沖縄市泡瀬地域で住民や観光客の憩いの場となっている「アワセベイストリートホテル」と「ラビットコーヒースタンド」。地域に根ざした民泊とテイクアウトコーヒー店は、近所の小学生から海外旅行客まで、多くの人々が訪れる癒しの場として愛されています。
「沖縄市泡瀬=“おきなわしあわせ(幸せ)”と思い出してほしい」と語る佐久間亮さん(以下:亮さん)に、事業を始めた経緯、お客様や地域への想いを伺いました。
出張先での出会いがきっかけで民泊を開業
会社員時代は、出張で沖縄各地の離島を飛び回る生活だった亮さん。現地ではリーズナブルな民宿に泊まっていたと話します。温かく迎えてくれる地元のオーナーと接するうちに、「うちなーんちゅ(沖縄の人)の良さを感じられる仕事を自分もやってみたい」と思うようになったといいます。
「現在の住まいで民泊を始められないか」と模索していたところ、タイミングよく売りに出されている近隣アパートを発見して購入に踏み切ったのだそう。もともと建築関係の仕事をしていたことから、内装の改修は家族でDIYしたという亮さん。休日の共同作業を通じて、思わぬ気づきを得たといいます。
「会社勤めをしながら休日にDIYを進めるのは大変でしたが、家族の意外な一面を知る機会を作れたのはよかったですね。妻は細かい作業がとても丁寧で、キッチンの棚を上手にリメイクする姿に驚きました」
小学生の頃から手伝い始めた息子さんは、高校生となった今では工具を使いこなしてすっかりDIY好きになっているそう。家族で協力して開業準備した時期を振り返り、亮さんは「苦労よりも発見が多くて面白かった」と話してくれました。
「距離感とおもてなしが大切」ホテルならではの気遣いとサービス
2022年4月に「アワセベイストリートホテル」をオープンしてからは、沖縄県内の方はもちろん、長期で連泊する外国人のお客様もご利用されています。世界中で利用されている民泊仲介サービスAirbnbを利用しているほか、米軍基地が近いこともあり、外国人のお客様が8割を占めるのだそう。お客様への対応で大切なことは「距離感」と「おもてなし」だと語る亮さん。
「県内外・海外のお客様も、基本的に対応のスタンスは変わりませんね。たとえ片言の英語であっても、笑顔で話しかければお客様に気持ちは伝わります。積極的なコミュニケーションを取りながらも、プライバシーに配慮して近づきすぎず、適度な距離感を保つことが大切です」
おもてなしの面では、アプリのメッセージ機能を利用して、近隣のおすすめスポットを紹介しているそう。「この場所を選んで訪れてくれたお客様に、美味しい食事処や日本の文化を知ってほしいんです。神社で旅の安全祈願をおすすめすると、外国人のお客様は新鮮な反応で喜んでくれます」と話してくれました。
第二の夢~コーヒーで癒しの時間を届けたい~
民泊の運営が順調にまわり出した頃、亮さんは新たなチャレンジをスタートさせます。「コーヒー好きは高校生の頃から。缶コーヒーを片手に、自分だけの優雅な時間を味わうのが至福でした」。社会人になってコーヒー屋さんを巡るようになり、「ほっとできる空間を自分でも作りたい」と、第二の目標に向かうことを決意します。
「誰でも最初は初心者。プロになるために時間を投資して、走りながら学んでみよう」
コーヒー豆の生産者と繋がったり、キッチンカーで移動販売する地元の先輩に教わったりと、開業に向けて着実に歩を進めます。民泊運営が軌道に乗ってきたことや、家族の後押しもあり、会社を退職して2023年1月に「ラビットコーヒースタンド」をオープンしました。
「エチオピアのこんな方が豆を作っているんですよ、と説明しながら心を込めてコーヒーを淹れています。お客様の『美味しい』のひと言が嬉しくて、さらなる味の追求に繋がるんですよね」
店舗には民泊のお客様をはじめ、地域にお住まいの方が多く来店されます。向かいの美容室を訪れたお客様がコーヒーを購入されることも多いのだそう。「近隣店舗の方が当店を紹介してくださるのはありがたいです。“地域で定番なお店”として認識してもらっていることにも感謝しています」と話してくれました。
地域への恩返し~子ども達に贈るみらいチケット~
ラビットコーヒースタンドでは、2023年から子ども向けに「みらいチケット」の取り組みを開始しました。来店されたお客様がみらいチケットを100円(税込)で購入すると、発行されたチケットが店頭に張り出されます。掲示されたみらいチケットは、12歳以下の子どもなら誰でもスコーン1つと交換できるという仕組みです。
子どもがお腹いっぱいに食べられることは、この豊かな日本でも当たり前のようで、当たり前ではありません。経済的な事情などでお腹を空かせた子どもがお店に訪れると、チケットを使って無料でスコーンが食べられます。
「『おじちゃん、食べに来たよー!』と近所の小学生がよく来てくれます。美味しそうに食べる姿を見ると、地域のためになれている実感がわきますね」
みらいチケットの取り組みは、金武町「タコライスラバーズ」の山川代表が始めたもの。「自分自身も団地育ちで、地域に育てられたひとり」という亮さんは、子ども達の貧困をなくしたいという山川代表の思いに共感し、ラビットコーヒースタンドでの導入に踏み切りました。
みらいチケットの導入を機に、メニューを拡充してスコーンやティラミスの販売を開始。当時中学生だった息子さんがスイーツのレシピを考案し、現在は奥様が毎朝手作りされています。
みらいチケットの取り組みを始めて1年が経ち、周辺住民にも認知されるようになりました。今後も同取り組みを継続していきたいと話す亮さん。この土地でお客様に愛されて民泊とコーヒー店を営業させてもらっている感謝の気持ちも込めて、地域への想いを語ります。
「沖縄市泡瀬=『おきなわしあわせ(幸せ)』と思い出してもらえるように、居心地の良い場所づくりをしていきたいですね」
地域住民にとっては気軽に立ち寄ってお喋りできる場所、観光客にとっては安心して帰ってこられる“第二のふるさと”となれるように、これからも「民泊×コーヒー店」の運営を続けていきたいと語ってくれました。
編集後記
筆者も家族連れで、民泊とコーヒー店を利用しました。夜は近場の飲食店で美味しい食事とお酒を堪能して、朝は挽きたてのコーヒーとスコーンでお腹を満たして買いものへ。コーヒー好きや、DIY好き、旅好きの方はぜひ訪れてほしい。店主とゆんたく(お喋り)するほどに、お店や地域の魅力を発見できますよ。営業時間や休業日をInstagramで確認して訪問することをおすすめします。
【アワセベイストリートホテル】
住所:沖縄県沖縄市泡瀬3丁目8−7
リンク:Instagram
【ラビットコーヒースタンド】
住所:沖縄県沖縄市泡瀬3丁目8−7
営業時間:Instagramストーリーで発信
休業日:不定休/Instagramストーリーで発信
リンク:Instagram