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もの・こと  |    2024.11.18

清水・三保の老舗電気屋が「しずおか”お母さん”自慢フォトコンテスト」を開催|「今、ここにある幸せ」に気づくきっかけに

「忙しくて実家の母にしばらく連絡していないけれど、元気でやってるかな……」と思う方も多いのではないでしょうか。

静岡市清水区三保の電気店「あいむ三保」は、創業70周年の節目に第1回「しずおか”お母さん”自慢フォトコンテスト」を開催しました。主催者の根岸寿江さんは「授賞式は、思い描く”地域コミュニティー”の姿そのものだった」といいます。

自身もパワフルなお母さんである根岸寿江さんに「フォトコンテストが家族の大切さに気づくきっかけになること」について伺いました。

「あいむ三保」は地元によりそう町の電気屋さん

あいむ三保は、根岸寿江さんの祖父が70年前に電気工事店として創業しました。現在は、家電販売とそれに伴う電気工事を行い、お客さまの安全で快適な暮らしをサポートしています。ソニーのデジタル一眼ミラーレスカメラ「αシリーズ」を大きく取り扱っている県内唯一のお店でもあります。

寿江さんが、あいむ三保で働き始めたのは20年前。ITが注目されパソコンを使う人が増え始めたころに、パソコンの先生として店で働き始めます。

寿江さんは「実は、電気や機械がずっと苦手でした。親から家業を手伝うよういわれたこともありません。でも、地元に戻って店の仕事を覚え、パソコンのインストラクターとして働くうちに、地域の皆さまにどれだけ支えられているかを知りました。頼ってくださるお客さまに喜んでもらえるのがうれしくて、苦手を少しずつ克服してきました」と、いいます。

寿江さんは現在、店頭での販売やお困りごとのサポート、イベントの企画運営、販促活動などを担当しています。
寿江さんは現在、店頭での販売やお困りごとのサポート、イベントの企画運営、販促活動などを担当しています。 引用:あいむ三保

しかし、近隣に大手量販店が進出したことも影響し「ただお客さんを待つだけではダメだ」と寿江さんは危機感を抱きます。

そこで、誰でも気軽に立ち寄れるようなイベントを開催するようにしました。これが、年配の方や機械が苦手な方、多忙のため「家のちょっとした困りごとをまるごと任せたい」という方のニーズをつかみ、徐々に固定客が増えていったそうです。

2011年に店を建て替えた際には、初めて来店する方も入りやすいように2階にフリースペースを作り、発表会や即売会、ワークショップなどができる交流の場を設けました。

現在も、難しいと思われがちなデジタル家電の楽しさ・便利さを伝える体験イベントや、スマホ・PC教室、カメラのワークショップを開催。さらに、敬老の日のおもてなし会や毎週木曜日の卵販売など、お客さんのニーズに応えるイベントも開催して気軽に立ち寄れる工夫を続けているそうです。

「しずおか”お母さん”自慢フォトコンテスト」開催の道のり

あいむ三保がフォトコンテストを開催したのは2024年中旬。寿江さんは開催の理由を「創業70周年の節目に、地域の方々への恩返しになるイベントをしたかった」と語ります。

テーマは「お母さん」。数あるモチーフの中からお母さんを選んだ理由について、寿江さんは「景勝地がテーマだと技術を競うコンテストになりがち。もっと身近で、誰もが参加しやすいテーマにしたかったんです。皆さんがどんな”お母さん”を撮ってくるのか楽しみでしたね」と、期待に胸を膨らませながら決定したといいます。

ところが、募集開始直後はなかなか作品が集まらず、失敗が頭をよぎったという寿江さん。お客さんからは「テーマが難しかったのでは」という声がある一方で「本気で賞を狙う人は最後に応募する」という話もあり、落ち着かない日々を過ごしたそうです。

大きな動きがあったのは、締め切り直前の3日前。予想の声は的中し、ラスト3日間で応募が集中したといいます。最終的に集まった応募はなんと200点に迫るほど。これだけの応募が集まったことに、寿江さんは「胸をなで下ろしました」と安心したそうです。

笑顔あふれる授賞式に寿江さん「思い描いていた”地域コミュニティー”の姿でした」

授賞式には、授賞者本人だけでなくその家族も招待しました。小さなお子さんからご年配の方が一同に会した笑顔あふれる時間は「こんなフォトコンテストがしたいな、と思い描いていた”地域コミュニティー”の姿そのものでした」と寿江さんはいいます。

選考では、応募者が写真に添えた「思い出エピソード」をつい読み込んでしまい、寿江さんは「笑ったりホロッとしたりして大変苦労した」そうです。

最優秀賞を受賞したのは「もうすぐ会えるね」という作品。河津桜の下で、お腹の赤ちゃんに話しかける男の子と微笑むお母さんが映っています。柔らかいお母さんの表情と、桜のピンクが温かな雰囲気の一枚です。

最優秀あいむ賞 作品名「もうすぐ会えるね」
最優秀あいむ賞 作品名「もうすぐ会えるね」 引用:あいむ三保

寿江さんの印象に残ったのは、30代の息子さんが撮影した「富士山と母とねこ」という作品です。「副題の”母はねこが苦手です”というコメントに思わずほっこりしました。ねこ嫌いなお母さんだけど、息子さんに撮ってもらえることがうれしくて、すてきな笑顔を見せてくれたんだろうなと思いました」と寿江さんはいいます。

優秀賞 作品名「富士山と母とねこ」
優秀賞 作品名「富士山と母とねこ」 引用:あいむ三保

フォトコンテストには、お母さんだけでなく家族、動物、風景などいろいろなお母さんをイメージする写真が集まり、寿江さんは大変感動したそうです。

今回のフォトコンテストを通して、寿江さん自身がお母さんとの関係を「母は、いつでも笑顔でエネルギッシュにあいむ三保を照らす存在です。お店が明るく楽しい場所になるように、これからも一緒にがんばりたいと改めて思いました」と振り返ります。

フォトコンテストが「今、ここにある幸せ」に気づくきっかけになれば嬉しい

2025年に開催する第2回目のフォトコンテストのテーマは「お父さん」です。このテーマに決めた理由を、寿江さんは「安直にではなく、熟考を重ねたうえで『おとうさん』にしました」といいます。

第1回の「お母さん」のときと、応募作品の雰囲気が変わると予想されます。「お父さん」がテーマだと自撮りするお父さん、自称お父さん、職人のお父さん、お父さんらしい物とか風景・動物……撮る人によって個性が出そうです。

改めて、あいむ三保がフォトコンテストを主催することについて、寿江さんはこう話しました。「地元の写真を応募するフォトコンテストは、誰でも参加しやすい気軽さがあります。一方で、何を撮るのか決めるときに、自分や家族について考える必要があります。しばらく話していなかったお父さんに電話したり、会いに行くかもしれませんし、夫婦の会話がひとつ増えるかもしれません」

「フォトコンテストが、家族や大事な人たちと関わることで『今、ここにある幸せ』を感じるきっかけになることや、みんなの笑顔の輪を広げるツールになって、今日を笑顔で過ごせてもらえたら嬉しいです」と、寿江さんはお話を締めくくってくださいました。

店舗情報

あいむ三保
〒424-0901
静岡県静岡市清水区三保3527-4
Tel 054-334-0547
営業時間 9:30~19:00
定休日 毎週水曜・不定期月1回土日

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この記事を書いた人

吉川しおり

静岡県静岡市のフリーランスライター│人と自然の魅力をお伝えします。

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