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もの・こと  |    2024.09.09

知的障がい者ソフトボールチーム「いわてスマイリーズ」|活動の輪を広げたい

2024年9月15日(日)・16日(月・祝)の2日間にわたり、知的障がい者ソフトボール大会「ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会」が行われます。

日本知的障がい者ソフトボール連盟(JSBFID)主催、ハンズホールディングス株式会社の全面支援のもと、宮城県内の球場で開催されます。

  • 9月15日(日):シェルコムせんだい
  • 9月16日(月・祝):楽天イーグルス利府球場
    ※2020東京五輪ソフトボール金メダリストの山田恵里選手も来場予定!

ハンズホールディングスCUPは、選手たちにより多くの活躍の場を創出するとともに「知的障がい者ソフトボール大会の認知度向上」「知的障がい者スポーツの魅力普及」を目標とした大会です。

本大会に出場する8チームから、岩手県代表「いわてスマイリーズ」を取材してきました。

大会にかける熱い心を表現したように、鮮やかな赤のユニフォームを身に纏った選手たち。取材を行った8月25日(日)当日は15名の選手が参加し、ジリジリとした夏の暑さのもとで練習に勤しんでいました。

いわてスマイリーズの取材を通じて感じた現地での熱気、大会にかける「思い」をお届けいたします。

岩手県で活動する “ いわてスマイリーズ ”

岩手県の代表チームである、いわてスマイリーズ。男女混合チームとなっており、現在は高校生から社会人までの約20名が所属しています。

シドニー・アテネオリンピックのメダリストであるソフトボール選手の髙山樹里さんを招いて行った交流事業がきっかけとなり、岩手県に知的障がい者ソフトボールチームがないこと、2016年にいわて国体(現:国スポ)が開催されることを受け、2012年にチームを発足しました。

2013年から全障スポ(全国障害者スポーツ大会)の北海道・東北ブロック予選に参加し、2023年・2024年にはブロック予選優勝を飾り2連覇を果たしています。

監督をはじめ、チーム発足時から活動している選手は3名ほど。平日は会社や就労施設、学校といった場で活動しつつ、毎週日曜日は練習に参加している選手がほとんどです。

3年前からは「いわてスマイリーズkids」も立ち上がりました。いわてスマイリーズの選手たちは、ソフトボールをしたいという思いだけでなく選手たちに憧れをもった12歳以下のkidsと共に、月1回の合同練習を行っています。

お伺いした当日、練習開始時間の前から自主練を行っている選手たちが目に入りました。取材開始前にして、ソフトボールへの情熱をヒシヒシと感じます。

圧倒されるほどの声出しとあたたかな空気

野球歴の長い羽藤(はとう)監督ご本人がメニューを組み、ランニングからキャッチボールを含むアップ、バッティング・外野ノックなど、練習は次々に進みます。サッカーやフライングディスクといった特別メニューも取り入れ、さまざまな動きを用いてソフトボールへ応用しているそう。

当日の特別メニューは、なんとしっぽ取りゲーム。サイドステップの動きや観察力・瞬発力を鍛えるメニューとなっていました。選手たちは一心不乱に仲間たちのしっぽを追いかけます。こんなに真剣で白熱したしっぽ取りゲームを見たのは、初めてでした。

練習を拝見している中で何よりも感じたのが、仲間への大きな声かけです。「いけるよ!」「ナイス!」と活気ある声で、グラウンドは溢れかえっていました。監督も、大事にしている部分だと言います。

しかし、今でこそこちらが圧倒されてしまうような声出しが当たり前になっているものの、以前はなかなか声が出せなかったそう。声出しが得意な選手がチームに入ったり、kidsとの練習で「先輩である自分たちが声をかけていこう!」という空気になったりしたのがきっかけで、活気ある声出しが根付きました。

チームの活動目的に込められた思いと活動の輪

いわてスマイリーズ発足当初の活動目的は、全国にあるソフトボールチームとの練習・試合でコミュニケーション能力を向上させることや、仲間と協力し活動する楽しさを味わうことといった側面が大きかったと言います。

