Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地方創生メディア

スポット  |    2024.08.17

横浜で生きるミニシアターへ|「シネマ・ジャック&ベティ」の歴史と魅力

近年、大手シネマコンプレックスや動画配信サービスの台頭により、小さな映画館が軒並み閉館している。そんな苦境の中、今もなお横浜で生き続けるミニシアターがある。それが「シネマ・ジャック&ベティ」だ。

ジャック&ベティは、横浜市中区の若葉町にある数少ないミニシアターの一つだ。昭和にタイムスリップしたかのような味のある古い見た目と館内は、懐かしさと風情を感じさせ、訪れた人を異空間へと誘ってくれる。

今日は映画と映画館をこよなく愛する筆者みくとが、支配人である梶原さんにお話をお聞きしながら、ジャック&ベティの歴史と魅力について迫ってみた。近頃映画館に行っていない方や、横浜が好きだという方は、ぜひジャック&ベティに訪れてみてほしい。

Topic!——梶原さんに聞いた「映画館の良さ」は、まさに現代の若者たちに響く言葉であった……。

前は別の映画館だった?シネマ・ジャック&ベティの歴史

シネマ・ジャック&ベティ
ジャック&ベティの看板

横浜市若葉町にあるジャック&ベティは、2つのスクリーンでさまざまな作品を上映するミニシアターである。ジャンルの幅も広く、実に多彩な作品がラインナップされるため、常に映画を楽しむことが可能だ。階段を上がれば歴史と風情を感じる内装がお出迎え。訪れた人を、特別な世界へと誘ってくれる。

そんなジャック&ベティは、1952年に開館した「横浜名画座」の後を引き継ぎ、1991年にオープンした。何度か映画館としての歴史に終止符が打たれたものの、その時代ごとにジャック&ベティを守ろうとする人たちによって引き継がれてきた。そして、その一人が現在の支配人である、梶原さんだ。

「私たちが引き継ぎの話を断ったら、この映画館は閉館してしまうと思いました。当時はサラリーマンでしたが、ジャック&ベティを引き継ぐことを決めて脱サラしたんです」

梶原さんは、もともと会社に勤めていたサラリーマン。安定したレールの上から飛び降りる行為は、それ相応の覚悟と勇気が必要だったはずである。しかし、映画館を残したいという一心で引き継ぐことを了承した梶原さん。かくして無事にジャック&ベティは生き残ることができ、今もなお地域の人々に愛される映画館として良質な作品を上映してくれている。

シネマ・ジャック&ベティ
スクリーン「ベティ」

「当時の経営は苦しいものでした。私が引き継いだ当初もお客さまの入りは少なく、日々頭を悩ませていました。周りの映画館も閉まっていくなかで、なんとか経営を成り立たせたいと思い、大手シネコンさまではやらない良質な作品を集めて上映しました」

〈88.8%〉この数字は、大手シネコンが占める全国のスクリーン数の割合である。当時から勢いを増していた大型の映画館と共存を図るべく、梶原さんは必死で単館系の映画をかき集めたそうだ。徐々にお客さんの入りも多くなり、なんとか経営を回復させたという。

「サブスクで気軽に観られる時代だからこそ…」支配人の梶原さんが語る映画館の良さ

シネマ・ジャック&ベティ 梶原さん
梶原さん

「近年はサブスクによって映画が気軽に観られるようになりました。しかし、だからこそ映画館に足を運んで映画を観ることが、一番贅沢な時間だと思うんです」

動画配信サービスのサブスクは、確かに便利で使い勝手も良い。いつでもどこでもボタンひとつで観たい映画やドラマが観られる。ただ、やはり映画館に足を運んで大きなスクリーンと閉鎖された暗闇の中で観る映画は、格別な没入感がある。支配人の梶原さんが表現したように、映画を観るためだけの“贅沢な時間”が、そこには流れているのだ。

シネマ・ジャック&ベティ
チケット売り場

「自分がチョイスした作品の入り(お客さんの数)が、どのくらいかとかを見るのも楽しいと思います。不特定多数の人と暗闇の中で一緒に映画を観る状態は、映画館でしか味わえません。そして、うちみたいな小さな映画館の多くは、地域と密接に繋がっています。映画を観る前でも観た後でもいいので、町を散策するのも醍醐味です」

地域と深く結びついたミニシアターならではの楽しみ方を語る梶原さん。大手シネコンのように、チェーン店が立ち並ぶビルではなく、地域の個性的なお店や特色のある町並みは、たしかにミニシアターに行くことでしか味わえない楽しみだ。町を散策することで、新しい発見や自分好みのカフェが見つかるかもしれない。

シネマ・ジャック&ベティ
地域のお店の商品が購入できる。

「町を楽しむことと映画館に行くことがミックスして、一つの体験になると思います。それは同時に、色の濃い思い出にもなります」

映画館に行くことは、贅沢な時間を堪能すること。そして、ミニシアターと一緒に町を楽しむことで、一つの体験が生まれること。たまにはサブスクの選択画面を閉じて、フラッと映画館に行くのも良いだろう。さあ、今日か明日にでも、映画館に足を向かわせてみよう。

横浜に立ち寄った際はミニシアターで映画を観てみては?

シネマ・ジャック&ベティ
シネマ・ジャック&ベティ正面

「やっぱり映画館で映画を観ていただきたい。若い方たちにも。そのために、映画が好きな人に来てもらえるような映画館を作っていきたい」

梶原さんは、毎月1日にお客さまの意見を集めるためのサロンを開催している。また、県内外の映画館や周辺のお店ともさまざまな企画を催し、ジャック&ベティだけでなく地域の発展にも貢献しているのだ。

横浜に立ち寄った際は、町を散策すると同時にジャック&ベティで映画を鑑賞してみてはいかがだろうか。横浜駅から京浜急行線で一本、黄金町駅からすぐのところにジャック&ベティはある。関内からイセザキ・モールという商店街を散策しながら行くのも楽しいだろう。

シネマ・ジャック&ベティ
支配人の人形(写真左)がお出迎え
シネマ・ジャック&ベティ

〒231-0056 横浜市中区若葉町3-51
Googleマップで見る
京浜急行線 黄金町駅下車 徒歩5分
横浜市営地下鉄 阪東橋駅下車 徒歩7分
JR線 関内駅北口下車 徒歩15分
公式サイト

記事をシェアする

この記事を書いた人

みくと

映画と映画館をひたすら愛するフリーライターです。2000年に横浜で生まれ、現在は妻と娘と大和市に住んでいます。普段は映画レビューの寄稿やSEO記事の執筆、ホームページのライティングなどをしています。趣味は、次に観る映画を「何にしようか」と悩むことと、文章を書くことです。Mediallでは、地域の映画館や神奈川の魅力溢れるお店などをご紹介します。

関連記事