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もの・こと  |    2024.08.13

「公民連携モデル事業」5つの自治体と民間企業が新たな地域創生事業の協定書を締結

8月5日都内にて、5つの自治体(奈良県宇陀市、山梨県大月市、栃木県益子町、和歌山県那智勝浦町、山梨県富士川町)と一般社団法人公民連携推進機構(以下、公民連携推進機構)は、新たな地域創生モデル事業を発表しました。

公民連携推進機構(https://cclg.or.jp/)は2023年5月に設立され、80以上の民間企業会員とともに400以上の自治体にDX化を含めた事業支援を行っている団体です。 

地域創生事業の展開にあたり、各自治体と同機構の法人会員企業17社とで「地域創生に向けた包括連携協定書」を締結。今後1年間、資金や知見を重点的に各自治体に支援・活用する取り組みが始まります。

 地域が抱える課題に対し5つの自治体が事業モデルの先進事例となる

(左から)望月 町長(富士川町)、堀 町長(那智勝浦町)、小林 市長(大月市)、高瀬 代表理事(公民連携推進機構)、広田 町長(益子町)、山本 政策監(宇陀市)

日本の自治体の多くは、人口減少や高齢化による労働力不足・社会保障費の増大が懸念されています。豊かな自然や独自の文化など地域固有の資源を持ちつつも、それらの懸念をどのように解消すべきか、どの自治体においても喫緊の課題といえるでしょう。

今回締結された協定ではそれらの課題解消に向けて、5つの自治体に対し重点支援を行うこととなりました。各自治体・公民連携推進機構・法人会員企業が連携し、財政支援や技術提供を行うことで、今後の地域創生の活性化を図ります。連携した先の未来には、DX推進によるデジタル人材育成や業務の効率化、地域の特性を活かした新たな事業の発展が期待されます。

各自治体の事業モデルを紹介

今回の公民連携事業モデルにおいて、5つの自治体では今後どのような取り組みを進めていくのでしょうか。会見で発表された各事業モデルならびに、自治体代表から伺った地域の魅力やこれからの展望について紹介します。

奈良県宇陀市

「DXプロフェッショナル職員」の育成

宇陀市役所内の職員50人を対象に、2024年3月末までにDXのプロ人材を育成する予定です。具体的には「DXアドバイザー」の資格取得と、デジタル庁「デジタル推進委員」認定が目標となります。2024年4月からはDXのプロフェッショナル職員が自治体内部だけでなく、地域事業者へのDX推進を支援するなど、全国自治体でも初となるモデルケースを目指します。

また人材育成の一環として、各地域の教育委員会や教育機関と連携し、デジタル学習や宇陀市名所への校外学習も併せて実施する予定です。

宇陀市の魅力と今後の展望

山本 祐樹 政策監

宇陀市は奈良県の東部に位置しておりまして、春夏秋冬、四季の風が感じられる土地です。人口は2万7000人と小さな町ですが、薬草・日本刀発祥の地として知られ、歴史的な建造物「室生寺」についても自信を持って皆さんに宣伝させていただいております。今後は宇陀市の魅力をしっかりPRしながら、地域の活性化に繋げて参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

宇陀市公式ホームページ (city.uda.nara.jp)

山梨県大月市

「生成AIを活用した地域全体DX」支援

大月市では自治体内の業務のみならず、「教育」「観光」「生産現場」あらゆる分野においてAIを活用する「生成AIモデル自治体」を目指します。公民連携推進機構の会員企業から専門講師を派遣し、子供からシニア、大月市職員まで地域全体が生成AIを日本で一番活用する地域になるよう事業を推進する予定です。特に教育の面では、全国で14しか存在していない公立短大の1つでもある「大月短期大学」においてデジタル人材育成の推進を強化し、生徒数の増加ひいては地域の魅力発信へとつなげていきたいとしています。

大月市の魅力と今後の展望

小林 信保 市長

大月市は、富士山が見える日本一美しい街並みを誇っております。現在は登るほうの富士山、いわゆる富士登山が注目されていますが、大月市としては今後眺める富士山の魅力も広めていこうと考えています。市内から見える富士山はとても綺麗で、大月市はそこに生活が溶け込んでいるような感覚を味わえる街です。また、鬼退治を果たした桃太郎が富士山をバックに凱旋したといった桃太郎伝説や、それにまつわる名所や地名も各地に残っています。

都会からは1時間で到着するなど、山梨県の入り口、富士山の入り口としてのアクセスも良いので、ぜひお越しいただければと思います。

大月市/ホームページ (city.otsuki.yamanashi.jp)

栃木県益子町

「AIロボット授業実施による」公民教育連携

益子町では「会話AIロボットRomi」100台の導入を実現。今後はRomiを活用し、益子町の子どもたちにプログラミング等のデジタル教育の普及、探求心を育てる学習を推進していきます。また益子町の小学5、6年生を対象にプログラミング授業を開催し、その一環として、生徒自ら益子町の魅力や観光案内をプログラミングしたAIロボットを役場や公共施設で活用します。生徒の学習意欲の向上につなげる試みも進める予定です。

益子町の魅力と今後の展望

広田 茂十郎 町長

益子町は、江戸時代から始まり約200年の歴史を誇る益子焼で有名な町です。カフェが50件、パン屋さんや美味しいお蕎麦屋さん、有名なとんかつ屋さんも数多くあります。今後は飲食店も町の魅力として宣伝していき、また子育て世代に選ばれる町として教育にも力を入れていく予定です。Romiをプログラミング学習に活用し、いわゆる子供がわくわくするような教育の町になったらいいなと思っております。