現在では、全国大会に出場できるほどのチームとなり、勝つために練習に励んでいる選手も多くなっているそう。「大会で勝利をおさめ、自分たちの頑張りを皆さまに見ていただきたい」と、羽藤監督はおっしゃいます。

しかし、純粋な勝利だけが目的ではありません。

「保護者さんや地域の方など、いわてスマイリーズに携わってくださっているすべての方に、感謝を伝えたいです。もちろん、言葉で『ありがとうございます』というのも大切なのですが、やはり結果という形で伝えるというのは、選手にとっても大きなやりがいになると感じます。そのうえで、活動の輪を広げていきたいと思っています」と、続けてお話ししてくださいました。

現に3年前からはいわてスマイリーズkidsが誕生し、チームを通じて知的障がい者ソフトボールの輪が広がっています。

kidsと練習会をするようになってから、選手たちは「子どもたちの見本になる存在だ」という実感を得ており、とてもよい刺激になっているそうです。

さらに、活動するkidsメンバーご姉弟のお姉さまは「将来的にいわてスマイリーズを支えていきたい」と考え、高校一年生である現在もマネージャーのような立場として活動されていらっしゃるなど、いわてスマイリーズを中心に障がい者スポーツの輪は着々と広がっています。

選手たちの真剣な眼差しと楽しそうな表情

練習中、ふたりの選手にお話を伺いました。チームのキャプテンであるミサキさんと、普段は特別支援学校の教員として働く羽藤監督の、元教え子であるミナキさんです。

3年ほど前からキャプテンとしてチームを牽引しているミサキさん。ソフトボールと野球のチームをいくつも掛け持ちして活動している、根っからのスポーツマンです。

チーム全体として大切にしている「声出し」の基盤を作るために「基礎トレーニング」を最も大事にしていると語ってくださいました。

「チームの性格上、声出しってすごく難しい部分で。どう声を出すのが正しいのか、どう頑張ればよいのかには、正解がありません。選手たちは、迷ってしまう。だからこそ、筋トレやランニングなどといった基礎トレーニングが大切なんです」

お話ししてくださっているとき、バッティング練習中の選手が清々しいヒットでボールを遠くに飛ばしました。その瞬間、ほかの選手たちや見守っていた保護者の方々・kidsたちから「わー!ナイス!」「すごーーーい!!!」と、大きな歓声が上がります。

「例えば今みたいに、飛んだらすごく盛り上がるじゃないですか。声を出させるというよりは“自然と出す”ための技術を身につけてほしいなという思いがあって、基礎的な部分を大事にしています」と、続けてくださいました。

監督の元教え子であるミナキさんは、元々ソフトボールや野球の経験はなかったそう。

「監督からオファーを受けて、チームに入りました。練習中の仲間との触れ合いが楽しいです。声出しを大切にして、練習しています」と、お話ししてくださいました。

「いわてスマイリーズは、まだまだ上を目指せる」──今大会にかける思い

監督やインタビューしたミナキさん、練習に参加していた選手からは「勝ち上がりたい」「優勝したい」という声が多く聞こえてきました。

そんな中、キャプテンのミサキさんからは、少し意外な言葉が。

「個人的には、メダルが取れればいいと思っています。というのも、いわてスマイリーズはまだまだやれると思っていて。先ほどボールを飛ばした選手のように、あれだけのパワーを持っている選手がたくさんいるチームです。今よりももっとまとまりが出たら、上を目指せるチームになる。まだ頑張れるところがたくさんあるという思いから、優勝ではなく“メダル”という目標を僕自身は掲げています」と語ってくださいました。

まだできる、活躍の場は広がるというキャプテンの力強い眼差しは、チームを引っ張る大きなチカラになっています。

知的障がい者ソフトボールを世の中に広めていきたい

知的障がい者ソフトボールを通じて、たくさんのやりがいとよい刺激を受けている選手たち。

「ソフトボールに限らずですが、団体競技はひとりでできることが限られます。投げて打つ人がいれば、守る人もいる。打球が飛んできたら、仲間同士で声を掛け合う。こうして年齢や性別もさまざまなチームの中で、人とのコミュニケーションを楽しんでもらえればと思っています」と、監督はお話ししてくださいました。

