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もの・こと  |    2025.04.17

この世から保護猫をなくしたい!滋賀県長浜市の保護猫カフェ『にゃんずはうす』の願い

「この世の中から保護猫が居なくなってほしいと思って活動を続けています」

そう語るのは、滋賀県長浜市で里親探しの猫カフェ『にゃんずはうす』のオーナー南方菜津美さん。『にゃんずはうす』には、現在45匹の保護猫たちがいます。取材のために訪問した時間帯はちょうど食事タイムだったこともあり、何が起こっているのかわからないくらい圧巻の風景でした。

17時に予約したお客さんだけが楽しめる圧巻の食事タイム

『にゃんずはうす』は令和3年4月にオープンし、4周年を迎えました。利用に際しては予約が必要ですが、土日祝日は常に予約がいっぱいの状態の人気猫カフェです。

今回は、『にゃんずはうす』のオーナー南方さんに、保護猫カフェを開業したきっかけや保護猫の現状などについて詳しく伺いました。

三度のご飯より猫が好き

しばらく観察したあと、遊んでほしそうに寄ってくる猫も多い

「夫婦ともに三度のご飯よりも猫が好き」と熱く語る南方さんは、猫好きが高じて夫婦で猫カフェ経営を決意しました。前職は二人とも猫とは関係のない職種だったといいます。

「夫は会社員で、私は元パティシエをしていました。私はずっと動物に関する仕事に就きたいと思っていて、主人も殺処分される猫を救いたいという思いがあったので、猫カフェという形でその夢が叶ったという感じです」

猫カフェを開業したいとの思いから、猫でなくカフェへ経営の道を進んで行ったという菜津美さん。現在はドリンクの提供のみですが、いつかは本来のカフェとしての営業もしたいと、おぼろげながら夢を思い描いているそう。

猫カフェの経営を決意したものの、当時は右も左もわからない状態だったといいます。神戸に住んでいたこともあり、神戸の保護猫カフェを何度も訪問したとのこと。

ハンディキャップを持った保護猫も多い

看板娘のカルーは生まれつき両後肢奇形のハンディキャップを持っている

「目が見えない子であったりとか、少し不自由だったりする子もいるんですけど、それがもうチャームポイントで。本当に可愛いですね」

眼の前にちょこんと座るのは、看板娘のカルー。品種はノルウェージャンフォレストキャットで、生まれつき両後肢奇形のハンディキャップを持っています。人間のように後ろ足を投げ出して座る姿がとても可愛く印象的です。

「こういった奇形の子って、繁殖場としては要らない子なんですよ。カルーは車椅子を使っていたのですが、自分の脚で元気に歩けるようになりました」

カルーは繁殖場から保護されたといいます。ハンディキャップを持った猫たちはペットショップでは販売できないため、繁殖場としては不要な商品であり殺処分の対象です。カルーは奇跡的に保護団体に保護され、『にゃんずはうす』に引き取られたとのこと。

それぞれの猫には過去のストーリーがある

『にゃんずはうす』の入口にはそれぞれのプロフィールが掲載されていた

「ここに来る猫たちは、廃業した繁殖場や野良猫として保護された猫たちです。猫は生まれてから半年程度で成熟してどんどん出産するため、放置しておけばネズミ算式に殖えます。昔よりも野良猫は減っていますが、見かけたら餌を与える人もいるのが現状です」

保護された猫の多くは、多頭飼育で飼えなくなったケースやコロナが明けてから廃業した繁殖場で保護されるケースです。それぞれの猫には、異なる辛い過去の物語があると南方さんは語ります。

「それぞれの猫のストーリーなら、延々と喋り続けられます。ここは1回の利用を1時間に設定しているのですが、60分では時間が足りません」

保護猫の譲渡に際しては、その猫の過去について理解することが前提条件です。保護猫カフェを経営し始めてから、約140匹の猫を譲渡してきた南方さん。それぞれの猫が抱える辛い過去により、人間を拒絶する猫も多いといいます。

猫たちが大人しい理由、その陰には……

『にゃんずはうす』の猫は大人しく人懐っこい

筆者は猫に対して「気まぐれ」「ツンデレ」「自己中心的」のイメージを持っていましたが、『にゃんずはうす』の猫たちは真逆のイメージです。そこには、南方さん夫妻の並々ならぬ陰の努力がありました。

「ここの猫たちは人馴れ訓練をしています。人馴れ訓練は人間のエゴだという人もいるので、賛否両論です。YouTubeの動画にも否定的なコメントが入ることもありますが、私たちは猫と人間が仲良くできる関係性を目指しています」

人馴れ訓練は人との関係性だけでなく、ほかの猫と共同生活するうえでも重要です。『にゃんずはうす』に引き取られる猫たちの多くは、人間に対して恐怖心を持っていることがあります。

「ここの猫たちは、お客さんに対して本気で噛んだり引っ掻いたりすることはありません。私の手は引っ掻き傷だらけなのですが……」

南方さんは手についた無数の引っ掻き傷を見せ、人馴れ訓練の大切さについて語ってくれました。『にゃんずはうす』のYouTube動画では、人馴れ訓練によって猫が変化していく様子を見られます。

お客さんに怪我をさせるようなことがあってはならないとの思いもあり、何ヶ月もの期間をかけて人馴れ訓練をしているとのこと。成熟した猫であっても期間をかけることで人を警戒しなくなると、南方さんは語ります。

野良猫や保護猫の現状を知ってほしい

環境省の発表によると、2023年4月1日から2024年3月31日に全国で譲渡された猫は18,160頭でした。一方で殺処分された猫は6,899頭となっています。
(参考文献:環境省統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」

データによると猫の殺処分数は年々減少傾向にありますが、犬の殺処分数に比べるとかなり多い状況です。

「野良猫は現在、大きな社会問題です。地域ごとにさまざまな取り組みをされていますが、近年は猫の殺処分数が減っていません。ですので私たちは、この世の中から保護猫が居なくなってほしいと願って活動を続けています」

地域によっては「地域猫」として地域と共生できているケースもありますが、糞尿や悪臭などの問題は解決できていません。南方さんは、多くの人に現状を知ってもらいたいと語ってくれました。

『にゃんずはうす 長浜の保護猫カフェ』の詳細情報

お気に入りの場所でくつろぐ猫たち

利用は完全予約制となっています。予約の際は、公式サイトの予約フォームを利用してください。予約可能な人数は、1時間に最大5名までです。6名以上の団体で利用を希望する際は、電話にて相談してください。

公式サイトとSNS
画像出典:にゃんずはうす公式サイト
アクセス

〒526-0021 滋賀県長浜市八幡中山町295 3階

  • 長浜ICより車で5分
  • JR北陸線 長浜駅よりバスで7分

入口は建物の裏側にある階段で3階まで上ってください。目印はのぼり旗と猫の足跡です。

入口は『にゃんずはうす』ののぼり旗が目印
足元には猫の足跡
営業時間・休日
  • 営業時間:10時~18時
  • 休日:火曜・水曜・木曜
料金
  • 大人:1時間1,200円(1ドリンク付き)
  • 学生以下:1時間1,000円(1ドリンク付き)
  • 延長:10分200円
  • 猫おやつ:100円(数量限定)

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この記事を書いた人

のがわ

滋賀県担当のアラフィフライター「のがわ」です。地元の滋賀県や隣県の福井県に関する情報をお届けします。趣味の剣道は練士七段ですが、試合は中学生にも負けるレベルです。色々な地域に出稽古に行き、出会った方々の物語や観光情報などを記事にします。

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