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人  |    2024.01.03

漫画家町田すみさんが広げる詩の世界|楽しがり屋は人と人を繋げるのがお好き

町田すみさんは、札幌で活躍している漫画家です。しかし、その活動は漫画だけにとどまらず、詩の朗読や絵本の読み聞かせ、ウクレレ演奏など非常に多彩。

特に詩の分野では、「ポエトリーリーディング」という活動を北海道でも広めたいと、イベント「ぽえとる?」を自ら主催しています。

今回は「自分の活動で人と人が繋がるのを見るのが喜び」と語る漫画家、町田すみさんにお話を伺いました。

札幌在住の漫画家町田すみさんとは?

町田すみさんは「だけど温田さんはひとりでデキない」(全2巻)「アナタノ甘イ蜜」(ボーイズラブ)の単行本が出版されており、現在はまんがタイムにて「女神に胃袋つかまれた!」を連載しています。ストーリー漫画から4コマ漫画までジャンルを問わない作風が町田すみさんの大きな魅力です。また、専門スクールやカルチャーセンターで講師もしており、漫画やイラストを上手に描くコツを教えています。

そして町田さんの魅力は漫画だけにとどまりません。似顔絵かき、詩の朗読、絵本の読み聞かせやウクレレ演奏など、驚くほど多種多彩。

なかでも詩の活動ではさまざまな世界を繰り広げています。

もともと小学生のころから詩を書くことが好きで、中学生の頃はwebの掲示板に毎日詩を投稿していたそう。

「詩をつくることは特別なことではなく、自分の日常に当たり前に存在することでした。だから日記感覚で毎日の出来事を詩にしては投稿していました。でも漫画を描くようになるとベクトルがそちらに向き、しばらく詩から離れてしまったんですよね」

そんな風にしばらく詩の世界からは足が遠のいていた町田さん。けれど、町田さんにとって詩の創作はもともと日常の一部。「やっぱり詩も楽しい!」と漫画の仕事をしつつ詩の活動を再開します。そうして詩人の知り合いが増え、詩の世界を知るにつれあることに気づきました。

「漫画と比べると、“”って随分と一般に浸透していない文化なんだなって思ったんです。例えば北海道は有名な漫画家さんが多いので漫画の話をすると盛り上がるけど、詩の話題で盛り上がることって稀ですよね。そして詩のジャンルで気軽に参加できるイベントもあまり見ない。どうして?と思いました」

詩は書くのも読むのも素敵なカルチャーなのに難解に捉えられがち、という事実に「じゃあポピュラーなジャンルの“漫画”を扱う自分が“詩”の誘い水になろう!」と、町田さんは思ったのです。

ポエトリーリーディングイベント「ぽえとる?」を主催

みなさんは「ポエトリーリーディング」とは何かをご存じですか。「ポエトリーリーディング」とは、詩人が自作の詩を朗読する行為のことで、アメリカ発祥の文化と言われています。

日本では1960年代以降に谷川俊太郎氏や茨木のり子氏をはじめとした詩人が、フリーなスタイルで活動を開始し、50年ほどの歴史があります。

「ぽえとる?」開催風景

町田さんはこの「ポエトリーリーディング」が、北海道では行われていないことを知りました。

「詩ってどうしても、文字で読むものというイメージが強いんですよね。だから詩の朗読というと、わざわざ声に出して読むの?と、意外がられることが多いんです。でも北海道にも詩作をしている人はたくさんいるし、ポエトリーリーディングを開催すれば参加する人は絶対いるはず。開催する人がいないなら自分がやればいいや!と思ったんです」

かくして漫画家町田すみさんによるポエトリーリーディングイベント「ぽえとる?」が開始されました。

こちらの町田さんのXポストにて、「ぽえとる?」開催の詳しいくだりを読めますのでぜひご覧ください。

「ぽえとる?」の意味は「ポエトリーリーディングする?」の略。まずは「ポエトリーリーディング」ってなに?と、興味を持って欲しくて呼びかけるようなイベント名にしたとのこと。

「“ぽえとる?”はもう8回開催していて、常に15~20人の方が参加しています。これまで一人で詩を書いていた方が、お互いの詩集を交換したり交流を深めたりしているのを見るのが嬉しいですね」

漫画も詩も楽しみたい「楽しがり屋」は表現者であり作り手

町田さんに「自身のことを漫画家や詩人という肩書以外で表現するとしたら何でしょうか」とお聞きすると、こんな答えが返ってきました。

楽しがり屋ですね。しかも“自分が”というより、自分が提供した場がなにかをやるきっかけになったり、人と人が結びついたりしていくのが何より楽しいです

ある方に「町田さんは作家というより表現者だね」と言われたことがあるそうです。同時にさまざまな活動から「場所」や「交流」を生み出す作り手でもあると感じました。

自分の活動をきっかけに北海道で詩の文化が広がってほしい

町田さんは、詩のイベントが北海道の各地で開催されることを期待していると言います。

「札幌以外の釧路や網走でも詩のイベントを開催したんですが、地方でも工夫して開催することで損得ではない手ごたえがありました。そうしたらその地域の人が、やれるんだ!って継続してイベントを開催するようになったんです」

「そんな風に私の活動をきっかけにさまざまな地域で、詩を表現する“場所をつくれる人”が増えて欲しい。そうすれば北海道の詩の文化はもっと広がると思うんです

そもそも漫画家になったのは、最初の投稿作品が賞に落選したことが悔しくて、納得できるまで投稿し続けたことがきっかけだという、悔しがり屋でもある町田さん。

漫画と詩を区別せずに「創作」から「場作り」にまで発展させ、さまざまなことにアウトプットできるパワーは、まさにその粘り強さから来るのかもしれません。

最後にご本人の詩を紹介し、「楽しがり屋である漫画家町田すみ」さんの枠にとらわれない活躍を今後も大いに期待したいと思います。

『雨宿り』 町田すみ

涙が雨宿りしている
君の瞳に

涙が雨宿りしている
多肉植物の下に

涙が雨宿りしている
さようならの裏に
ありがとうの陰に

「なぜ」 を ひさしにして

涙が雨宿りしている
あの
虹のずうっと向こうの
地平の彼方の海を越えた先で
静かに夕暮れを見送るあの子の背中に

涙が

誰もが雨がやむのを待っている
遠くで鳴る雷の音に身を縮こまらせて
ごうごうと屋根を叩く雨音に耳を塞ぎ
涙は

雨宿りしている

写真撮影:文

町田すみさん情報

X:https://twitter.com/matisumism
ブログ:すみのすみか(http://jiraisin.jugem.jp/

「ぽえとる?」に興味のある方は町田すみさんにご連絡ください。

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この記事を書いた人

小糸 あき

夫婦で50代からフリーランスになり北海道札幌で文工房という記事作成事務所を営んでます。ママンライター&パピーカメラマン。北海道という地域に根ざしながら、住む人や暮らしを応援したいと考えています。好奇心を持ち、常に挑戦する姿勢を忘れず、自然や人に寄り添った仕事をすることが目標。趣味は道の駅めぐりと図書館めぐり。

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