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アート  |    2024.01.08

草木染めを、江の島から。26歳の『染め師』が選んだ自己表現方法【前編】

みなさんは、日本古来から行われてきた、『草木染め(くさきぞめ)』をご存知でしょうか?

植物から染料を抽出し、布地や糸を染める技法で、代表的な草木染めとしては、”藍染め”があります。

わたしも”藍染め”を聞いたことがある程度で、藍染めは『草木染め』のうちの一つだと初めて知りました。

『草木染め』は現在のファッション業界では、サスティナブルな視点から改めて注目を集めているそう。

今回ご紹介するのが、江の島で『草木染め』をされている、服部宏樹さんです。

独立し、屋号を”木霊”として活動されています。

こだま、と読みます。

服部さんは草木染めの魅力について、

「草木染めのたまらない瞬間は、色が染まっていく瞬間。ひとつとして同じものは出ないし、同じ材料を使っても、人が違えば同じ色は出ない。ひとつひとつに個性があることも魅力ですね」

と、語ります。

【前編】では、『草木染め』の作品と”染めの工程”をご紹介します。

まずは、服部さんが手掛けた作品からご覧ください。

草木から、これだけの色が取り出せます。
タイダイ絞り。
こちらは暖簾。 柔らかい風合いで、お客様をお迎えします。
一点もののセットアップ。
染め上がり、乾燥を待っているところ。
“板締め絞り”という技法です。

『草木染め』とは

草木を煮出して抽出する染料で、布生地や糸を着色する技法を『草木染め』と呼びます。

草木によっては、煮出さずそのまま染めることも可能です。

『草木染め』では、染料として使う植物により、出せる色が異なります。

青色に染めたい場合は”藍”、赤色に染めたい場合は”茜”、黄色は”柘榴(ざくろ)”、黒染めには”矢車附子”、緑色を出すには、”藍”で染めた後”柘榴”を吸着させます。

この青は、藍の乾燥葉から出したもの。
茜から赤。
黒は矢車附子からです。

草木の色は、たんぱく質に吸着するため、動物素材である絹(シルク)や羊毛(ウール)の素材が染まりやすいそう。

綿や麻など、植物を原料とする繊維には染液を反応させるための下処理(濃染)が必要で、たんぱく質を染み込ませます。

濃染に使われるたんぱく質は、手軽に手に入る豆乳や牛乳を使うのが一般的なのだそうです。

草木染めの基本工程

取材当日、『草木染め』の”染め”を見させていただくべく、お昼に待ち合わせ。当日は、ご友人であるバンドメンバーがプロデュースしたオーダーを作成する日です。

服部さん:「精錬、濃染、媒染。この作業を全部ひっくるめて”下処理”と言います」

基本工程を教えて下さいました。

1.精練(油や糊を生地から落とす)
2.濃染(たんぱく質を染み込ませる)
3.媒染(生地の中に金属イオン含ませることにより染液の色をキャッチ)
4.草木から色素を抽出
5.布や糸を、抽出した染色液で染める
6.水洗いする
7.媒染する
8.水洗いする

服部さん:「5から8の作業を繰り返すことで、色付きや風合いが変化します」

今日の染料は”藍”です。藍を使った染めでは、生地に染みた染料が酸化して”藍色”になります。

染料抽出は、煮出して行います。藍の染料は強アルカリで、pHは10を超えます。

“藍”を煮出して染液を抽出。
染液を抽出できたら、”藍”の葉を濾します。
見えている泡を”藍の華”と呼ぶのだとか。

服部さん:「火にかけた最初の液は捨てます。それは、藍の葉についた汚れを落とすためです。2回目から、染料として使います」

煮出す時間は10分。約80℃で温度管理。

3回、4回と繰り返し、必要な染液の量を抽出します。

今回の素材の巾着。”精錬”が終わりました。
ご友人達と共同作業中。
染め上がった巾着を乾かしています。

染料”藍”が布地に染み込み、染液から取り出すと”酸化”が始まり、藍色に染まっていきます。

強アルカリ性の染液を吸った布地は、空気に触れると酸化し、見る見るうちに色が変化しました。

今回は、”藍”に黄色を重ねて緑を出したいため、”柘榴”の染液も用意されていました。

“藍”に染まった巾着を”柘榴”の染液へ。
金属イオンを布地につける”媒染”で使うものです。
緑に染まった巾着。上の画像と見比べると違いが解ります。

ご友人たちと、染め上がった色を確認。

狙った色に染められ、オーダーしたご友人たちも出来上がりに大変満足されたご様子です。

狙った色を思い通りに出せるのが職人技、と感じさせられました。

手間も暇もかかる『草木染め』。

【後編】では、服部さんが『草木染め』に魅了されたきっかけと、身につけるまでの経緯、服部さんが語る『草木染め』の魅力ついてご紹介します。

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この記事を書いた人

TomokazuYamaoka

湘南に移住し3年。 コミュティに馴染み、つながり、地域のオンリーワン・ナンバーワンを執筆させて頂いております。 いち早く良好なコミュニケーションを築きあげるのが得意。 "取材"の概念より、もう一歩踏み込む「ここでしか聞けない話」を記事にするのがモットーです。 太い"サーフィンつながり"は、余すことなく駆使します。 また、料理経験で舌が肥えました。 能登半島への思いを込めて、能登&加賀料理作りました。

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