2026年に創業100周年を迎える老舗粉砕機メーカーの槇野産業株式会社。創業当時から製造・開発をしているマキノ式粉砕機は1万台以上の納入実績を誇るロングセラー製品です。「何だかすごい会社だということはわかるけど、何をしているのか、いまいちわからない……」と思うかもしれませんが、実はけっこう身近な存在なんです!同社の4代目であり、代表取締役社長を務める槇野雄平さんに粉砕機、会社の歴史などについてインタビューしました。
気になる粉砕機の活用方法
マキノ式粉砕機は名前の通り、物を砕いて粉状にするための機械です。
「スーパーの棚に並ぶ粉もの、例えば小麦粉、米粉、きな粉、香辛料などの1/3には、当社の粉砕機が使用されています」(槙野さん、以下同)
マキノ式粉砕機は汎用性があり、幅広い分野で活用可能。穀物、野菜、茶葉、魚などの食品以外にも樹脂、紙、土、建材、貝殻、ガラスなど、さまざまな物を粉砕するために使用されています。粉状になったそれらは製品になり、私たちの暮らしになじんでいます。
同社では粉砕機の製造と販売以外に、コンサルティングも行っています。
「例えばパソコンの基盤を粉砕し、希少金属を取り出す場合、基盤をそのままマキノ式粉砕機に入れてもうまくいきません。まずは、当社が所有している別の粉砕機で破砕し、ある程度細かくしてからマキノ式粉砕機に入れるといった手法を取ります。顧客の要望を聞き、解決策を提示できるのも、長年の実績と経験がある当社の強みです」
もちろん、同社ではマキノ式粉砕機以外の粉砕機も製造、販売しています。顧客のニーズに応える形で製造したのが、遺骨粉砕機です。
「元々は散骨用に依頼されて製造しました。最近では、納骨堂がスペース確保のために遺骨を粉砕し、省スペースを図っているようです」
ちょっと意外な物や目的のためにも粉砕機は使われているんですね!
「社員に弊社の面白いところを尋ねてみたら『毎日原料が違うのが楽しい』と言っていました。汎用性のあるマキノ式粉砕機だけでなく、用途別の粉砕機もたくさん扱っているので、幅広い業界から引き合いが来ます。その都度頭を使って考えなければいけないので大変ではありますが」
そう答えてくれた槇野さん。見せてくれた笑顔から、仕事へのやりがいを感じていることが伝わってきました。
さまざまな状況や変化を受け入れてきた社歴
さまざまな粉砕機を製造してきた槇野産業の歴史は、大正15年、西暦1926年に技術者だった槇野さんの曾祖父様である槇野義一郎氏が槇野鉄工所を創業したことから始まります。
マキノ式粉砕機が広く知られるようになったのは、おそらく第二次世界大戦直後のことでしょう。日本政府は深刻な食糧難の打開策として、アワやヒエなどの雑穀や、サツマイモのツル、ドングリ、でんぷんかすなどの未利用資源の活用を計画。それらを粉末にするために必要とされたのが、マキノ式粉砕機でした。
政府の要望に1社で応えることは難しいと判断した義一郎氏は、マキノ式粉砕機の図面を三菱重工業川崎工場、神戸製鋼所、三機工業などに公開。協力して増産を果たし、食糧難の解決に貢献しました。
誇るべき実績を持つマキノ式粉砕機ですが、それに同社は甘んじることなく、1998年にはエネルギー効率の向上、省スペースといった改良を実施。顧客と時代のニーズをさらに反映した製品になりました。
名実ともに優れた製品であり、ロングセラーにつながっていることがわかりました。でもこれだけ長く事業を続けられる理由は、製品以外にもありそうです。
「私は『温故知新』を大切にしています。粉砕機の製造と販売を基本線にしつつ、時代、法律、ニーズの変化を読み取り、それを取り込んでいく。顧客は粉砕機ではなく、そこから出てくる粉が欲しいんですよね。『お客様ファースト』というと格好を付け過ぎですが、顧客が何を望んでいるかは意識しています」
時代の変化を読み取ることも大切だと主張する槇野さん。近年では間接的に社会課題の解決に貢献することも。
「そうめんやそばの製造の段階で発生する端材のリサイクルのために使用されています。最近多いのはバイオマスプラスチックです。木材関連、樹脂関連の事業者の両方から引き合いがあります。大豆の搾りかす、かき殻、卵の殻を粉砕して肥料にするためにも使われています」
他にもスーダンの食糧難の解消や、モザンビークにおけるバイオマス原料の製造のために使用されるなど、海外でも活用されています。至る所で幅広く使用されていることにも驚きですね。
温故知新の精神でこれからも社会に貢献
日常で粉砕機を目にする機会は少ないものの、さまざまな原材料の粉砕のために使用され、私たちの生活を支えたり、社会課題の解決に活用されたりしていることがわかりました。
そんな槇野産業が、今後どのように事業を展開していくのか気になります。
「現状、槇野産業で主力としている衝撃式粉砕機で粉砕しづらい原料、例えば油分の多いコーヒー豆のようなものを粉砕できる新製品を開発している最中です」
との答えが。歴史や実績におごることなく探求を続ける槇野産業。その姿勢に老舗企業の真髄を見ることができました。
関連リンク
槇野産業株式会社:https://www.mkn.co.jp/