長崎市中心部から車で約1時間の場所にみくりや畜産の牛舎があります。
育てた牛を自分たちで販売する農家直営の和牛専門店「みくりや畜産」は、以前紹介した「ふれ愛の里清水」の一角に店舗を構えています。
「おなかいっぱいのいのち」という絵本も描かれた、みくりや畜産のみくりやはるみさんにお話を伺いました。
みくりや畜産について

みくりやさんは漁師の父を持ち、東京農業大学で農業の世界に入りました。畜産農家に嫁ぎ、今では3人の子どもの母となり、みくりや畜産を支えています。
「ずっと一次産業に関わってきた」と話すみくりやさん。
初めて自分の牛を競り落とし、育てる過程で芽生える愛情と葛藤を経験されました。この経験から、愛情を込めて育てた牛のストーリーや、牛への想いを食卓に繋げることができたらという農家直営の販売店「みくりや畜産」を開業しました。
「自分の牛」を見届けて変化した気持ちと誇り

出産を機に、夫の畜産農家に足を踏み入れました。
元々動物がダイスキで、愛情深いため、当初は「経済動物」という存在をなかなか受け入れることができなかったそう。
病気になったり、色々な理由で安楽死を選択しなくてはならない場面や、日々餌代などの経費を考えなくてはならないこと、カワイイだけの動物ではないという経験、出荷の為にトラックに乗せられる姿を直視できないという数年を過ごしました。
自身が購入したお母さん牛との出会い
ある日、自分で1頭のお母さん牛を市場に買いに行き、10歳くらいのおばあちゃんだが妊娠中の牛を購入。
その牛とは3年以上一緒に過ごして、その期間に3回の出産を経験した。
すでに13歳くらいで、人間でいうと70~80歳。
痩せてきているが、もう1回妊娠できる可能性もあり、もう1度妊娠すればまた1年一緒に過ごせる。
しかし、畜産経験の長い夫からは「これ以上痩せてしまっては肉が取れなくなる」と助言があった。
種付けするか、経産牛として命の期限を決めるかの選択をしなくてはいけなかった。
畜産家として、種付けをしないことを選択し、そこから半年、愛情を込めて、美味しい肉になるように育て、痩せていた母牛はどんどん太っていったそう。
出荷を見送り、屠畜され、2日後に枝肉になった状態を見に行った時に、とてもキレイな肉で、「おばあちゃん牛だったのに。半年でこんなに美味しい肉になる和牛ってスゴイ」という体験をした。
この出来事は、命の期限を決めてしまうことを悲しいと思っていたことが、みんなが食べるものを作っているんだという自信や誇りに変わったという。
これまでは育てて出荷して、自分が育てた肉が誰に届いているのか分からなかった。
この1頭の牛から経験したことは、「自分で育てた肉を自分で売りたい」という現在のみくりや畜産の店舗開業に繋がる。
絵本『おなかいっぱいのいのち』

みくりやさんは、2024年12月に『おなかいっぱいのいのち」という絵本を作りました。
「牛が育てられて、肉になりますという、当たり前でシンプルな内容です」と話します。
みくりやさんは、1人目の子どもが3か月くらいの時からおんぶしながら牛のお世話をしていました。子どもにとっては、生まれた時から当たり前にいる牛。子どもが成長していく過程で、牛が肉になって食べているということを、どうやって伝えよう、どんな言葉で話そうと悩んだ時期もあったといいます。
しかし、1頭の牛との出会いと経験を経て「牛の命が終わって肉になる」ということをシンプルに子どもに伝えられるようになりました。
職業人としての誇りを感じたインタビュー

取材で牛舎に伺ったとき、牛と目が合った。
思いを込めて育てた牛が肉になる。
スーパーに並んでいる肉を見ても、そんな背景まで思いを巡らせる機会は少ないと感じる。
みくりや畜産のInstagramでは、育てた牛の名前や写真が掲載されている。
心がザワザワする人も居るかもしれないと思った。
でも、インタビューを通して、愛情をかけて育てた牛を食卓に届けるという職業人としての誇り、牛に対する愛情があるからこそのInstagramなのだと感じた。
みくりや畜産Instagram:https://www.instagram.com/seiniku_mikuriya/
みくりやはるみさんInstagram:https://www.instagram.com/mkrybull2020/
みくりや畜産HP:https://ushinomkry.base.shop/
農家直営和牛専門店「みくりや畜産」
長崎県西海市西彼町上岳郷1301-1「ふれあいの里清水」内
営業時間:8:00~18:00
電話番号:0959-27-0227