
2013年4月に葛飾区新宿(にいじゅく)に開設した東京理科大学(以下理科大)の葛飾キャンパス。12年たった今、葛飾区にすっかり溶け込み、風景の一部になっています。そんな理科大の中に、地域貢献を掲げるサークル・カナラボはあります。どのような活動を行っているのか、共同代表を務める崎叶海(とうま)さん(写真中央右)、髙間琉雅(りゅうが)さん(写真中央左)に話を聞きました。
イベント実施や、宿題の手伝いをしています
約170人(2025年4月上旬現在)もの部員を抱えるカナラボ。JR金町駅から徒歩3分ほどの場所にあるカナラボハウスで、ワークショップや、小学生から高校生を対象に無料で宿題を教える宿題お助け部屋を実施しています。カナラボハウス以外でも、依頼を受けて学校や児童館でワークショップやサイエンスショーを行うことがあります。

ワークショップは、浮力の原理などを利用した浮沈子(ふちんし)や、重曹やクエン酸などを使用してバスボムを作るなど、身近にある科学を楽しみながら学べるのが特徴。参加した子どもからは「楽しかった」「またやりたい」、保護者からは「家ではできない体験ができた」と評判を得ています。

宿題お助け部屋は、平日16時半から18時までオープン。予約は不要で、気軽に勉強の相談をできることが魅力です。取材時もオープン少し後に常連の女の子が。宿題お助け部屋の感想を聞いたところ、「お兄さん、お姉さんたちは優しくて、教えるのが上手」とのことでした。女の子にはリラックスした様子が見られ、カナラボの部員が親身になって子どもと接していることがうかがえました。
崎さん、髙間さんにワークショップやサイエンスショー、宿題お助け部屋について感想を求めたところ、次のように答えが。
「子どもたちと話すときは、怖がられないように、なるべく目線の高さを合わせるようにしています。ワークショップやサイエンスショーを実施して子どもたちに喜んでもらえると、うれしくなりますね」(髙間さん)
「一般の塾では講師と生徒の関係になりますが、宿題お助け部屋では子どもとの関係がフラットなのも魅力だと思います」(崎さん)
こんな風に子どもと接してくれる学生なら、親御さんたちも安心できるのではないでしょうか?
地域に貢献したいという思いから発足。短い期間で大所帯に

カナラボの前身は、都内のさまざまな地域で地域貢献活動を行うインカレサークルのコミュニティラボ。ですが、カナラボを創設した高井洸烈(こうれつ)さんが「もっと大学のある葛飾区に根付いた活動をしたい」という思いから2022年にコミュニティラボ理科大支部として独立を果たします。そして、地域により愛されるようにと願いを込めて、2023年にカナラボに改名しました。
今でこそ地域に認知されているカナラボですが、創設当時は苦労もあったようです。
「認知度を高めることに苦戦しました。カナラボとして活動を始め、最初に行ったのが自由研究教室でした。しかし、募集人数に到達せず、近隣の小学校をまわってチラシを配布したり、ポスティングをしたりしてようやく参加者が集まったという状況でした」(崎さん)
その後はイベントを開催しつつ、清掃ボランティアに参加して大人とのタッチポイントを増やし、「保護者がカナラボの公式LINEを登録すると、子どもがスライムをもらえる」というキャンペーンを実施するといった工夫も行いました。
そういった積み重ねによって、2025年の春休み期間中だけで、ワークショップやサイエンスショーの依頼が舞い込み、約10件実施するほど地域に頼られるサークルになりました。
カナラボハウスがピンチ!でも、今後も活動は続けます!

充実した活動を続けているカナラボですが、実は今、カナラボハウスは存続の危機に瀕しています。現在は、入居する物件を自治体の好意によって安価で借りていますが、地域の再開発により、2025年5月いっぱいまでしか借りることができず、引っ越し先もまだ見つからないそう。
ですが、新たなカナラボハウスとなる物件を探しつつ、学校や児童館等でこれからも活動を継続するとのこと。そこで、今後どのようにカナラボの活動を展開するのかを尋ねてみました。
「現在は小・中学生を対象にしていますが、親御さんも一緒に楽しめるようなイベントを開催したいと思っています。また、現在は葛飾区を中心に活動していますが、都内のより人通りが多い地域や商業施設など、不特定多数の人の目に留まるように広げていきたいと考えています」(髙間さん)
今後はさらに活動の幅を広げていくというカナラボ。若い力がどのように葛飾区を盛り上げてくれるのか、そして彼らがカナラボでの活動を生かしてどのように成長するのか、ますます楽しみですね!
関連リンク
カナラボHP:https://kanalab.jp/