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もの・こと  |    2025.05.07

暮らしに寄り添うラタン工芸|創業55年の老舗 橋本籐工芸のこれから【後編】

創業から浦和の地で55年続く、橋本籐工芸。

その始まりのストーリーから、「ラタン工芸」の魅力についてご紹介した前編。

後編では引き続き、ラタン工芸の魅力とともに、橋本籐工芸の「未来」についてご紹介します。
暮らしの中で生きる工芸品、ラタン工芸の世界をじっくりご覧ください。

前編はこちら

暮らしの中で生きるラタン工芸|創業55年の老舗 橋本籐工芸の手仕事【前編】

大正生まれも現役!修理して受け継ぐラタン家具の魅力

橋本籐工芸のInstagramにある、籐製品の修理の様子を伝えるポスト。家にあるものを長く使い続けることができる、サステナブルな取り組みです。

「最近だと、大正時代の椅子を修理したことがあります。80年前のアンティークでしたが、素材は丈夫だったので、部分的な修理で再び使えるようになりました」

大正時代の椅子を直すことができるなんて!その事実に心から驚かされます。

「今作ると40万円くらいする椅子も、部分修理ならそんなにかからずに直せる。良い素材で作ると、壊れても直せるんです」

良い素材 × 熟練の技がつくるラタン家具の命

橋本籐工芸で使用するラタン素材は、インドネシア製の籐。ねばりのある良い素材を使用することは、籐製品の耐久性にもつながります。

「大量生産されたものですと、原材料も異なるものになります。すると、すぐに籐が折れてしまうことも。籐製品が壊れやすいのではなく、素材によって耐久性が異なるんです」

「籐は竹などと違い、中身が詰まっているから細くても曲げることのできる強さとしなやかさを持っています。昔、家庭でよく使われていた布団たたきも籐製品のひとつ。多くの人が竹で作られていると思っていますが、実はあれも籐製品の代表なんですよ」

確かに、竹は中身が空洞。中身までしっかり詰まっている細くても力強い籐だからこそ、耐久性が生まれるのですね。

ベッドなど、大きな家具にも使用されている籐。いい素材を使用するだけでなく、確かな技術を持つ橋本籐工芸だからこそ、実現する家具づくりなのです。

“買い替え”から“受け継ぐ”へ|ラタン家具が教えてくれる価値観

「8000円で買った椅子でも、修理すると2万円かかる。購入時の金額と比較して、二の足を踏む人もいるんですよね」

そう話す幸昌さん。確かに、修理にかかるコストだけを考えると高いと感じる人がいるのかもしれません。

「思い出のある大切な家具を修理して使う人もいます。その人それぞれの物への愛着や思い入れが、長く使い続けることを選択させるのでしょうね」

ひとつのものを大事に使い続けるという価値の大切さに気付かされます。

ここ数年、修理を依頼する人が増えてきているのだそうです。熟練の技を持つ職人が、大切に使い続けられてきた家具を修理して、再び命を吹き込む。

その営みはとても美しいです。

橋本籐工芸が伝えるラタンの魅力|変化し続ける伝統のかたち

三代目は26歳|ラタンの未来を担う次世代への期待

「去年からうちの子どもが家業をやるって言ってくれて。今、26歳です」

幸昌さんと貴恵さんは、嬉しそうに話します。籐工芸の世界へ入ると、息子さんがご自身で決めたのだそう。頼もしいですね。

三代目は修業中。これからが楽しみですね。写真提供:橋本籐工芸

「一人で羽ばたくためにはまだまだ時間がかかりそうですが、頑張っているところです」

父である創業者から、幸昌さんへ。そして幸昌さんから三代目へ…。籐工芸のバトンを確かにつないでいるのです。

さらに広がるラタンの輪|ポップアップ出店とSNS発信の試み

ラタン家具や雑貨の良さを伝えたい。若い人にラタン家具の存在を知ってもらいたい。そのために数々の取り組みを行う橋本籐工芸。

百貨店での出店はこれまでも続けてきたこと。ポップアップ出店では実際に見て、触れてもらいラタンの良さを認識してもらうことが目的です。

実際に手に取ることで、ラタン家具や雑貨の良さを実感し、その場でお買い上げになる方もいるのだそう。

それに加えて、新しい取り組みも。

三代目が仲間入りし、若い世代の「新しい風」が入ってきたことで、変化にも柔軟に対応していく橋本籐工芸。

「最近、SNS投稿も頑張ろうと思っていて。習いに行ったり、動画も撮ってるんです。でも、どう編集していいかわからなくて(笑)子どもには『これ、誰が見るの?』なんて、言われたりしています」

そんなやりとりも、微笑ましい橋本親子です。

変わるもの、変わらないもの|橋本籐工芸のこれから

創業者である昭一さんから受け継いだものを大切にしつつ、これからの未来へ向けての挑戦も続けている橋本籐工芸。

これまでの取り組みだけでなく、新しい世代へ向けての発信にも挑戦していく。これまでの伝統と技術を継承しつつ、時代に合わせて変化していく柔軟な姿勢と取り組む姿がとても印象的でした。

変わらないのは、手仕事の確かな技術と使い心地の良さ。そして、暮らしに寄り添うためのかたちや届け方の柔軟な変化。

浦和の地でものづくりを続けながら、これからもたくさんの「心地良さ」を届けてくれる。そんな未来がとても楽しみです。

店舗情報


橋本籐工芸
住所:埼玉県さいたま市浦和区岸町4-26-1
電話:048-822-8422
営業時間:10:30~17:00 日曜日定休
公式サイト
Instagram

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この記事を書いた人

はる

さいたま市在住の取材ライター。地元民だからこそ知り得る、個人店やマルシェ等のイベントをこれまでに200ヶ所以上訪れる。地元民でも意外と知らない「ヒト・モノ・スポット」をお届けします。趣味は「ひとり呑み」「カフェ巡り」お酒とコーヒーが私をこよなく幸せにしてくれます。

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