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もの・こと  |    2024.09.03

木のある暮らし。「はしらベンチ」でつながる人と街|埼玉県飯能市 西川バウム合同会社

人々が集まる場所に置かれているベンチ。飯能市を中心に、いろいろな場所で見かけるようになった木製の「はしらベンチ」は、木を活かした持続可能な取り組みとして、市内外から注目を集めています。

今回は、考案者である西川バウム合同会社の浅見有二さんにお話を伺いました。

浅見 有二(あさみ ゆうじ)

実家の製材業を継いだ後、プレカット(建築材の加工)事業を行う会社で営業と西川材利用開発研究会の担当を長年務める。定年退職を機に、現在の西川バウム合同会社を設立。西川材を使った家具の製品開発のほか、持続可能な木の活かし方や木のことを伝える活動も積極的に行っている。

強度と素材の良さが魅力の「西川材」とは

「はしらベンチ」の材料として使われているのは、飯能市のブランド材「西川材」。

色艶が良く、強度も高いことから、優良木材として首都圏でも使われています。

日本には、地名から名付けられた木材ブランドがいくつもありますが、「西川材」の名前の由来は全く別のもの。埼玉県に西川という地名は無く、飯能市・日高市・毛呂山町・越生町にまたがる林業地の樹木を総称して「西川材」といいます。

江戸時代、伐り出された材木は、筏に組まれ川を下って江戸まで運ばれていたそうです。江戸から見て「西の川から来る材木」ということが、名前の由来となっています。

「はしらベンチ」のはじまり

実家が製材業を営んでおり、幼いころから木に触れて育った浅見さん。「この大量にある木材をもっと活かせる方法はないのか」と、自然と考えるようになります。

「良い製品を大量に安く作ることよりも、木のことを知ってもらい、良さを理解してもらうことの方が大事なんじゃないか。木についてあまり知られていないことが、一番の課題と感じていた」と、浅見さんは振り返ります。

そして、とある製材所にあった乾燥中のはしら材(建物の構造材)を、そのままベンチとして使うことを思い付きます。

写真提供:西川バウム合同会社(製材所でつくられたはしらベンチ第一号)

ベンチを置くことで、通りかかった人は足を止め、人が集まり、交流が生まれる。そこから少しでも「木のことを知る」きっかけに繋がれば嬉しい。

こうした想いから「はしらベンチ」が生まれました。

今では飯能市内に100箇所ほど、飯能市外でも300箇所ほど設置されているそうです。

市内外でひろがりを見せている「はしらベンチ」。西川材の生木をベンチとして“使いながら乾かす”オリジナルの取り組みは、その利用方法にも秘密がありました。

半年に一度交換!レンタル方式で持続可能な木の活かし方

この「はしらベンチ」は、黒い部分も含めてすべて木製。金具や防腐剤は一切使われておらず、組み立て式のデザイン性と木の柔らかな手触りが好評です。

木の本質を伝えるために「はしら材」を利用したことが始まりだったこの取り組みも、今では間伐材という山が抱える問題解決へと目を向けています。

「木は自然のものだから腐っていくのは当然。五年持つように手間を加えるより、交換しやすく、その際の費用がかからないことを前提に、自然のサイクルに合う仕組みを作ることが大切」と浅見さんは話します。

そのため「はしらベンチ」は、販売ではなく月額のレンタル制。半年に一度新しい木に交換することで、木の香りと手触りを継続して楽しめるベンチです。

そして、交換用に使うのは伐り捨てられた間伐材。コストの問題から山に放置されている間伐材を使い、山から出すというサイクルを作ることで、新しい木々の成長を促し、山が育っていく。「はしらベンチ」は、木を活かした持続可能な取り組みへと繋がっています。

写真提供:西川バウム合同会社

古くなったものは二次利用へ!ひろがる可能性

交換された古い木は、削りなおして二次利用されます。もともと二次利用を前提に、防腐剤などの塗装を行っていないことから、ウッドデッキ、塀、子供用の木のおもちゃ、生活用の小物雑貨など様々なものに形を変えて生まれ変わります。

写真提供:西川バウム合同会社(ウッドデッキへ二次利用)

最近では、都内で開催された「木と生きる」をテーマにしたイベントで、アート作品の一部としても活用されていました。

写真提供:西川バウム合同会社(二次利用によってチップ状に加工された西川材)

「西川材」という名前の由来通り、飯能市を超えてどれだけ多くの方に届けられるかも大事だと話す浅見さん。建物の構造材という従来の使い方だけに縛られず、暮らしを豊かにする素材として、日頃から「木」と向き合っています。

自然のサイクルを上手く取り入れた「はしらベンチ」と、その二次利用の可能性は、この先もまだまだ広がっていきそうです。

木を知り、暮らしのなかに取り入れる

日本国内には有数のブランド材が存在していますが、うまく使われず、循環できていないという課題があります。こうした課題を打開するには、まず「木を知る」ことにヒントがありそうです。

木を暮らしのなかに取り入れるのは、小さいころから木に触れている経験が意外と大事かもしれません。便利にあふれ、なんでも形を成す現代だからこそ、無垢なものの良さを、そのままの価値を、知りたいと思える気がしています。

西川バウム合同会社では、木で何かしたいというご相談にも対応されています。市内外から多く寄せられる声に耳を傾け、カタチを作るためのコーディネートも増えているそうです。

木製のアイテムがひとつあるだけでも、暮らしの質がぐっと高まります。身の回りで使うものから、まずは木を取り入れてみませんか。

西川バウム合同会社

住所:埼玉県飯能市白子157-1

電話:042-980-7745

HP:https://www.nishikawa-baum.jp/

Facebook:https://www.facebook.com/nishikawa.baum

Instagram:https://www.instagram.com/nishikawabaum/

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この記事を書いた人

ハネジユキエ

沖縄出身、埼玉在住のフリーライター。30代、二児の母。ものづくり、伝統芸能、暮らしを豊かにするモノ、地域を元気にするヒト、大人からこどもまで楽しめるコトを取材しています。

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