志湾に面する。人口は約1万2千人の小さな町であり、みかんやマンゴーなどの農業、その他畜産や水産業が基幹産業だ。

道の駅くにの松原おおさき(写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟)

「リサイクル率日本一の大崎町」がかつて直面した課題

そんな大崎町は何度も「リサイクル率日本一」に輝き、独自のリサイクルシステムを国内外に展開しようと試みているが、かつてはごみの分別に無頓着な町だった。大崎町にはもともと焼却炉がなく、すべて埋め立てによって最終処分されていたのだ。

埋立処分場は1990年、旧有明町に建設された旧志布志町、旧有明町(現在の志布志市)と共同の処分場であり、当初の計画では2004年まで使用できるとされていた。しかし、計画より搬入ごみの量が多く、1998年に処分場の残余年数が逼迫し、2004年まで持たないことが判明。

そこで、大崎町は衛生自治会の協力の下、延べ450回にわたる説明会を開催し、新たなごみの処分方法について住民と議論を開始。議論の場では焼却炉や埋立処分場の新設が候補案として挙がったが、建設地の選定や運用・維持のコスト面が理由で断念。

そういった背景から町全体でごみ出しのあり方を見直し、既存の処分場を延命するために分別とリサイクルを開始することになった。

今では圧倒的に高い大崎町のリサイクル率

動き出した1998年、まずはカン、ビン、ペットボトルの資源ごみ3品から分別回収をスタート。その後、徐々に分別品目を増やしていった。2018年には埋め立てごみが80%以上減少し、それによって処分場は2060年頃まで使えるようになった。

現在は27品目に分別され、「一般ごみ」「資源ごみ」に分けて回収している。一般ごみは週1回、回収され処分場に搬入される。一方、資源ごみは民間の委託業者である有限会社そおリサイクルセンターで、さらに細かく55種類に分別されて再資源化している。

生ごみや草木は、このリサイクルセンターにある大崎有機工場で完熟堆肥となり、それを販売している。

この結果、自治体別一般廃棄物リサイクル率日本一を2006年から2020年の間に14回達成。この取り組みが認められ、大崎町は2018年に第2回ジャパンSDGsアワードを自治体で唯一受賞した。

リサイクル率の全国平均は20%といわれているなかで、2020年度の大崎町のリサイクル率は83.1%だった。圧倒的に高いことが数値から読み取れる。

大崎町が掲げる「未来の大崎町ヴィジョンマップ」

大崎町はこの成功事例をもとに、循環型社会を実現させていくための「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」を掲げている。これは2030年までに使い捨て容器の完全撤廃と脱プラスチックを実現し、すべての資源がリユース、リサイクルされて循環するヴィジョンだ。

未来の大崎町ヴィジョンマップ(引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000085406.html)

「サーキュラーヴィレッジラボ」の発足

大崎町はこの取り組み事例を自分たちの町だけで完結しようとするのではなく、他の自治体や世界に普及していくことによって世界全体での循環型社会の実現を目指している。

とはいえ、「大崎リサイクルシステム」を他の自治体や世界に普及させようとしても説得力がなければ理解を得るのは難しい。

そこで、科学的なエビデンスを示すために2021年に「サーキュラーヴィレッジラボ」というプログラムを発足した。このラボでは環境学博士が所長を務め、このシステムが環境・経済・社会にどのような影響を与えているのかを評価し研究している。

国立研究開発法人国立環境研究所と共同研究を行い、研究は途中であるものの、同規模で焼却を実施する自治体と比較して大崎町の温室効果ガスの排出量は4割ほど少ないことがわかっている。

地球や次世代にやさしい行動を

大崎町には、この取り組みに興味を持ったさまざまな自治体や民間企業が視察に訪れているという。また、海外からも注目されており、2012年からインドネシア・デポック市の廃棄物の原料化を目的とした環境指導をおこなっている。

「SDGs」「サスティナブル」「エシカル」といった言葉をよく耳にするようになった時代の前からこうやって動き出している大崎町の姿を見ると、私も何か小さなことでもいいから地球や次世代にやさしい行動をしてみたくなった。

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この記事を書いた人

きゃんまり

鹿児島出身、関東在住。広告代理店に勤務し、ライターとしても活動中。取材ありの記事執筆やイベントレポートの作成が得意。一歩鹿児島を出ると、「鹿児島の本当の魅力が知られていない」「鹿児島と無縁の人が多い」と痛感しています。大好きなふるさと鹿児島を一人でも多くの人に知ってもらい、ファンになってもらうために、鹿児島のモノ・コト・ヒトに関する情報をお届けします。

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