みなさんは、日本古来から行われてきた、『草木染め(くさきぞめ)』をご存知でしょうか?
植物から染料を抽出し、布地や糸を染める技法で、代表的な草木染めとしては、”藍染め”があります。
わたしも”藍染め”を聞いたことがある程度で、藍染めは『草木染め』のうちの一つだと初めて知りました。
『草木染め』は現在のファッション業界では、サスティナブルな視点から改めて注目を集めているそう。
今回ご紹介するのが、江の島で『草木染め』をされている、服部宏樹さんです。
独立し、屋号を”木霊”として活動されています。
服部さんは草木染めの魅力について、
「草木染めのたまらない瞬間は、色が染まっていく瞬間。ひとつとして同じものは出ないし、同じ材料を使っても、人が違えば同じ色は出ない。ひとつひとつに個性があることも魅力ですね」
と、語ります。
【前編】では、『草木染め』の作品と”染めの工程”をご紹介します。
まずは、服部さんが手掛けた作品からご覧ください。
『草木染め』とは
草木を煮出して抽出する染料で、布生地や糸を着色する技法を『草木染め』と呼びます。
草木によっては、煮出さずそのまま染めることも可能です。
『草木染め』では、染料として使う植物により、出せる色が異なります。
青色に染めたい場合は”藍”、赤色に染めたい場合は”茜”、黄色は”柘榴(ざくろ)”、黒染めには”矢車附子”、緑色を出すには、”藍”で染めた後”柘榴”を吸着させます。
草木の色は、たんぱく質に吸着するため、動物素材である絹(シルク)や羊毛(ウール)の素材が染まりやすいそう。
綿や麻など、植物を原料とする繊維には染液を反応させるための下処理(濃染)が必要で、たんぱく質を染み込ませます。
濃染に使われるたんぱく質は、手軽に手に入る豆乳や牛乳を使うのが一般的なのだそうです。
草木染めの基本工程
取材当日、『草木染め』の”染め”を見させていただくべく、お昼に待ち合わせ。当日は、ご友人であるバンドメンバーがプロデュースしたオーダーを作成する日です。
服部さん:「精錬、濃染、媒染。この作業を全部ひっくるめて”下処理”と言います」
基本工程を教えて下さいました。
1.精練(油や糊を生地から落とす)
2.濃染(たんぱく質を染み込ませる)
3.媒染(生地の中に金属イオン含ませることにより染液の色をキャッチ)
4.草木から色素を抽出
5.布や糸を、抽出した染色液で染める
6.水洗いする
7.媒染する
8.水洗いする
服部さん:「5から8の作業を繰り返すことで、色付きや風合いが変化します」
今日の染料は”藍”です。藍を使った染めでは、生地に染みた染料が酸化して”藍色”になります。
染料抽出は、煮出して行います。藍の染料は強アルカリで、pHは10を超えます。
服部さん:「火にかけた最初の液は捨てます。それは、藍の葉についた汚れを落とすためです。2回目から、染料として使います」
煮出す時間は10分。約80℃で温度管理。
3回、4回と繰り返し、必要な染液の量を抽出します。
染料”藍”が布地に染み込み、染液から取り出すと”酸化”が始まり、藍色に染まっていきます。
強アルカリ性の染液を吸った布地は、空気に触れると酸化し、見る見るうちに色が変化しました。
今回は、”藍”に黄色を重ねて緑を出したいため、”柘榴”の染液も用意されていました。
ご友人たちと、染め上がった色を確認。
狙った色に染められ、オーダーしたご友人たちも出来上がりに大変満足されたご様子です。
狙った色を思い通りに出せるのが職人技、と感じさせられました。
手間も暇もかかる『草木染め』。
【後編】では、服部さんが『草木染め』に魅了されたきっかけと、身につけるまでの経緯、服部さんが語る『草木染め』の魅力ついてご紹介します。