「横浜市青葉区で靴の文化をつくりたい」
そう話すのは、横浜市青葉区にある「CONTE」のオーナーで靴職人の斎藤 融(さいとう とおる)さん。
自身の名前を冠したブランドを立ち上げ、海外から靴職人を目指す若者が学びにくるほどの腕前の持ち主です。
今回、そんな斎藤さんに靴職人になるまでの経緯や靴の魅力、これからの夢を伺いました。
インタビューを通して見えてきたのは、お客さんとの対話を大切にする、地域の頼れる靴職人さんの姿でした。
※本記事では、【前編】【後編】の2部に分けてCONTEの魅力に迫ります。
「靴職人による靴修理」CONTEの魅力
CONTEは、靴の製造と販売、修理を行うお店です。
東急田園都市線の藤が丘駅から徒歩7分。
レンガ造りの建物の1階、通りに面した大きな窓から、斎藤さんが作業をしている姿が見えます。
「靴を作る時は皮を水につけるんです。一度皮をドボンと水につけたあと新聞紙などでくるんで余分な水分を取り除き、半乾きの状態にしてから、道具で形を作っていくんですよ」(斎藤さん)
取材をした日はちょうど定休日である火曜日。
火曜日はお店を閉めてはいるものの、大体は作業をしているという斎藤さん。
「半乾きの状態で作業する工程では、途中で止まるとそこで具合が悪くなってしまうんです。集中してできるように、定休日の火曜日は制作にあてています」(斎藤さん)
斎藤さんは、イギリスに古くから伝わる「ハンドソーンウェルト」という製法を学んだ職人さんです。
ハンドソーンは「手縫い」という意味。全ての工程が手作業で行われます。
木型から一つひとつ手作業で丁寧に作り上げられる革靴は、自分だけの特別な一足です。
CONTEでは、修理も請け負っています。
「オーダー靴はそれなりに金額が高いので、サンプルを置いたところで『おーいいね。買うよ』という人はそうそういないんですよね。地域の人たちに親しんでもらい、気軽に来店してもらうためには、修理をやっていた方がいいと思ったんです」(斎藤さん)
お店のコンセプトは「靴職人がやっている靴修理」。
「靴の修理を行っている人の中には、修理だけを学んだという人も多いんです。でも、CONTEでは作ることもできるし、直すこともできる。靴職人だからこそ、靴に関する幅広い相談にのれます」(斎藤さん)
なんでも親身に相談にのってくれることが口コミで広がっているのか、革靴のほかにスニーカー、バック、洋服をもって相談にくるお客さんもいるのだそう。
「『こんな相談でもいいのかしら』というものでも全然OKです。靴以外の革製品もできることはやりますし、僕で対応できないものは、知り合いの職人さんに見積もりをとってもらって修理をお願いすることもできるので、気軽に相談してください」(斎藤さん)
「本当に好きなことを」ヘアカラーの営業から靴職人へ
靴職人になる前は、美容師さん相手にヘアカラーの営業をしていたという斎藤さん。
営業をしていた斎藤さんが、なぜ靴職人への道を踏み出したのか、理由を伺いました。
「たぶん30歳とか40歳の手前で『この会社に居続けていいのか』と考え始めるのはあるあるだと思うんですけど、僕も28歳の時に転職を考えました」(斎藤さん)
もともと仕事は嫌いではなかったという斎藤さん。
「仕事を通じて、色々な人と話をすること自体がすごく楽しくて、人生の勉強になった」と言います。
「得意先の社長さんで、話をしているとすごく魅力的だなと感じる人がいたんです。話していると『この人はこの仕事が本当に好きでやっているんだな』というのがよくわかりました」(斎藤さん)
魅力的な人は自分がやりたいことをしているーー。
そう感じたという斎藤さん。
「僕もこの仕事をずっと続けていって、その人のように魅力的な人間になれるのかなと疑問を感じるようになって転職を考えました」(斎藤さん)
しかし、いざ転職となると、給料や福利厚生などの条件面に目がいってしまうことに気がつきます。
「だんだんこれはちょっと違うなって思って。改めて『本当に好きなことってなんだろう。何が本当にやりたいんだろう』と考えました」(斎藤さん)
その時に斎藤さんの頭に浮かんだのが靴職人でした。
「昔誰かに『靴をつくっている職人さんがいるんだよ』と言われたことをふと思い出したんです。たまたまそういう雑誌を見たこともあって『靴職人ってなんか面白そうだな』って思いました」(斎藤さん)
元々ものづくりが好きだった斎藤さん。
そして、当時靴が好きだったことも靴職人に興味をもつきっかけになります。
「美容師さん相手の営業だったこともあり、服装は意外と自由。黒じゃなきゃダメというルールはなく、明るい茶色とか、割と好きな色の革靴を履くことができたんです。先輩もいい靴を履いている人が多かったので、僕も興味をもつようになって、靴にはお金をかけていました」(斎藤さん)
靴職人をやりたいーー。
思いたったらすぐ行動するタイプだという斎藤さん。
しかし「靴職人をやるために会社を辞めようと思います」と言う斎藤さんに、会社の先輩はこう言いました。
「靴が好きなのと靴作りが好きなのって違うと思うよ」
「たしかにそうだなと思って。先輩から『靴を作る体験をしてみて、それで本当に好きだったらやったらいいんじゃない?』とアドバイスをいただいて、仕事をしながら週末に開かれる靴作り教室に通うことにしたんです」(斎藤さん)
教室に通い始めた斎藤さんは、靴作りの楽しさを実感します。
「靴作りをやってみたらやっぱり楽しかった!やっぱりものを作るっていうのをやりたいと思いましたね」(斎藤さん)
靴職人への思いを再確認した斎藤さんは、仕事を辞める決意をします。
靴職人への道を歩み始める斎藤さん。【後編】では、仕事をやめた斎藤さんが靴職人となり、CONTEを開業するまでの道のりや今後の夢、斎藤さんが語られた靴の魅力についてお伝えします。
CONTEの情報
CONTE
住所:〒227-0048 神奈川県横浜市青葉区柿の木台3−3 石原第5ビル
電話番号:045-973-0770
営業時間:11:00〜19:00
定休日:火曜日・水曜日
WEBサイト:WEBサイトへ
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