さらに、選手たちの人生においてどのような機会の場になってほしいかという側面では、このようなお話も。

「ソフトボールの試合に出るのは9人ですが、ベンチワークも大切です。誰かが打ったあとバットを引く、ボールを渡す、声を出すなど、それぞれに役割があります。役割に対してどう動くか、どのような気持ちで行動するかという体感を、普段の職場や学校などでも発揮していってほしいなと思っています」

知的障がい者ソフトボールのこれからについても、監督に思いをお伺いしました。

「いわてスマイリーズとしては、現役選手に全力で取り組み続けてもらうだけでなく、次世代となるkidsたちにつなげる動きをしていきたいと思っています。知的障がい者ソフトボール全体としては、活躍・活動の場が維持できるよう『障がい者スポーツ』を広めていきたいですね。

というのも、知的障がい者ソフトボールは、大きな大会がほとんどありません。大きな大会としては、毎年行われる『全障スポ(全国障害者スポーツ大会)』が挙げられますが、1年の中で全障スポが終了してしまうと、選手の活躍の場がなくなってしまいます。

活躍の場が少ない中で競技へのモチベーションを保ち続けるのは、容易ではありません。大きな大会をより多く開催するためにも、知的障がい者ソフトボールを世の中に広めていきたい、支援の輪を広げていきたい、そのように考えています」

【クラファン終了は9月14日!】「ハンズホールディングスCUP 2024 東日本大会」はクラウドファンディングを実施中です。

日本知的障がい者ソフトボール連盟は、ハンズホールディングスCUP 2024 東日本大会の成功と知的障がい者ソフトボールの認知拡大に向けて、クラウドファンディングを行っています。

2024年はパリオリンピックもあったことからパラスポーツが一層注目を集めていますが、知的障がい者スポーツは、まだ世の中への認知拡大が進んでいない状況です。大会を開催するための支援の輪も、十分だとは言えません。

大会が行われることは、選手たちのやりがいや活動に対する希望を維持する貴重な機会となっています。皆さまのご支援で、知的障がい者スポーツの明るい未来が切り開けます。

プロジェクトの期間は2024年8月19日~9月14日で、支援は1,000円から行えます。CAMPFIREの会員登録は無料です!

「ハンズホールディングスCUP 2024 東日本大会」とクラウドファンディングを成功させ、次なる大きな大会へと未来をつなげられるように。

本記事でご紹介した「いわてスマイリーズ」の皆さまを初め、知的障がい者ソフトボールにかかわるチームの皆さまが活動し続けられるように。ぜひ皆さまのご支援をよろしくお願いいたします!

希望のバットを振れ!知的障がい者ソフトボール東日本大会を応援してください!

【いわてスマイリーズ】

いわてスマイリーズの活動情報や、選手・サポートスタッフへの応募はこちらから!

公式サイト:いわてスマイリーズ|岩手県知的障がい者ソフトボールチーム
Instagram:いわてスマイリーズ【公式】

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ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会

「ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会」は、共生社会の形成と知的障がい者スポーツの活性化を目指す大会です。日本知的障がい者ソフトボール連盟主催のもと、ハンズホールディングスグループが主管し、8つの企業・団体の協賛を得て開催されます。東日本各都道府県から7チーム約140名の選手が参加し、熱戦を繰り広げます。障がい者スポーツの普及と理解促進に貢献する重要な大会となります。 なお、本大会のクラウドファンディング「希望のバットを振れ!知的障がい者ソフトボール東日本大会を応援してください!」を実施しております。皆様のご支援をお待ちしております。

この記事を書いた人

岩渕ゆり

埼玉県出身・岩手県在住。地方移住したフリーライター “ぶち” です。男の子2人のお母ちゃんでもあります。主に岩手・宮城の情報を発信予定。自然やカフェ・美術館・温泉・神社仏閣・美しいもの、お茶とポン酢が好き。人の心にそっと触れるような……はちみつ入りのホットミルクのように、ほわっと温かい気持ちになれる記事を目指しています。

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