漢方ってあやしい。そんなイメージを抱く方も多いのではないでしょうか。
ドラッグストアや病院の処方で手に入りやすくなり身近になってきたものの、値段が高い、長く飲み続けなければ効かない、などの印象があるという声を聞きます。
ネガティブな印象を変えたい、もっと身近な選択肢として漢方を取り入れてほしい思いから、2024年9月に漢方相談薬局「藤花堂」をオープンしました。
店主の藤原綾子さんは「よくないイメージがあるのも仕方ない」と言います。
「私が漢方をよく知らない人だったら、効かないものや高いものを買わされるんじゃないかと心配になると思います。当店は、お客さまが自覚している症状だけをみるのではなく、体質やお話しているときの表情、脈拍や舌の状態など様々な情報をもとに処方を考えます。オーダーメイドなので不要な薬は出しません。身構えずに安心して来ていただけたらと思います」
藤原さんは、中学生の頃から薬局を開くと決めていたそうです。その決意が揺らぐことはなかったと言います。いったいなぜ、ひとつの目標に向かって突き進んでこれたのでしょうか。
自身の経験から感じた漢方のちから
漢方との出会いは小学校4年生のとき。視力回復のために服用していた漢方で、身長が急に伸びたことをきっかけに興味を持ち始めたそうです。
「『視力はよくならないかもしれないが、身長は伸びると思う』と最初に言われていました。疑いながらも服用を始め、結果的に視力は回復せず2年でやめてしまいましたが、急に身長が伸びたんですよね。家族はみな低身長なので漢方のおかげだと感じ、この理由を知りたいと強く思いました。そして、漢方のちからを活かした仕事をしたいと思い始めたのもこの頃です」
実際には本来の悩みである視力低下に効果がなかった。それでも漢方に興味を持ち続けられたのは、他にも理由がありました。
周りには、健康に過ごしていたのに突然入院する人や、若くして大病にかかった友人がいたそうです。自分にもなにかできないかと考えるようになり、漢方を学ぶうちに予防やリスク回避する方法があるとわかり始めます。そして、体調に悩みをもつ人の手助けができるのではないかと、思いが強くなっていきました。
漢方を活かすために異なる分野も学ぶ
大学は薬学部に進み、大学外の勉強会にも精力的に参加。そこでもらったアドバイスにより、卒業後は調剤薬局に就職しました。
「さまざまな先生からお話を聞くなかで『企業での社会人経験も大事だし、多くの人は西洋薬を服用しているので、西洋医学も学んだほうがいい』とアドバイスをいただきました。私は単純なので(笑)、言われたとおり調剤薬局に就職し、5年勤めました。
薬局での業務もすごくやりがいがありましたが、西洋医学と東洋医学を合わせて治療すればもっと効果的なのではないかと感じるようになりました。
例えばどこか痛むとき、西洋医学では痛みをすぐに抑えられる薬が出されます。東洋医学では痛みを繰り返さない身体になるよう処方します。どちらが良いか悪いかではなく、両医学を活かせばよりパーソナルな治療ができそうだと思い始めました」
調剤薬局を退職後、友人の紹介で漢方調剤薬局「八仙堂」に入社します。漢方相談員として18年勤務し、ついに「藤花堂」をオープンしました。
寄り合い所のようなお店を目指す
人々が漢方について知る機会があれば、漢方薬での治療も選択肢として思い浮かぶかもしれない。そう考えて漢方相談薬局を開業しました。
最終手段としての漢方薬ではなく、日々の健康管理として利用してほしいと藤原さんは言います。根底にあるのは「気軽に頼ってほしい」という思いです。お店の前を掃除をしていると、ご近所の方から「◯◯が痛いんだけど何科にいけばいい?」「◯◯の薬は置いてる?」と、ちょっとした相談を受けることもしばしば。あるお客さまからは「通えるところにお店ができてよかった」と嬉しいお声もいただいたそうです。
「日常的な心配事でも何でも気軽に聞いてほしいです。よくわからないものに不信感を持つのは当然なので、まずはちょっとした疑問を話せれば安心だと思うんですよね。話しかけるのが苦手であれば公式LINEでご連絡ください。本格的な健康相談でなければ相談料はいただきませんので」
地域の頼れる漢方相談薬局を目指す。そのために対話を大切にしています。
