
前編では、「マチカドこども大学®」の特別講座、「小田急子ども観光学講座 in 海老名」の当日の様子をレポートしました。後編では、今回の講座の講師を務めた玉川大学名誉教授・名桜大学特任教授の寺本 潔先生と、「マチカドこども大学®」運営代表の多摩大学・樋笠尭士准教授に、観光教育が地方創生に果たす役割や、この取り組みに込めた思いについて伺いました。
玉川大学名誉教授・名桜大学特任教授 寺本潔先生インタビュー

Q.子どもたちのプレゼンをご覧になって、印象的だった点を教えてください。
短い準備時間でしたが、大学生のサポートを受けながら、最後の「顔はめボード」のセリフまでしっかり考えて発表してくれました。「小田急沿線」というテーマは初めての試みでしたが、よく取り組めていたと思います。
私自身が知らなかった沿線のスポットや、マイナーな神社・お祭りの名前が挙げられたのも印象的でした。ローカルな観光資源をうまく取り入れ、自分の身近なところへ引き込んで考える姿勢が感じられました。

Q.地方創生の現場では、「若者が戻ってこない」という課題があります。子どもの頃に、地域や観光を学ぶ経験は、将来その地域との関係性にどう影響すると思われますか?
観光教育は、宿泊業や物販だけでなく、出版、情報、不動産など、幅広い仕事と結びついています。例えば、農業や建設業に対して「大変そう」というイメージを持つ若者でも、「観光に関わる仕事ならやってみたい」と感じることもあるでしょう。観光を題材に学ぶことは、将来の職業選択やキャリア形成の重要な入口になると感じています。
Q.これまで関わってこられた地域で、子どもへの観光教育が、後に地域づくりにつながった事例があれば教えて下さい。
愛知県では、小学校でのまちづくり学習が商店街の活性化や駅弁開発につながった例があります。長崎県の中学校では、地元の銘茶を取り入れた商品を生徒たちが考案し、実際に地元の菓子店に作ってもらいました。教育は短期的な成果が見えにくく、現場のハードルも高いですが、これからも地道に続けていきたいと思います。
「マチカドこども大学®」運営代表 多摩大学 樋笠尭士准教授インタビュー

Q.「マチカドこども大学®」について、改めて簡単に紹介をお願いします。
小田急グループの小田急不動産が栗平駅周辺で取り組まれていたコミュニティ活動がきっかけとなり、2022年に多摩大学と連携協定を結びました。地域のために何ができるかを考えたとき、やはりテーマは“教育”ということになりました。
ファミリー層が多いエリアなので、塾や学校ではなかなか学べないことを、子どもたちに届ける場をつくりたいと考えました。学びを通して、地域の人たちが自然につながれる場所になれば、という思いもあります。
大学で学ぶような専門的な内容を小学生にもわかる形で提供しており、自動運転学や建築機械学、妖怪学など、ジャンルもさまざまです。友達に話したくなる、家族で話題にしたくなるようなテーマ設定を意識しています。
運営には大学生も関わっていて、ゼミで研究している内容など、難しいことを“やさしく伝える”実践の場にもなっています。また、講師には地域の企業の方や大学の先生など、本当に多様な立場の方々が参加しています。
将来的には、受講生が大学生になって運営側として戻ってきたり、社会人になったら企業側として関わってくれたり、退職後にはサポーターとして参加してくれたらうれしいです。このような、地域の中で人々が循環していくような仕組みを目指しています。
年に数回は社会科見学も実施しており、今回の「小田急子ども観光学講座 in 海老名」も、そうした取り組みの一環です。小田急電鉄の子育て応援情報サイト「FunFanおだきゅう」を通じて初めて参加してくださった方も多く、いつもとは少し違った雰囲気で、子どもたちにとっても学生にとっても刺激になったと思います。

Q.観光教育は、地方創生にどのような役割を果たすと思われますか。
地方創生には多くの切り口がありますが、子どもたちにとって最も身近なのが観光です。旅行の話題は授業でも扱いやすく、「誰も訪れない町は成り立つのか」といったような問いは、地域経済を考える入口になります。
そうして小学生のうちに観光ビジネスの仕組みを知ることは、地方創生を考える土台づくりにつながっていくのです。観光をベースに交通などの仕組みが成り立っていることを理解する意味でも、観光教育は基礎中の基礎だと考えています。
Q.講座を通じて、子どもたちにはどのような変化が見られましたか。
大学生が子どもたちと同じ目線で関わることで、講座内容の理解が深まり、普段は言葉にしづらい考えも、一緒に整理しながら言語化できるようになっていきました。
また、講座後の保護者アンケートをもとに内容を改善するなど、大学生にとっても大きな学びの場になっています。こうした経験は、将来の就職活動で語れるエピソードにもなり人材育成にもつながっています。
地域の未来をつくる“観光教育”という土台

前編では、観光を「楽しむもの」から「つくるもの」へと捉え直していく、子どもたちの視点の変化を取り上げました。後編では、そうした変化につながりつつある取り組みの背景として、教育という“土台”や、地域・大学・企業が連携して進めている試みを紹介しました。
観光は、地域の魅力を伝えるだけでなく、交通や仕事、人の営みなど、まちの構造そのものと結びついています。今回の講座は、子どもたちがそうした仕組みに目を向け、地域とどう関わっていくのかを考える入口となりました。こうした学びの積み重ねが、将来の地域づくりを担う人材へとつながっていくことにも、今後の広がりが期待されます。
■小田急電鉄の子育て応援情報サイト「FunFanおだきゅう」
https://www.odakyu.jp/oyako/
■マチカドこども大学®の情報
https://www.machikado-uni.com/
※入学申し込みは随時受付中




