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もの・こと  |    2024.09.17

持続可能な農業を次世代に!福井市の山間部で有機米づくりに取り組む内田農園

その昔、牛に乗った神様が戦いの最中にきゅうりの蔓に引っかかって転び負けたことから、きゅうりをつくることが禁止されたという不思議な伝承が残る、福井県福井市神当部町。

令和になった今でも、暗黙の了解できゅうりをつくる家はありません。どこの畑にもなす・トマト・ピーマンなどの夏野菜がたくさん実っているのに、きゅうりだけは見当たりません。

そんな古い慣習の残る土地で、IT技術を使った草取りロボットなどを活用して有機栽培に取り組み、インターネットを通じて日本各地にお米を販売している米農家、内田農園代表の内田一朗(うちだかずお)さんを取材しました。

日本の食料事情と農業、地域の未来に危機感

取材したのは都市部のスーパーから米が姿を消し、メディアやSNSなどで米不足が叫ばれていた2024年夏。「スーパーにはお米がないのに、内田さんに注文したらすぐに送ってくれて助かる」と、内田農園は常連の顧客から喜ばれていました。

日本の食料自給率(カロリーベース)は38%。消費量が減少しているとはいえ、日本人の主食である米をつくる米農家は、日本人の生命を支えるエッセンシャルワーカーです。

ところが、ふだん農業を仕事として自営農業に従事する基幹的農業従事者は2000年からの20年余りで半減し、年々減少率も増加しています。さらに、2023年時点でその58.7%を占めるのが70歳以上

内田農園のある神当町とその周辺集落を含む上味見地区でも、米をつくっているのはほとんどが75歳以上で、あと数年もしたら、今ある田んぼの多くが耕作放棄地に姿を変えてしまうかもしれないという状況です。

農林水産省 経営局:農業経営をめぐる情勢について

米づくりを次世代に引き継ぐ準備は万端

そこで、内田農園を含む地域内の4軒の農家が2020年に立ち上げたのが、農事組合法人上味見みらいファーム。

「トラクターとコンバインと田植え機で、そこそこのものをそろえると大体1000万円くらいかかる」という新規就農の壁を取り払って、少しでも農業をやってみたい人、田んぼを引き継いでくれる人に来てもらいやすくするために始めた農業法人です。

最初から負担の大きい農業機械の購入をしなくても、農業を始められる仕組みを整えました。

さらに、安定した販売先もあります。日本の社会課題解決のための活動を行う、中小企業の経営者団体との契約栽培を数年前から始めました。

内田農園が取り組む有機栽培や、ピロールという海洋由来の有機物を使った米づくりに興味を持ち、わざわざ東京から見に来てくれ、お米の味や品質にも満足して買い支えてくれています

また、内田農園では福井の有名酒造会社である常山酒造の酒米もつくっています。最初は上味見地区の米を使った地酒をつくろうという話から縁ができ、ヨーロッパの品評会で賞を取ったことから酒米の注文も増えたのだそうです。

個人客も、2006年ごろにつくった農園のホームページから少しずつ増えてきています。時には「暑い中草刈り大変ですね」と清涼飲料水やバウムクーヘンが送られてきたことも。

そうやって人との縁がつながり輪が広がっていくのが、農家をやっていて一番喜びを感じることだと内田さんは語っています。

有機の田んぼを広げてコウノトリが飛来する里山に

「常山酒造さんとは酒づくりで出た酒粕をもらって有機肥料づくりも一緒にやってます。酒粕を米ぬかと鶏糞と混ぜてね。酒粕で育てた酒米からまた酒と酒粕ができるっていう、資源の循環です」

1月ごろに有機肥料づくりを始め、2〜3ヶ月発酵させて、田植えの少し前に元肥としてまき、稲が少し生長した5〜6月にも追肥としてもう一度まくそうです。

「酒粕に残った酵母が発酵して独特の発酵臭が漂うんで、その時期は近くを通る子どもたちが鼻を押さえながら通るんですよ」と内田さんは笑います。

また、有機農業の最大の課題ともいえるのが草取り。今年、福井市のIT企業が開発した草取りロボットの実証実験に協力し、草取りの労力も軽減したそうです。

いずれは有機の田んぼをもっと広げたいというのが今の目標。また、米づくりは食料の生産だけでなく、水田が広がる日本の原風景を残したいという気持ちに突き動かされているような部分もあるそう。

「収穫が近づいて黄金色に実った稲穂が一面に広がる景色は本当にきれいで、そういう田舎の景色をつくっているのも米づくり。(福井県の)鯖江で有機農業をやっている知り合いの田んぼに、最近コウノトリが来たと聞いたこともあり、有機の田んぼを広げてコウノトリがやってくるような里山になったらうれしい」と語りました。

農業体験の受け入れも

内田農園では農家民宿も営み、農業体験希望の方の受け入れも行っています。

「まずは体験してみたいという方には、ぜひ2泊ほど泊まって作業を体験してほしいですね」とのこと。農作業を手伝ってくれる方は、宿泊費・食費無料で受け入れ可能だということです。

興味のある方は、内田農園までお問い合わせください。

問い合わせ先
  • TEL:0776-93-2052
  • メール:ajimimai@mx6.fctv.ne.jp

農家民宿 内田農園ホームページ

内田農園のお米の購入はこちら

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この記事を書いた人

サカイミハル

福井県在住。大阪と東京で住宅関係、健康・美容関係の会社の広報を10年以上。 Uターンで田舎の里山暮らしをしながら、健康・美容関連のコラム記事やSNS記事の執筆、会報誌の編集などに携わっているほか、サプリメントや化粧品などのプレスリリース作成、企業ブランディングのためのインタビュー記事の執筆も承っています。 Mediallでは、発信力を持たないがゆえにあまり知られていないけれど、こだわりや想いの詰まったおいしいもの・品質の良いもの・おもしろいことと、それに関わる人の魅力をお伝えします。

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