知的障がい者のソフトボール大会「ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会」が、2024年9月15日(日)と16日(月・祝)に宮城県の楽天イーグルス利府球場ほか宮城県内で開催されます。
東日本から8チームが参加し、熱戦を繰り広げる本大会。今回は千葉県代表にお話を聞きました。
国体のチャンピオンチーム
千葉県代表は16歳から32歳までの若いメンバーで構成されているチームです。毎週日曜日に千葉県成田市滑川文化保存展示施設グラウンドで行われている練習には、23名が参加。監督の森川智庸さんをはじめ、コーチの淺野享さんと岩館祐治さん、スタッフの山形朝雄さん、協会理事長の新直臣さんが選手たちを指導しています。
千葉県代表は2023年10月に行われた特別全国障害者スポーツ大会(国体)で優勝したチャンピオンチーム。また2024年5月に行われた第23回全国障害者スポーツ大会ソフトボール競技関東ブロック予選会(関東大会)では準優勝を果たした強豪です。選手たちは山形さんが施設長を務める特別養護学校からスカウトされ、社会人になったいまでもソフトボールに励んでいます。
「練習の熱量はどこにも負けない」と、自負した山形さん。選手たちは電車やバスを乗り継いでグラウンドに集合しますが、1番早い選手は朝7時半にグラウンドに来て自主練習を開始するそうです。
「自主練習をしなければトップの選手になれないと分かっているんです。キツイ練習でも自主的に参加してくれる姿に感心しています」
夏場は13時ごろに終わる練習も、これからの季節は16時ごろに戻ります。それでも選手たちはタイヤ引きやノック練習などで技術向上に努めています。
勝利のカギはヒットを打たないこと?
国体優勝という見事な成績を納めた千葉県代表。山形さんはその要因について語りました。
「障がい者ソフトボールの世界では岡山県や愛媛県が強くて、私たちも苦しんできました。だからこそ、そこを超えるための試行錯誤を繰り返していたんです」
近年ではレベルも上がっている障がい者ソフトボール。全国レベルのピッチャーは、体感速度で時速130〜140kmにも感じるボールを投げてきます。またライズボールをはじめとした速いボールが飛んでくるので、当てることさえ難しい。
実際、優勝までの3年間はずっと1回戦敗退が続いていました。どうすれば全国レベルのピッチャーたちと互角に渡り合えるか研究した千葉県代表が見つけた答えは、ヒットを打たないことでした。
山形さんは「バントの練習が突破口になりました。あとはとにかく守る。相手の攻撃に耐えて、耐えて、耐える。タイブレークに持ち込めばランナーが出てくるので、そこで送りバントに賭けました」とチームを誇ります。
千葉県代表の戦法は、とにかく守るソフトボール。もちろんヒットも打てますが、相手ピッチャーの高いレベルを考えたときにはバントが勝ち筋になると分析しました。あとはそれを徹底できるかどうかです。
勝つことを大事にしている理由
山形さんは「普段はみんなが大笑いするような練習をしています。ただ、勝つために必要なことを選手自身が分かっていますし、何よりも選手たちが勝ちたいと思っている。私たちのチームは勝つための意識が徹底しているから優勝できたんだと思います」と、勝つことに貪欲な選手たちを称賛しました。
「正直なところ、まだまだ障がい者ソフトボールの認知度は低い。いままでは選手たちが働いている企業を回って、試合や練習に行かせてあげてほしいとお願いしていたんです。でもいまは企業さま側から選手を送り出してくれます。優勝して認知度が上がったからこそ、会社としても応援してくれるようになりました」
優勝という経験が、ソフトボールに取り組む環境を充実させた側面があります。大会や練習試合に実費で行っているため、去年の優勝によって千葉県内の社会人健常者チームからも練習試合の申し込みが増えたといいます。いままでは他県の障がい者ソフトボールチームなどと試合をしていた千葉県代表にとって、県内で試合ができることは限られた予算の中で非常に助かることだと、山形さんはいいました。ハンズホールディングスCUPもその一助となっています。
「ハンズホールディングスCUPは招待なのでとても助かっています。自分たちの力だけでは宿泊やバスなどを含めた費用は30万円くらいになってしまう。その費用をご負担いただくことで、他県の強豪と試合できるのがどれだけありがたいことか」
選手たちはアスリートとして勝利を追求しています。ほとんどの選手は6万円から8万円をかけてグローブやバットなどの道具をオーダーします。特別な支援などがない選手たちにとって、決して簡単にできる出費ではありません。
今回のハンズホールディングスCUPはお金や経験など、さまざまな面でチームにとって大きい存在となっています。
関東大会のリベンジをしたい
山形さんはチームがハンズホールディングスCUPに向けて燃えていると明かします。理由は関東大会の決勝戦で敗れた栃木県知的ソフトボール部と試合ができるかもしれないからです。関東大会決勝では豪雨によって試合が中止となり、抽選の結果、栃木に優勝を受け渡しました。
「栃木に負けてしまって、気持ちが切れかけていたタイミングでした。そんな中でハンズホールディングスCUPで栃木と再戦できるかもしれないと知って、選手たちは燃えていますよ」と千葉県代表は意気込んでいます。
磨き続けた守りとバントを武器に、初戦はビッグドルフィンズ(福井県)と対戦する千葉県代表。その試合の勝者がオール宮城ソフトボールクラブか栃木県知的ソフトボール部のどちらかと試合をします。
山形さんは「選手たちがソフトボールと仕事を両立してくれているからこそ、このような大会にも参加できている。応援してくれている企業さまとご家族には感謝しかないですね」と口にしました。
狙うはもちろん優勝です。「多くの人に応援してもらっているので、勝ちたいですね」とハンズホールディングスCUPに向けて意気込みました。
大会まで残りわずか。千葉県選抜チームのボルテージは最高潮です。
クラウドファンディングのお知らせ
8月15日より支援スタート!「希望のバットを振れ」知的障がい者ソフトボール東日本大会を応援してください。日本知的障がい者ソフトボール連盟が立ち上げたクラウドファンディング「希望のバットを振れ!」は、知的障がい者スポーツの未来を切り拓く重要な一歩です。
9月に宮城県で開催される「ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会」は、選手たちに自己実現と希望をもたらす貴重な機会。この大会を通じて、知的障がい者スポーツの魅力を広く発信し、社会の理解と支援を促進することを目指しています。
このクラウドファンディングは、単なる大会運営支援にとどまりません。知的障がい者の余暇活動の充実、指導者への支援、そして将来的には西日本大会や全国大会の実現まで視野に入れた壮大なプロジェクトです。皆様のご支援が、知的障がい者スポーツの新たな章を開く力となります。このプロジェクトにご注目いただき、共に知的障がい者スポーツの未来を創造しませんか?あなたの支援が、選手たちの希望の光となるのです。