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人  |    2025.07.28

なぜ看護師がぶどう農家に?二刀流で挑む『極上の甘さ』の秘密

日本一のぶどう王国・山梨で出会った、看護師×農家の二刀流・寉田秀(ツルダ シュウ)さん。新緑のぶどう畑で体験した驚きの『極上の甘さ』の秘密に迫りました!

甘さとこだわりを極めたシャインマスカット

ぶどうの栽培について話す寉田さん

山梨県で看護師として働きながら、副業でぶどう農家を営む寉田秀さん。

副業と聞くと気軽なイメージを抱くかもしれませんが、本業に負けないほどの情熱と徹底したこだわりが込められています。

農業の世界に足を踏み入れたのは、ぶどう農家でのバイトがきっかけでした。土に触れ、果実が育つ過程を間近で見るうちに、自然と向き合う面白さや「人を笑顔にする」農業の魅力にどんどん惹かれていったそうです。

我が子のように愛情をたっぷり注ぎ込んで育てたシャインマスカット

寉田さんが育てるのは、贈答品としても人気の高いシャインマスカット

ぶどうの聖地「勝沼」の土壌で育った大粒で高糖度の実。糖度18度以上という驚くほどの甘さと、皮ごと食べられるパリッとした食感が魅力で、見た目の美しさと食べやすさも相まって多くの人を惹きつけています。

実は、この甘さと美しさを実現するために、収穫量をあえて抑えるという大胆な決断をしているのです。

 「冬の剪定のときに、もっと枝を残せば収穫量は増えるんですが、それじゃ味が薄くなってしまう。だから、欲との戦いなんですよ」と寉田さんは語ります。

本来10割取れる房をあえて8割にまで絞り、栄養を集中させることで糖度を高め、粒を大きく育てる。

「ぶどう作りは足し算と引き算のバランス」と語る言葉に、品質への揺るぎない思いが表れていました。

「期待を裏切らない、むしろ期待を超えるぶどうを届けたい」

そんな強い思いが、ぶどう作りの根底にあります。

さらに、酒粕や米ぬか、カツオエキスなど特別な肥料を用い、根や葉を活性化することで味と品質を磨き上げています。

個性あふれるぶどうで広がる笑顔

貴重なブラックシャインマスカット

寉田さんの畑には、シャインマスカットをはじめ、さまざまな種類のぶどうが育っています。

黒い果皮が美しい「ブラックシャインマスカット(マスカットノワール)」や、作業体験でも扱った「ピオーネ」など、味わいや見た目に個性がある多彩な品種も育てています。

「食べる人を笑顔にしたい」という願いと情熱が詰まっているのが、寉田さんのぶどうです。

一粒の未来を思う「摘粒」作業を体験

今回、ピオーネで体験させてもらった「摘粒(てきりゅう)」は、ぶどう作りの中でも特に繊細さと集中力が求められる工程でした。

最初は100粒ほどある房を、最終的にはおよそ30粒にまで減らしていきます。

摘粒を怠ると粒が小さくギュッと詰まってしまい、糖度も下がってしまうため、見た目と味の決め手になる重要な作業です。

「減らすことで栄養を集中させ、甘く大きな粒に育てるんです」と寉田さんは教えてくれました。

小さな専用ハサミを片手に、一粒ずつ未来の房の形を思い描きながら慎重に間引いていく作業は、まさに繊細なアートのよう。

夢中になって進めるうちに、みんな自然と無言になり、風に揺れる葉音とラジオの音楽だけが静かに畑に響いていました。

摘粒作業は一年を通じて最も時間がかかる大仕事。短期間で一気に仕上げる必要があるため、バイトを雇ってでも人手を増やすそうです。

作業を終えた房は、見違えるほどすっきりとした姿に変わります。

切れ味抜群、目盛り付きの作業用ハサミ

参加者からは「職人の世界を少しだけ覗けた気がする」「夢中になって時間を忘れた」など、感激の声が上がっていました。

甘さと美しさを両立させるための細やかな工程を、自分の手で体感できたのはとても貴重な経験でした。

看護師と農家、二刀流で挑む理由

摘粒する寉田さん

寉田さんは現在、看護師と農家という二刀流の働き方を実践しています。

「遅番の日は午前中に畑仕事、早番の日は午後から農作業ができる。冬は農作業が少ないので、看護師としてもしっかり働けるんです」と話します。

看護師として人の命に寄り添い、農家として自然を育む。まったく違うようで、どちらも「人を笑顔にしたい」という思いが根っこにあります。

副業といっても、その情熱は並大抵のものではありません。畑をゼロから借りる苦労、資金の工面、設備の準備、独自の施肥方法……一つひとつの挑戦を乗り越え、今では毎年3トン以上のぶどうを栽培・販売するまでに成長しました。

「この人のぶどうを食べたい」と言われる未来へ

挑戦の証、寉田さんのロゴと自慢のぶどう

「値段に見合う価値のある高級ぶどうを届け続けたい

そんな目標を掲げる寉田さんは「自分のぶどうを食べたい、と選んでもらえることが一番の喜び」と語ります。

今後は畑の規模拡大や農業法人化、さらに「シャインマスカットの木のオーナー制」といった新たな挑戦も計画中です。

「家族や仲間と一緒に育てる喜びを共有したい」という思いのもと、ぶどうを通じた新しいコミュニティづくりにも力を注いでいく予定。

「寉田さんのぶどうだから食べたい」と言ってもらえる唯一無二の存在を目指して、挑戦はこれからも続いていきます。

寉田さんのオンラインショップ

SHAIN ONE 山梨のぶどう

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この記事を書いた人

金子 よし子

山梨県出身、山梨県在住のwebライター。 山梨県の魅力をたくさん発信していきたいと思います!

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