益子焼に関しても窯業技術支援センターの卒業生を支援する制度を活用するなど、担い手不足やどのように地場産業を残していくかも今後の課題として取り組んでいきます。

益子町公式ホームページ (mashiko.lg.jp)

和歌山県那智勝浦町

「日本の水産業支援のため有名シェフとのコラボ支援」

役所のDX推進と、高齢化による次世代の担い手不足を解消する取り組みを、有名レストランとのコラボで実現していきます。今年度は、水揚げ量日本一として有名であり、一度も冷凍していない「生まぐろ」の普及啓発事業に向けてクラウドファンディングを実施。多くの有名レストランに那智勝浦の生まぐろを使ったメニューを活用してもらい、町の認知向上や生まぐろの販路拡大を推進します。公民連携推進機構の友好団体「ChefooDo(シェフード)」の会員シェフである「割烹みやなが」「新宿割烹中嶋」のほか、高級フレンチ・イタリアン・高級中華レストランにおいても、生まぐろをメニューに活用してもらうよう働きかける予定です。

那智勝浦町の魅力と今後の展望

堀 順一郎 町長

那智勝浦町は登録から20周年になる世界遺産や、多くの温泉がある町でもあります。近年ではロケット発射でも取り上げていただくことも多くなりました。世界遺産には多くの外国人に訪れていただき、熊野古道を歩く人の90%、熊野三山と那智大社でお見かけする人の50%が海外の方といったことも珍しくありません。スピリチュアルな点でも魅力があり、自然信仰と産業振興でPRを続けていきたいと考えております。

温泉もたくさんあり、冷凍されていない生まぐろも美味しいので、ぜひ見に来て味わってほしいと思います。

和歌山県那智勝浦町/ホームページ(town.nachikatsuura.wakayama.jp)

山梨県富士川町

「全国自治体初のAI案内ロボット」の本格導入支援

役場の窓口案内にAIロボットを本格導入する計画とともに、富士川町役場の全職員にDX研修を実施。少子高齢化の影響で生じる税収減少や、人材不足により、インフラ・公共サービスの提供は今後困難になると予測されます。その対策として、自治体職員の業務量増加の抑制・負担低減をDX化で実現させることを目指します。今年度はAIの本格導入にあたり、庁舎内におけるAIロボットの実証実験も行いました。今後は実験で得られたデータを活用し、町民に向けた利便性の高いサービスの計画を展開する予定です。

富士川町の魅力と今後の展望

望月 利樹 町長

富士川町では正月のダイヤモンド富士が見られる絶景スポットをはじめ、つり橋のある大柳川渓谷、桜名所百選に選ばれている2,000本の桜が咲き誇る大法師山、平林の棚田が町の魅力として挙げられます。ほかにも葛飾北斎の藍染絵で有名な甲州石班澤(こうしゅうかじかざわ)という浮世絵も富士川町が舞台です。今後はそれらの魅力を有効活用し、町全体の付加価値を高めていきたいと考えております。

山梨県 富士川町/ホームページ (town.fujikawa.yamanashi.jp)

那智勝浦町の生まぐろ試食会も実施

厳選されたキハダマグロ(41kg)

会見後には、前日に那智勝浦町で水揚げされた生まぐろを試食する機会にも恵まれました。見た目からもうかがえる新鮮な赤身、口に含んだときのもちもちとした弾力など、冷凍まぐろとは違った味わいを感じられます。生まぐろに興味のある方は、ぜひ一度堪能してみてはいかがでしょうか。

包括連携協定による地域創生への取り組みは始まったばかり

公民連携推進機構の八木下理事は「今回連携した5つの自治体をはじめ、各自治体との連携をこれからも取り組んでいきたい」と会見で述べています。まずは、1年間の事業モデルを先進事例として、5年かけて1000以上ある自治体とも徐々に提携を深めていきたいとのこと。

会見を通じて、あらためてどの自治体からも、現状抱えている問題を解決したいといった思いを強く感じました。自治体単体で取り組んだとしても、デジタル事業を浸透させることは難しいと感じているようです。今後は財政面での支援や、事業で得られる知見・経験の共有を行いながら、ほかの自治体とも地域創生事業を推進していくものとみられます。

「地方から日本を元気にしていく」

会見で自治体の代表が表明していたように、今回の協定が地域の発展につながることを期待します。

「公民連携モデル事業」記者発表会

開催日時令和6年8月5日(月)15:00~16:15
会場衆議院第二議員会館 第5会議室(B1F)
(東京都千代田区永田町2-1-2)
出席自治体奈良県宇陀市、山梨県大月市、栃木県益子町、和歌山県那智勝浦町、山梨県富士川町
出席法人会員企業(17社)株式会社 GMTS、株式会社 CI、アルファコム 株式会社、キラメックス 株式会社、日本コムシンク 株式会社、REDEE 株式会社、株式会社 アローリンク、テクノブレイブ 株式会社、株式会社 エンジン、株式会社 meleap、クロスボーダー 株式会社、株式会社 DPLUS、タイガーモブ 株式会社、有限会社 エム・エヌ・ディ、株式会社 MIXI、株式会社 DFA Robotics、株式会社 COCOCA

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この記事を書いた人

成海 眞

埼玉県在住のライターです。地域や人が持つ魅力を届けたくライター活動を始めました。想いを言葉で発信したい方のお手伝いができればと思っています。趣味はコーヒー・神社仏閣・お城巡り・ドライブ・ゴルフ。家では家事全般を担当しております。

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