2024年11月15日~24日まで、横浜赤レンガ倉庫1号館2階で「第1回かながわともいきアート展~生きること、表現すること~」が開催されました。
本展覧会を取材してきましたので作品とともに紹介します!
ともいきアートとは?
ともいきとは「ともに生きる社会かながわ」の略。
2016年、神奈川県の県立障害者支援施設「津久井やまゆり園」で起きた痛ましい事件をきっかけに、神奈川県では「ともに生きる社会かながわ憲章」が制定されました。
障がい者でも暮らしやすく、差別のない地域社会を目指す中で、その活動の一環として障がいのある方が作るアートを「ともいきアート」として紹介しています。
第1回かながわともいきアート展~生きること、表現すること~
これまで、ともいきアートは県立施設や商業施設の一角などで展示を行ってきました。
ですが、今回はより多くの方に魅力が伝わるよう、横浜赤レンガ倉庫にて第一回目の大規模な展覧会として開催しました!
会場では、さまざまな催し物や、取り組みがされていました。
作家によるイラストイベントや、ガムテープ太鼓作り、みんなで大きな絵を描くイベントなど、様々なワークショップを開催。
また、全盲の美術鑑賞者、白鳥建二さんと会話しながら作品を鑑賞する、対話型鑑賞会なども実施されました。
ほかにも、美術館では珍しい楽しみ方も!
作品の撮影が自由にできたり、様々な人が訪れやすいように静かにしなくてもいい、話しながらの鑑賞もOK!
会場に置いてあるビーズクッションで寝ころんで休憩したりなど、どんな人でもアートを楽しめるような工夫がされていました。
展示内容
今回の展覧会では、これまで神奈川県が進める「ともに生きる社会かながわ」の実現に向けて以前から積極的に協力してきたアート活動を行う6つの障害福祉施設から集めた招待施設展77作品。
それと、県内在住・在勤・在学または通所している障がい者の作品を募集し選考を通過した平面・立体作品の公募展123作品で構成されています。
招待施設展
2022年4月、神奈川県平塚市にオープンした、障がいのある人がクリエイティブ活動を行うアトリエ『嬉々!!CREATIVE』。
障害の有無に関わらず、魅力を引き出し、社会貢献に励む『スタジオフラット』。
2013年、神奈川県小田原に拠点を構え、地域の障害児・者たちと共にアート活動を開始した『アール・ド・ヴィーヴル』。
東急東横線・大倉山駅近くにあり、絵画、手織り、刺繍、フェルトなどに、自分の好きなものや世界観を表現している『アート・メープルかれん』。
名前に「生、原、生々しい」という意味のロウが入っており、生のエネルギーが溢れる作品づくりを続ける『アトリエロウテンション』。
茅ヶ崎市、寒川町のエリアで、障がい者、高齢者、子どもを対象に、施設・自宅での支援などの運営を行ってる『翔の会』。
招待施設展スペースには、神奈川県内の上記6つの施設から作品が展示されていました。
公募展
こちらは神奈川県内在住・在勤・在学または通所している障がい者の方々から作品を募集し、選考を通過した平面・立体作品を展示しています。
なんと応募作品は485作品!平面作品、立体作品どのような作品でも応募可能で、年齢制限も設けていないため、たくさんの作品が集まったそう。
その中から123作品が選ばれ展示されました。
展示作品には、絵画、写真のほか、立体作品、陶芸、パッチワークもあり、平面と立体がランダムに展示されていました。
今回は、筆者がとくに気に入った作品をいくつか紹介していきます!
多才な作品たち
まずは、受賞作品からご紹介します。こちらは公募展の大賞の作品。
萌木さんは幼いころから絵を描くことが好きで、頭の中に浮かんだ世界観を描き続けているそう。
ミリペンで細かく羽の先まで描かれています。
こちらは、神奈川県知事賞受賞作品。三羽のうさぎが星空を見上げている様子が描かれています。
冬の空が描かれており、冬でも暖かさを感じるよう意識したそう。
かわいらしい作品ですが、うさぎの目の色や星座の意味を考えてみたりすると、ストーリー性を感じることもできます!
本作は、招待施展に展示された「嬉々!!CREATIVE」所属の作品。
ガーベラの色味がアロワナのウロコにうつるように反映されていて、空想的ではありながらも、美しい作品です!
ここからは、公募展の作品をご紹介します。
画用紙にアクリル絵の具、ポスカ、マッキーを用いて描いた作品。いろいろな人が手を繋いでいるのが描かれ、同じ色の服の人は家族だそう。
背景の水色の丸さも輪を象徴しているように見え、まさに今回のともいきアートのテーマである、差別のない街づくりという多様性を感じられる作品です。
本作は、水を描いた作品。
在住の秦野市は美味しい水が有名なことから、水を思い浮かべながら描いたそう。
絵の具を混ぜながら指で描かれた本作品は、水の動きも感じられます!
地元を紹介する作品も素敵だと感じました。神奈川県らしさを感じる作品です。
作者である橋本さん(79歳)は定年後の活動のことを考え、陶芸を始めたそう。
その後、作品を焼成できる窯を構え、活動する中で脳梗塞を患い、現在は左側に障害が残りつつもリハビリを続け、作品を制作されています。
メインに装飾されている鳥からは自由さを感じます。また、器の口の微妙なニュアンスの色彩も陶器だからこそ表現できる美しさでしょう。
こちらはクラフト紙やリサイクル封筒、布などを葉っぱの形にカットしたもの。
さまざまな色や葉っぱの形でカットされています。作者のシゲオさんはこの作業をずっと続けてこられたそう。
実際に手に取ってよいとのことで、持ってみましたが、丁寧にカットされていることが良くわかりました。季節を感じられるような温かい作品でした!
活躍の場を広げるともいきアート
今回の展示作品にはタイトルとともに、作品PRや創作状況を記したキャプションが付けられ、想いのこもったコメントが記載されていました。
中には「いつかどこかで作品を展示したいと思っていた」というコメントも。
まさにこの展覧会が、障がいのある方々の新しい活動を広げる場になっているのだと実感することができました!
ともいきアートは今後もさまざまな可能性を広げていきます。
ぜひ、これを機にともいきアートに興味を持ってもらえたらと思います。