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人  |    2025.01.09

らーめん梅吉|「日常に溶け込む一杯を」ラーメン業界未経験から挑んだ10年の軌跡【後編】

2025年3月で10周年を迎える「らーめん梅吉」。

熊本ラーメンをルーツに持ちながら、店主が試行錯誤を重ねた珠玉の一杯が味わえるお店です。

そのラーメンには、不思議な縁から始まった物語と、店主の飽くなき探求の日々が詰まっています。

今回は「らーめん梅吉」の店主である梅野さんに、10年の軌跡とこれからの展望について伺いました。

前編はこちら

らーめん梅吉|熊本のご当地ラーメンを相模原で堪能!メニューや実食レビューもアリ【前編】

不思議な縁から歩み始めたラーメン業界への道

らーめん梅吉を開店して何年目になりますか?

現在は9年目で、来年の2025年3月に10年目を迎えます。私自身もラーメン業界に身を置いて、10年目を迎えることになりますね。

このお店を始める前は都内の会社に勤めていたので。

私がラーメン作りを学んだ「肥後っ子大石家」には、元々お客としてラーメンを食べに通っていました。

「肥後っ子大石家」とはどのようなお店だったのですか?

「肥後っ子大石家」は熊本ラーメンのお店です。

そのお店の店主が大石師匠で、地元で有名な名物店主でもありました(笑)

お客さんへのマシンガントークがすごかったり、お店の正面に自分の似顔絵を模した看板を掲げたりと、ユニークな方でした。でも、作るラーメンは本当においしくて、とても人気のあるお店だったんです。

どのような経緯でお店を引き継ぐことになったのですか?

大石師匠がお店の物件を売りに出していたのがきっかけです。

当時、大石師匠は「地元の熊本に帰りたい」と考えていて、お店を閉めて物件を手放す予定だったようです。ラーメンを食べながらその話を聞いたときは「お店が無くなってしまうのか」と寂しい気持ちになったのを覚えています。

その話が2年ほど続いたものの、なかなか買い手が見つからなかったようで。

業者からの申し出はあっても、「更地にして新しい建物を建てる」といった提案が多く、大石師匠としては「この思い出の詰まった物件を大切に使ってくれる人に譲りたい」という強い意向がありました。

そんな中、私は家族で住める物件を探しており、その話を世間話程度に大石師匠に伝えたところ、話が進んで物件を譲っていただくことに。

結果的に、脱サラしてラーメン屋を始めることになりました。

では、ラーメンの道に進んだのは偶然が重なったのも大きいのですね

「らーめん梅吉」の店主・梅野さん

偶然の要素は大きいと思います。

しかし、ラーメン自体が大好きで食べ歩きもしていましたし、大石師匠のお店には10年以上通っていました。

何よりも、このお店の味が無くなってしまうのが寂しいと感じたんです。大石師匠のラーメンは他では食べられない、唯一無二の味でしたから。

師匠との突然の別れ、そして10年にわたるラーメン磨きの道

大石師匠との修行の日々はどうでしたか?

実を言うと、大石師匠にラーメン作りを教わった期間はあまり長くありません。「らーめん梅吉」を開店して1年も満たないうちに、大石師匠は不慮の事故で亡くなってしまいました。

私が脱サラしたのは2014年のこと。それまで大石師匠とは、お客と店主という関係で10年以上付き合いがありましたが、師匠と弟子という形での関わりは2年に満たない短い期間でした。

事故の知らせを聞いた当初は、突然の出来事に悲しさはもちろんありましたが、将来への不安も大きく胸の内で膨らんだことを今でも鮮明に覚えています。

師匠としては10年かけてじっくりお店の経営のことやラーメン作りを教えていく予定だったそうで。だから、ラーメン作りに関しては基礎くらいしか教えてもらえませんでしたね。

当時は残されたレシピノートと、お客として食べたラーメンの記憶だけが頼りでした。

では、かなり大変な状況からのスタートだったのですね

本当に大変でした。

特にラーメン作りに関しては、まだまだ知らないことばかりだったので。

何よりも難しかったのは師匠のような”うまいラーメン”を作ることです。

私も師匠のラーメンを10年以上食べてきたので、”自分の作るラーメン”が違うことはハッキリわかります。でも、どうすればその味に近づけるかが全くわからない。

そんな苦悩の中で、試行錯誤の日々が始まりました。

具体的にはどのような改良を加えましたか?

