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人  |    2024.10.18

13年の屈んだ期間が「こころの元気100%」という理念につながった「こころ社労士事務所」代表香川昌彦さん|大阪府茨木市

社会保険労務士とは、社会保険や労働関連の法律の専門家です。企業の人事や労務管理をサポートする国家資格者である一方で、直接かかわりがあるという人は少ないかもしれません。

筆者はこれまでに多くの社会保険労務士と名刺交換をしてきました。代表の名前が事務所名に入っているケースが多いなか「こころ社労士事務所」という名前を掲げて活動している社労士が大阪府茨木市にいます。

代表の香川昌彦さんは、ご自身の経験をもとにこの事務所名を決められたそうです。阪急電鉄「茨木市駅」から徒歩3分の位置に事務所を構える香川さんに、事務所名の由来やお仕事への熱い想いを聞かせていただきました。

13年間の仕事ができない期間を乗り越えて

こころ社労士事務所

いつも笑顔で、穏やかな空気感を醸し出す香川さん。ここに至るまでには壮絶な闘病生活を送られた経験がありました。

「精神疾患を患い、社会に出ることができなかったんです。その期間は13年に及び自宅療養の日々を送っていました(香川さん)」

精神疾患のきっかけは仕事場でした。大学を卒業した香川さんは、就職した会社で多忙な日々を送ります。最初に勤めた会社から転職を余儀なくされ、次に勤めた会社で、長時間労働と同僚からの当たりの強い扱いを受けてしまうのです。

「勤めていた会社が外資系企業に買収されたのです。当時、私は営業職に就いており、買収後は取り扱う商品が大きく変わってしまいました。これまでの商品知識は使い物にならなくなり、新しい商品についての勉強をしなければならなくなったのです(香川さん)」

それでも香川さんは持ち前の営業力で頭角を現し、買収された側の立場でありながらも大きな仕事を任されることになります。

「それが気に入らないという人たちがいたのです。もともと買収元にいた同僚から強い当たりを受け、無茶なスケジュールで働かないといけないこともありました。酷い時は7時から23時まで働き、それが終わってから勉強するという年があったんです(香川さん)」

長時間労働と人間関係がきっかけとなり、精神疾患を患った香川さんは長期間、社会と断絶された生活を送ることになるのでした。

支援員のひとことで独立の道へと進む

就業規則チラシ

社会復帰を目指して就労移行支援事業所に行くようになった香川さんは、そこで大きな転機を迎えます。

「当初は障がい者雇用枠で企業に勤めようとしていました。ただ、なかなか採用されなかったのです。100以上応募して、面接にたどり着いたのが3社ほど。いずれも年齢がネックで採用されなかったようです(香川さん)」

なかなか就職先が決まらないなか、相談した支援員から意外な言葉を投げかけられます。

「『独立してみませんか?』といわれたのです。確かに療養前に社労士資格を取得していたので、その資格を生かして独立という方法があるのは理解できました。ただ、実務経験がなかったので、最初は無理だろうと思ったんです。とはいえ、ほかに働く術がなかったので、独立するしかありませんでした(香川さん)」

独立するにあたって、事務所名はすんなり決まったそうです。

「自分の経験から、仕事でメンタルヘルスをやられてしまうのはばかばかしいと思っていました。そんな世の中を変えたいという思いから『こころ』を前面に打ちだした事務所名がすぐに決まったんです(香川さん)」

支援員の提案から、香川さんの人生は大きく動いていくのです。

見込みゼロからの起業と事業の見直し・リスタート

実務経験もなく、見込み客もいないまま独立した香川さん。起業当初は売上が立たないということも多いと思うのですが、香川さんはそうではなかったようです。

「起業してすぐに参加した事業家の集まりで、代表の方に気にかけてもらって仕事を頂いたんです。助成金申請の仕事を2件紹介頂き、収入の目途が付きました。また、自分で作ったHPから、顧問の依頼が入ったのもありがたかったです(香川さん)」

傍から見れば運がいいと見えるかもしれないが、いずれも香川さんの行動力がもたらした結果です。とても自宅療養していた人とは思えない行動力だなと驚かされます。

「ただ助成金申請の仕事は、起業したときの思いとはズレていました。助成金の仕事は、その時だけで、長期的なお付き合いにはなりづらいんです。長期的なかかわりが持てなければ、こころの元気につながる職場づくりにはつながりません(香川さん)」

さらに助成金申請は、ミスをすると助成金が支給されなかったり、手続きが急に変わったりする気の休まらない仕事です。いつしか香川さんのこころの状態は、良くない方向に向かっていきます。

「この時は妻からも『辞めて欲しい』と言われてしまいました。それくらいこころをすり減らして働いてしまっていたんでしょうね。自分でもこのままではまたメンタル不全になってしまうと考えていました(香川さん)」

そこで、香川さんは新規で助成金申請の仕事を受けるのをやめ、新たに「就業規則」と「人事評価制度」を軸とした事業にリスタートされるのでした。

経営理念・将来の目標を明確に!

こころの元気100%

「こころの元気100%」という経営理念を掲げ、「就業規則」と「人事評価制度」に特化した働き方を決意した結果、香川さんの働く環境が変化します。

「助成金を辞めた当初は、何も見込みはありませんでした。ただ、腹をくくって働き始めた結果、立て続けに新規の顧問契約が獲得できたのです。また就業規則作成のお仕事も頂き、なんとか事業を継続することができました(香川さん)」

香川さんは顧問先から「決して器用ではないけれど、会社を良くしたいという思いが伝わるので顧問にしている」という声をいただいたそうです。こころを大事にしたいという思いが伝わり、仕事をお願いしたくなるのでしょうね。

ひとりで事務所を運営していた香川さんに、新たな展開が訪れます。

「令和5年の夏にインターン生を受け入れたんです。実はそのインターン生を雇用して欲しいとお願いされたのですが、流石に無理だと断っていました。ただ、人事評価制度で大きな仕事をいただいたり、大きな顧問先から依頼をいただくようになったりした結果、ひとりでは仕事が回らなくなり、正社員で雇うことになったんです(香川さん)」

正社員として雇用された方は、香川さんが思っていた以上に仕事ができる方だったようで、今では無くてはならない戦力として活躍されています。

今後の展開についても伺うと、

「未来創造プロジェクトという名前で人事評価制度を提案しています。月に2回、5つの目標について短時間の面談を行っていただき、継続的な成長を促す制度です。半期や四半期ごとに行われることの多い面談とはことなり、給料の配分ではなく社員の成長に目を向けた仕組みになっています。この制度が定着すれば『こころの元気100%』な職場になると考えています(香川さん)」

筆者自身も会社員時代にこころを病んだ経験があります。香川さんのような社労士さんが活躍されれば、多くの企業からかつての私や香川さんのような人がいなくなっていくでしょう。「こころの元気100%」な企業で溢れる社会を目標に、香川さんは今日も働く人たちと向き合うのでした。

こころ社労士事務所情報

事務所名:社会保険労務士法人こころ社労士事務所
住所:大阪府茨木市大手町1-27-4A
営業時間:9:00~17:00
定休日:土日祝日、年末年始
HP:https://sr-kokoro.com/

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この記事を書いた人

にのまえはじめ

大阪府茨木市在住の複業ライター。システムエンジニア/プログラマー、速読教室の運営、パーソナルトレーナー、IT企業の経営などを並行しながら、ライターとしても活動。得意ジャンルはマンガ・アニメ・ゲームなどのサブカルチャー(80年代中心)、IT関連のSEO記事、インタビュー記事。趣味はプロレス観戦。

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