漢方は身体のバランスを取るための手法
お店に通うお客さまの中には、10年以上お付き合いのある方もいるそうです。やはり漢方はずっと飲み続けなければならないのかというと、それは誤解でした。治療として服用する場合は5~6年かかることもありますが、短ければ半年、平均は1年半~2年ほどとのこと。
「長く服用する方は、メンテナンスとして漢方を活用していることがほとんどです。漢方治療は、正しい身体の使い方を覚えさせるイメージなんですよね。身体が学習してしまえば漢方は飲まなくてよくなります。間違った箸の持ち方も、正しい方法を覚えて続けていけば元に戻りませんよね。漢方も同じように、改善するまではしっかりと服用して身体に教え込み、症状が繰り返さなくなれば卒業でいいんです。
でも『漢方さえ飲んでいれば治るんでしょ』という考えだと卒業は厳しいです。元をたどると体質に合わない食事や生活習慣にも原因があるんですよね。その癖を変えていく努力は必要です。
もちろんいきなり全部を変える提案はしません。例えば、冷え性なのに毎日アイスを食べているなら3日ごとにしましょうとか、胃腸が弱いのにコーヒーを1日に何杯も飲んでいるなら1杯にしましょうとか。少しずつ取り組んでいただけるようにお話しします。また、お客さまに合った食事や生活での養生法も毎回お伝えしています」
必要に応じて病院の受診や鍼治療をお伝えするとのこと。漢方薬だけで解決しようとはせず、その方にとってのベストな治療の提案を心がけています。
【養生】食事や運動などに留意し日常生活を過ごすことで、本来持っている免疫力や自然治癒力を高めること。(参考:東海大学医学部付属病院東洋医学科)
漢方薬が高いことには理由がある
漢方を利用しにくいと感じる一番の要因は、値段が高いことではないでしょうか。
「漢方薬は、生薬という天然由来のものを使用しています。生薬の種類によっては、何度も酒蒸しと乾燥を繰り返したり、副作用を抑えるための下処理が必要だったりと手間がかかります。そのため値段が高くなりますが、効果も高いことを知っていただきたいですね。
当店はお客さまのご希望の予算と相談しながら漢方薬をお作りしますので、ご安心ください。煎じ薬をメインで処方しており、一人ひとりに合わせて生薬の組み合わせや濃さを調整いたします」
悩みの内容によって異なりますが、価格の平均は最初が月2万円ほどで、段階的に減っていき最終的には月1万円ほどになるそうです。
「10年くらい抱えている症状を治したいとなると、必要な生薬の種類や量が多くなるので金額も高くなります。経済的な面からも、不調を感じたら早い段階で相談してほしいと思いますね」
※1【漢方薬】決められた配合比で複数の生薬を組み合わせたもの。
※2【生薬】薬効のある天然産物のこと(植物に限らず、動物や鉱物に由来するものもあり)。
※3【煎じ薬】漢方薬の原料である生薬を細かく刻んで調合し煮出したもの。液体なので薬効成分をすばやく吸収することができる。
(※1,2 参考:北里大学東洋医学総合研究所、※3 参考:東海大学医学部付属病院東洋医学科)
役に立てる喜び
藤原さんはこれまで、周りにアドバイスを求めて返ってきた言葉を素直に受け取ってきました。その素直さをご本人は「単純だから」と表現しますが、言われたことを否定せず受け入れる姿勢が、お客さまを惹きつけているのかもしれません。
「感謝のお声をいただくと、役に立ててよかった、この仕事を続けている意味があるな、と感じます。昔から抱いていた、困っている方の助けになりたいという目標も達成できていく。とてもやりがいのある仕事です」
どこに行っても調子が改善しない方、病院に行くほどではないけれど悩んでいる症状があるという方こそ、ぜひ漢方相談薬局を検討してみてはいかがでしょうか。
お店の情報
漢方相談薬局 藤花堂
【住所】203-0053 東京都東久留米市本町1-4-37シティハウス東久留米1階
【電話番号】042-420-1565
【営業時間】
月:10:00~18:00
火:10:00~18:00
水:10:00~18:00
木:定休日
金:10:00~18:00
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