壁に掲示された雑誌の特集記事の切り抜き

まず取り組んだのは、スープの基礎を見直すことでした。

使用する豚骨の部位や割合、火加減を細かく変えて調整を繰り返しました。どんな些細な工夫でも試しましたね。

また、おいしいラーメンを作るには、おいしいラーメンの味を知ることが不可欠と考え、年に一度は九州に足を運んで豚骨ラーメンの食べ歩きをしています。

2~3泊の間に、気になったお店を巡って、1日に8~10杯くらい食べることが多いです。

同じ豚骨ラーメンでも違いはあるものですか?

お店ごとに違うのはもちろんですが、同じ九州でも博多や熊本、鹿児島と地域が変われば、ガラッと味の雰囲気が変わります。例えば、スープに使われる材料の割合や味付け、麺の太さなんかは地域によって違ってきますね。

中には、満腹で苦しいのにスープまで飲み干せるお店があったりするので、豚骨ラーメンの奥深さに驚かされます。

こうした経験を通じて、自分のラーメンに九州の味を落とし込んでいくといった改良を何年も続けています。

目指すは”ご馳走”ではなく”日常に溶け込む”九州ラーメン

お店のラーメンの特徴を教えてください

(上)梅吉らーめん・(左下)黒らーめん・(右下)豚骨らーめん

当店では三種類のラーメンを提供しています。

  • 梅吉らーめん
    熊本ラーメンをベースに、マー油やにんにくチップをトッピングした一杯。(人気No.1メニュー)
  • 黒らーめん
    梅吉らーめんに、甘さや酸味、香ばしさを加えた一杯。
  • 豚骨らーめん
    シンプルながら深い味わいの豚骨ラーメン。

師匠の味を継承した「梅吉らーめん」は原点ともいえる一杯です。

そして「黒らーめん」は私独自のアレンジを加え、多彩な味わいを楽しんでもらえるように仕上げました。

スープにはどのような具材を使っていますか?

メインは豚の頭骨を使用しています。頭骨には脳みそや目玉がそのまま残っており、スープを炊く過程で旨味や香りに厚みが生まれます。

他にも背ガラやげんこつといった部位を加えて、10時間ほど丁寧に仕込みます。

麺のこだわりは何かありますか?

麺は店内にある製麺機で作っています。豚骨やマー油、ニンニクといったクセのある食材に負けないよう、麺はやや太めに仕上げています。

また、使用している小麦粉は茹で伸びしにくい特長を持つものを厳選。最初から最後の一口まで、麺のおいしさをしっかり感じられるよう工夫しています。

10年目という節目を迎える今、理想とするのはどのようなラーメンですか?

私が目指しているのは、豚骨の香りがより際立つ一杯です。

本場九州のラーメンを食べる度に感心するのは、その香りの良さなんです。”濃厚”といった味とは違って、軽い口当たりで豚骨の香りはしっかり際立っているラーメンが私の理想とするものです。

現在も九州出身のお客さんが多く来店されますが、香りの面ではまだまだ本場の域に達していません。これからも研究を重ね、理想の一杯を追い求めていきたいです。

最後の質問となりますが、目指している理想のお店の姿について教えてください

私が目指すのは、“日常に溶け込む”九州ラーメンのお店です。

特別感のあるご馳走ラーメンではなく「今日もあそこのラーメン屋に行こうか」と気軽に思ってもらえる存在でありたいと思っています。

もちろん、ここで言う“九州ラーメン”とは、白濁してクリーミーな博多ラーメンとは少し違います。軽い口当たりながらも、豚骨の香りがしっかりと感じられる、昔ながらのスタイルです。

相模原や町田では意外と少ないジャンルなので、当店で九州ラーメンの雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。

これからも「らーめん梅吉」でしか味わえないラーメンを提供し続け、地域の方々にとって“日常の一部”となるようなお店を目指していきます。

梅野さん、ありがとうございました!

らーめん梅吉の店舗情報
店名らーめん梅吉
住所神奈川県相模原市中央区鹿沼台1-1-1
アクセスJR横浜線・矢部駅(南口)から徒歩5分
JR横浜線・淵野辺駅(南口)から徒歩7分
営業時間11:30〜14:00
定休日不定休(SNSで月の営業日を告知)
お店のSNSX/Instagram

※上記は取材当時の情報です。来店の際は最新情報のご確認をお願いします。

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この記事を書いた人

ナカムラ ソン

神奈川県在住のフリーライターです。 前職は求人広告のライターで、情熱を持って働く人たちの想いをインタビューするのが好きでした。 その経験を通じて、仕事に限らず、熱い想いを抱いて活動している方々の声にも耳を傾けたいと思うようになり、独立を決意しました。 これからは、地域の魅力を発信しながら、そこに暮らす人々の活動や想い、そして一人ひとりが紡ぐ物語を、より多くの方に届けたいと思っています!

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